天音海斗の『力』
久しぶり?
「ある・・・・・・と言ったら、嘘になるかもしれません。」
「・・・・・・と言うと?」
俺の返答に、スッと目を細めてそう聞き返してくるのは西本さん。若いながらも、《対蝕食特殊能力学園》の校長を務めているというその眼光には、気圧されてしまうほどの迫力があった。
「蝕食と・・・特にAランクレベルの蝕食と戦ってきたからこそ、奴らの恐ろしさは理解しているつもりです・・・。実際、楓さんがいなければ治療してもらうことも出来ずに、俺は死んでいたと思います。」
まあ、楓さんと会っていなかったら白銀とか漆黒とかとも戦うことにはなってなかっただろうけど。でもそうしたら父さんや母さんと一緒に俺も殺されてたか。
じっと俺の話に耳を傾けている西本さんに対して、言葉を続ける。
「正直・・・あいつらは怖いし、この先ずっとあんな死闘を繰り返すのは嫌です。」
だってそうだろう。前に聞いた蝕食のランク的な話だと、白銀や漆黒のAランク蝕食よりもさらに強いSランク蝕食ってのもいるんだろ?戦いたくないに決まってるし、そもそも関わり合いにもなりたくない。
・・・ただ
「・・・だけど、俺の力が何かの役に立つなら・・・誰かを救えるなら。俺のように家族を失う者を少なくできるなら。・・・役に立ちたいと、そう思います。」
あの山での親子のように。俺の力で誰かを救えるなら、救いたい。父さんや母さんを救えなかった分、他の人には殺されてほしくない。それが俺の『戦う意味』だ。
そんな思いを込めて、西本さんを見つめる。
「・・・・・・良いでしょう。あなたの覚悟、しかと受け取りました。・・・ついて来てください。」
しばらくして、そう言った西本さんは徐に座っていた机から立ち上がり、歩き出した。
「あなたがこの学園の高等部に編入することを特例で認めます。・・・ですが編入する前に、やらなければならないことがあります。」
楓さんと一緒に、校長室を出て廊下を歩いていく西本さんはそう言った。
「やらなければならないこと?」
なんだ?入学手続きとか?
「あー・・・あれまだやってたの?」
何かに思い立ったように声を上げた楓さん。
「当然です・・・。あなたはここに留まらなさ過ぎるんですよ、楓さん。もう少し知ろうとする努力をですね・・・。」
「あー分かった分かった。」
まじで俺の知らない話を勝手に進めないで欲しいんだけど。
「えと・・・なんの話ですか?」
そう聞くと、二人は同時に振り返ってこう言った。
「「実力測り(です)」さ」
わお、息ぴったり。
「どうぞ、お入りください。」
しばらく歩いて立ち止まった扉には、「診断室」の文字。
その扉を開けて中に入っていった二人に続いて中に入ると・・・
「でっかい・・・卵?」
何やら白い卵みたいな物体。だけど、でかい。人間以上のサイズ。
「これは『観測器』。観測対象の観測時点での『等級』、『天力の詳細』を教えてくれる、天神器です。」
これが・・・A.S.T?武器型じゃないA.S.Tも存在するのか?
「ま、ものは試しだ。早速『観測器』の前に立ってみて、海斗。」
「はい・・・。」
楓さんにそう言われ、『観測器』とやらの前に立つと・・・
『・・・熱反応を感知。サーモセンサー・・・起動。・・・・・・対象、人型生物と認定・・・。X線解析を実行・・・・・・正常反応。対象を人類種と認定。『観測器』稼働。』
うおっ喋った!?しかもあの特有の機械的な声で何やらぶつぶつと言っていたかと思うと、急に動き出したぞ!?卵型だった物体に、縦にヒビ?線?が入って、前部がパカっと開いた・・・。中はめちゃくちゃハイテクっぽい機械に覆われてるが・・・。
『測定開始・・・。・・・・・・終了。検査結果、表示。』
開いた中の 中央部にあるテレビみたいなものに色々と映し出されてくる。
なになに?
「おや・・・。」
「おっと、これは・・・。」
後ろから覗き込んできている二人がそんなことをぶつぶつと言っている。俺も読もうと思ったら、『観測器』とやらが先に音声で読み上げてきた。
『検査結果、通達。・・・対象人類種の現時点での等級を《Aランク》に認定。・・・及び、対象人類種の天力の観測結果を通達。・・・・・・タイプは『拡張型』。対象人類種の天力は、『火』『水』『木』『金』『土』のエーテル及び現象の操作能力、『陰陽五行説』に由来するのものと考えられる。・・・・・・よって、対象人類種の天力を《自然調和》と命名する。』
「バランス・・・。」
情報量が多い・・・。拡張型??陰陽五行だって??
あと何より・・・
「『Aランク』・・・ですか。」
そう、そこだ。俺の隣でそう呟いた西本さんに深く同意する。
「なるほど・・・Aランク蝕食を打倒せしめた実力は確かなようで・・・。これならば、高等部Aクラスへの編入も受け入れられますね。」
あ、まじで?
「ありがとう・・・ございます?」
と言うよりも、色々と聞きたいことが山積みだ・・・。
そう思って楓さんを見ると、何やら深く考え込んだような表情でじっと画面を見つめていた・・・。
「・・・・・・おっと。ごめん、海斗。少し考え事をしていてね・・・。それより、Aランクの評定で良かったよ。鍛えた甲斐があった。」
「そう・・・ですね。」
「ふふ・・・。まあ分からないこととか、聞きたいこととか、色々とあるだろうけどさ。」
そう言うと、楓さんはにっこりと笑って西本さんと顔を見合わせた。西本さんも何かを察したのか、少し頷いて二人揃ってこちらを見る。
「「ひとまず・・・入学おめでとう(ございます)!」」
こうして、俺の学園での生活が始まるのだった・・・。
タイトル回収ってやつ?
ひとまずこれで第1章の終わりとさせていただきます。
次回より、新章「内なる力は高きを仰ぎ、外なる力は高きに顕れる」開幕です。
学園へと編入した海斗に訪れる新たなる出会い、そして試練。頂点を目指す争いに割り込む影。
海斗、ファイト!!




