超能力者ァァ
2XXX年、地球は蝕食と名付けられた生命体によって侵略されていた。次第に成長する蝕食に人類の力は通用しにくくなり、侵略は速度をどんどん速めていく。もはや地球は終わってしまったかのように思われた。
だが、蝕食の登場と同時に、「特殊能力」を持つ者たちが現れる。風、水、火、空間、音、時間—それぞれが超常的な力を操る者たち。単純な銃火器の効かない厚い装甲を貫くことのできる彼らの力は、蝕食に立ち向かうための希望であった。
国際連合は彼らを集め、戦闘技術と能力をコントロールする方法を学ばせるために「対蝕食特殊能力学園」の設立を決意。その第一校舎として、日本に建てられたのが「対蝕食特殊能力学園・日本校」、通称「特能日本学園」だ。中等部と高等部に分かれており、中等部では三年間基礎的な能力のコントロールの仕方を学ぶ。三年の履修を経て高等部へと進学したら、能力に応じて階級ごとクラス分けされ、いよいよ蝕食との実践に入っていく。
「で、君にはそこの高等部に編入してもらう。」
「は、はぁ・・・?あの・・・・・・前も同じようなこと言ったかもしれないんですけど、三ヶ月で三年に追いつくのは無理じゃないですか・・・?」
「だからこその実践だよ。本来、蝕食との戦闘が許可されるのは高等部に入った者、その中でも特にCランク以上の生徒だけなんだ。」
「Cランク・・・?」
「ああ。高等部に入ると、強さに応じて蝕食のランクに対応したランク分けがされるんだ。そして、そのランク分けによってクラスも決まっていく。」
———楓さんの話によると、ランクは上からSSSランク、SSランク、Sランク、Aランク、Bランク、Cランク、Dランク、Eランクと分けられている。そしてそれぞれのランクごとクラス編成がされているらしい。例えばAクラス、とか。例外的にSランク以上の生徒は人数がとてもとても少ないためSクラスとして包括されているんだとか。楓さんは全部のクラスを順に説明してくれた。
Sクラス(最高戦力):学園の生徒会も担っており、学園での頂点に位置する。が、学園内で姿を確認されたことは一度もない。Sランク以上の蝕食と戦うことを許された唯一の存在たちであり、世界最高戦力と言っても過言ではない。だが、強すぎる能力が故に戦闘を行う際は政府からの許可を取る必要がある。能力を解放しただけで甚大な被害が出るという。
SSSランク生徒:SSSランク蝕食と戦える戦力の肩書きとして定められているものの、存在するのかは不明。詳細も不明である。
SSランク生徒:SSランク蝕食と戦える戦力。
Sランク生徒:Sランク蝕食と戦える戦力。
Aクラス(実践必須クラス):Sクラスの生徒は基本的に学園に姿がないため、Sクラスに代わり学園の統治を任されている。基本的に実践は必須とされている。Aランクが出現することもある普段の戦闘では、Sランク生徒が政府の許可がないと戦えないこともあり、主力及び司令塔として活躍している。
Bクラス(実践許可クラス):実践は許可されており、Aランク生徒の指揮のもと現地へ赴くことが多い。
Cクラス(実践制限クラス):実践は制限されており、高等部である程度の能力制御授業を受けた後でなければ実践に赴くことはできない。
Dクラス(サポート専用クラス):Cランクなどが出現することも多い実践では蝕食に逆にやられてしまうリスクが大きいため実践は許可されておらず、サポートに回ることがほとんど。だがいざというときは戦えるだけの力は持つ。
Eクラス(学習クラス):能力が実践向きではない者たちが該当する。そのため、実践は許可されていない。学園に通わせる目的は、蝕食との戦闘を学ばせることではなく、能力の暴発を抑えるための技術を学ばせることである。Eランク生徒の中でも能力がサポートに向いていて現地まで赴く人間もいるにはいるが、基本的には実践とは縁のないクラスである。
「なるほど・・・・・・。あの、それで・・・その、」
「ああ、海斗にはAクラスに入れるだけの技術を身につけてもらう。」
「ちなみに、楓さんは学園の関係者だったりするんですか?」
「・・・・・・さぁ、どうだろうね。」
クス、と笑って答えた楓さんの目はまるでいたずらっ子のような輝きを帯びていて———。
「おっと、そんなことを話していたら見えてきたよ。」
今俺たちがいるのはどこかの山奥。そして、目の前の大地が動いた。楓さんに連れられて入ってきたは良いものの、正直どこに向かっているのかさっぱりだったけど・・・。なるほど、ね。ちょーっとそれは、聞いてないなぁ!?
「グルルルルルル・・・・・・」
「さっ、まずはBランク蝕食の殲滅から練習していこうか!」
「ゲギャァァァァァァ!!!」
楓さんが明るく言い放ったのと、今まで大地だと思っていた100mは超えるだろうBランク蝕食が口を開けて襲いかかってきたのは、奇しくも同じタイミングだった・・・・・・。
「学園」と言っていますが、何も能力者全てが子供であるということではありません。もちろん、生徒の中には中年のオッサンや刀を握ったよく分からん強キャラお爺さんまでいますよ。ただ、割合で見ると子供の方が圧倒的に多いようです。理由としては、まず大人は能力のコントロールがしやすいという点。そして、能力のコントロールを完璧にした大人は自分が元々やっていた仕事に戻っていく人が多いという点。そして最後に、能力が発現するのは圧倒的に若者が多い点。
この3点です。むしろ戦いたがるのは自分の能力に絶対の自信を持った子供達であるというのは、なんとも言えませんね。いずれ戦うことよりも平穏に・普通に働いて家庭を築くことの方が幸せであることに気づけるのでしょうか・・・?とはいえ、Aランク以上の生徒に関してはその戦力故に戦うことを強制させられているのも事実。なんとかならないもんですかねぇ・・・。
そして・・・・・・楓!お前は本当に一体何者なんだ!!!!
次回予告;海斗、吹っ飛ばされる。