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バランス 〜自然は時として牙を剥く〜  作者: 水神朱
眠れる獅子よ、いざ吠えろ
29/49

至高の「一番弟子」と「一番」弟子

頻度を上げたい・・・。

「遅かれ早かれ()()()()とは思っていたけど・・・。ちょっと早すぎかな。」


俺の隣でそう呟いたのは楓さん。「こうなる」っていうのは・・・・・・



「ルールは単純。私をこの円の外に一歩でも出せれば、貴方の勝ちよ。制限時間は10分。それが出来たら、貴方のことを認める。出来なかったら・・・・・・即刻立ち去ってもらう。」


俺の目の前で、描かれた円の内に立ちそう話す(なつめ)さんに、俺が試されるってこと。





「即刻立ち去ってもらう」かあ・・・。まあ正直ここに住むことができなくても、学園には寮があるらしいからそっちに行けば良いだけの話なんだよな。とはいえ・・・


「海斗さま。対戦前に水分補給など、なされなくてよろしいですか?」


「草加部さん。ありがとうございます。だけど大丈夫です。」


楓さんと一緒に見学に来たのか、立っていた草加部さんの言葉に返事をしつつ俺は思う。

・・・最初はただただ圧倒されてたけど、こういった暮らしも悪くないと思い始めている頃なんだ・・・!


いや、決して今のこの贅沢な生活に居続けたいとかは思ってない。微塵も。




それに・・・。





———————————————————————————————————————————————————


「棗はね、もうかれこれ10年間も僕を支えてくれているんだ。出会った時は友人に裏切られて何もかもを失い、絶望の真っ只中にいる状態でね。その時に少しだけ助けた縁からずっと一緒にいてくれてたんだけど・・・・・・。」


棗さんと一旦別れて、デパートで買った荷物を置きに行きつつ、俺は楓さんからそんな話を聞いた。楓さんは()()()()()であるかのように、酷く顔を顰めていた。


「その時のトラブルからか、普通の人より他者に対する警戒心が強くてね。なんというか・・・人間を根本的に信用しきれていない部分があるんだ。」


「あの人にそんな過去が・・・・・・。」


「ただその分、自分が心を開いた人のことをとても大切にする人間でもある。そして嬉しいことに僕や神楽邸に住む使用人たちのことは信用してくれているみたいでね。」


「そう・・・みたいですね。」


「だけどその分、彼女は君に対して全力で向かってくるよ。海斗も中々強くなっているし、その成長速度は尋常じゃない。ただ忘れないで欲しいのは、棗が僕と10年間一緒にいるということだ。それはつまり、棗が10年間修行を続けてきている、ということ。生半可な気持ちで挑むと、海斗でさえ負ける・・・いや、()()()()()()()だろうね。」


———————————————————————————————————————————————————


なんかそんなこと言われたらやる気出てくんじゃん?絶対に認めさせてやる・・・!



「10分間は何をしてもいいわ。私に攻撃するでも、体当たりするでも・・・・・・()()()使()()()()、ね。ただし円をこの場から動かすのだけはダメよ。ルールは私を動かす、ことだから。」



天力(エーテルギフト)・・・・・・使っても良いんですか?」


それだとすぐ終わっちゃうんじゃ・・・。


「ええ。()()()覚醒しているんでしょう?天力が。」


「貴方もって・・・もしかして棗さんも?」


「ええ。私も覚醒しているわ。ただ、今回は使わないけどね。」


え、だったら・・・


「じゃあ・・・俺も使いません。」


そう言うと、棗さんは驚いたように目を見開いた。



「・・・どうして?」



ややあってそう聞かれる。



「だって・・・・・・()()()()()()です。」


卑怯だろ向こうが天力使わないのにこっちが使うとか。



「・・・!・・・・・・好きになさい。始めるわよ。」









「はじめっ!!」




審判をしていた一人の使用人さんの言葉と共に、俺は棗さんへと突撃する。


ちょっとキツめの衝撃かもしれないけど、これも認めさせるためだ。申し訳ない。


そう思い、全力で体当たりしていった。











———————————————————————————————————————————————————


「さてと・・・・・・ねぇ、草加部さん。」


突進していった海斗と共に、目の前で上がった砂埃に目を細めながら、楓は隣に立つ草加部有鍍(くさかべありと)へと呼びかけた。


「なんでございましょう。」


一方で同じように、砂埃が晴れてくるのをじっくりと見つめている老翁は目を離さずに答える。



「やっぱりさ・・・海斗が()()()()()()()()()()()・・・・・・冗談抜きに、気になるよね。」



「・・・・・・・・・・はい、そうでございますな。」



二人の見つめる砂埃が・・・・・・・晴れる。


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・・・・・・・感触は『壁』だった。全力で体当たりした俺の体に、全く同等の衝撃が返ってきていた。作用・反作用だったか忘れたが、とにかく俺の体は目標に当たった瞬間に止まっていた。



「・・・・・・・言い忘れていたけど、私も当然貴方と同じように楓から武術の修行を受けていたわ。」



ゆっくりと、目線を上にずらして()()を見る。



「・・・だけど私には『攻撃』の才能はあまり無かった。少なくとも武術では。」



今俺の体を止めているのは何か。壁?違う。見てしっかりと確認した。正真正銘、人だ。



「・・・・・・だから()()()()に全てを注いだ。」



そう、人だ。・・・・・・・・・・いや、正確には()()()()だ。



「『攻撃』ができないのなら・・・・・・()()()()()()()()()()()()。」



そう言った棗さんによって、俺の体は止められていた。俺の全力の体当たりが見事にピタリと止められていたのだ。


・・・・・・だが驚くべきはそこではない。その莫大なエネルギーを受け止めたのは・・・・・・・



「防御を極めるとね、何事にも動じないのよ。・・・・・・そう、()()()で耐え凌げるの。」





・・・・・・・・・・・棗さんが出した、たった一本の人差し指だった・・・。






「覚えておきなさい、天音海斗。私は全ての仇なすモノから、楓を守り抜く『神楽楓最強の盾』よ。」

















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「僕に出来た『一番最初の弟子』と、僕が育ててきた中で『一番成績が優秀だった弟子』・・・。果たしてどっちが勝つかな・・・?」


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「攻」の海斗と、「守」の棗。


10年間修行を続けてきた後者の実力は既にずば抜けており、恐らく物理的な護りの術だけなら右に出る者はいない、文字通り「最強の盾」。


一方、たった3ヶ月足らずながらも楓も認める驚愕的なポテンシャルを示し、メキメキと実力を伸ばしていく前者。武術という面においては、今やその力量は「最強の矛」に近いと言っても過言ではない。




「矛盾」:二つの物事が食い違っていて、辻褄が合わないこと・・・。


果たして一体どちらに軍配が上がるのか。







結構、大仰に書いてますけど、多分次回で終わります。はい。あんまり話数をかけていられないので。

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