神楽総本家 弐
最近更新のペースが落ちてるねぇ・・・。
「ちょ、ちょ、ちょっと待って下さいってば!!」
抵抗も虚しく、首根っこを掴んだ楓さんによってズルズルと引き摺られて行く俺。
ここに住む、と聞いてからあれよこれよと言い訳をしてみたものの、「うるさいなぁ。さっさと行くよ。」の一言で片付けられてこうして引きづられているのだ。・・・それで良いのか俺。
にしてもやはり広い。・・・広い。・・・・・・広すぎる。ここに来るまでにもう50の扉は見たぞ。質素だけど古めかしくもないオシャレな雰囲気だったり、豪華な装飾がされていたり。まさかこれ全部覚えてるのか、楓さんたちは。
そうこうしているうちに一つの扉の前で止まった。そしてそこでやっと楓さんに離してもらえる。
「着いたよ。今日からここが君の部屋だ。」
そう言った楓さんに釣られて扉を見ると
《KAITO》
の文字が。・・・・・・・え?
「いや・・・いつの間に用意したんですか・・・?」
なんでもう名前まで入ってんの?え、怖すぎるんだけど。
「さぁ?僕たちがここまで歩いている時じゃない?」
さぁって・・・・・・え、まさか。
ふと思い当たってばっと振り返ると、案の定、意味深に笑っているあのお爺さんが目に入った。ちなみにこのお爺さんの使用人はさっき玄関で俺らに挨拶をしてから楓さんの荷物と俺の荷物を持って、他の二人の使用人さんと共にずっと付いてきてくれていた。
・・・・・・・・・いや、引き摺られてる俺を助けようよ。
「はい。お二人がお帰りになられている間に我々で部屋を用意させていただきました。春華さまより、楓さまの愛弟子とお聞きいたしましたので、用意出来うる限り最高級の家具をご用意いたしました。・・・とはいえ約1日での早急の仕上げになっております故、至らぬ点などあればお申し付けください。」
・・・・・・情報が追いつかない。とりあえずやっぱりこのお爺さんがめちゃくちゃ有能なことしか分からん。
「あ、あのう・・・春華さんが俺がここに住むって言ったんですか?」
「いえ、春華さまからは『楓さまが強引に住まわせようとするだろうから、部屋を用意しといてあげて』と伺っておりました。」
合ってんじゃん・・・。楓さん、予測されちゃってんじゃん・・・。さすが幼馴染・・・?
すると今まで聞いていた楓さんが口を挟んでくる。
「いや、一応学園にも寮はあるんだけどね。」
・・・え?
「え、じゃあそこが良いんですけど。てか寮に入らなきゃ行けないんじゃないですか?」
そう、今まで大量の蝕食たちと戦ってきたのは《対蝕食特殊能力学園》とやらに入学するためだ。そしてそこに寮があるのなら、別にそこで良いじゃないかと思ったんだけど・・・
「そこじゃ強くなれないからさ。」
とのこと。
「基本的に寮では安全も考慮して一切の戦闘行為が禁止されているんだ。つまり天力の特訓とか、実践的な訓練とかは一切できないってこと。それだと海斗は強くなれないだろう?」
「ってことは・・・・・・」
「ここに住んでもらったら、いつでも僕が訓練を付けてあげることができる。天力も、武術もだ。」
まじかぁ。今ここに俺の夢見ていた遊びまくる日常が崩海したことを告げる。
「楓さまの教えはとても分かりやすいので、良い先生になって下さると思いますよ。」
後ろで聞いていたお爺ちゃん使用人もそう言ってくる。てかこの人の名前なんだ?後で聞こう。
うーん・・・楓さんが良い先生なのは分かってるんだけどさぁ・・・・・・。そういうことじゃないんだよなぁ。
「まあもう諦めなよ、海斗。別にここでの生活は悪くないはずだよ。」
「ハァ・・・。一旦決めた楓さんに何を言っても無駄なことは分かってます。」
「言い方ひどいね。」
まあしょうがないか。
「分かりましたよ。これからよろしくお願いします。」
「よろしい。さっ、そういうことだからさっさと部屋に入ろう。」
ニコッと笑って楓さんが扉を開けた。
とりあえずその後のことはあまりよく覚えていない。ずっと歩いていた疲れで、荷物を置いて楓さんたちが出てった後にすぐ、めちゃくちゃ広かった部屋にあっためちゃくちゃデカいベットで眠ってしまった。
覚えているのはめちゃくちゃ広くてめちゃくちゃデカかったことだけ。
「海斗、朝だよ。」
楓さんのそんな声で目が覚めた。どうやら1日眠ってしまっていたらしい。カーテンの隙間から溢れる陽の光が、うっすらと開けた目にかかり眩しい。
「おはよう・・・ございます。」
「おはよう。」
あくび混じりに返事をすると、向こうも挨拶を返してくる。
そのまま簡単に着替えをして、楓さんと一緒に部屋を後にした。とりあえず楓さんに付いていくと、到着したのは・・・・・・「どっかのパーティー会場ですか?」
「違う違うリビングだよ。」
「えっ声に出てました!?」
「うん思いっきり。」
いや、でもこれは声に出してしまうのも仕方がないだろう。昨日からずっと感じていたが、ここは何もかもスケールが違いすぎる。楓さんが「リビング」と言ったこの場所でさえ・・・・・・例を挙げるとするなら、象が少なくとも三十匹以上は入るような広さだ。
よく見ると机や椅子、ソファ、テレビといった、なるほど確かに「リビング」であるこに間違いはないんだろうけど・・・・・・まあここでは俺の常識が通用しないってことだ。
それから楓さんと一緒に出された超豪華な朝食を食べ、俺たちは近くのデパートへと買い物に出かけた。何しろ俺はほとんど何も持っていなかったから。
ちなみにデパートに着くまでに30分くらいかかった。確かこのデパートは「神楽家」の隣に立地しているはずだ。・・・・・・・なんで30分もかかるんだろうね、おかしいね。
「ええっ!草加部さん・・・・・・って使用人長じゃないんですか!?」
リュックを見ている最中に、楓さんから何気なく伝えられた言葉に今とても驚いている。話しているのは、あのベテランそうな雰囲気を漂わせたお爺さんの使用人さんだ。名を草加部さん、というらしい。ベテランというのは間違いではないようで、もう何年も楓さんに仕えているのだとか。だが・・・
「そうだよ。草加部さんは《副》使用人長だね。基本的に僕がいない間の神楽邸の管理はもちろん、新人の教育など幅広い仕事をやってくれている超優秀な人だよ。」
「そうなんですね・・・・・・。あの、じゃあ使用人長っていうのは・・・?」
そんなすごい草加部さんよりも、さらに上の立場についている使用人長。一体どんな人なのだろうか。そう思って聞いてみると、楓さんはとても微妙な顔をしてこう言った。
「あー・・・・・・彼女は・・・」
・・・ん!?
「彼女って・・・・・・女性なんですか?」
ってことは使用人長よりもメイド長って言った方が良いのか?
「そうそう、女性なんだよ。・・・・・・まあ、すごい優秀なのは間違い無いんだけどね。」
さっきから楓さんは歯切れが悪い。顔もずっと微妙なままだ。
「その・・・・・・一言で言うと『鉄の女』かな。」
言い切った。すごい迷って・・・言い切った。「鉄の女」・・・?どういうことだ?
「まあ、会った方が早いよ。」
そう言って楓さんはスタスタとデパートの出口へと向かっていってしまった。俺も言葉の意味を考えつつ、買った荷物を肩にかけて後を追うのだった。
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「・・・・・・・・・・・・・あれが、楓の『一番弟子』・・・ね・・・。」
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「・・・・・・・・・ハァ。」
ちなみにデパートを出る直後、楓さんが小さくため息をついていたが、どういうことだろうか。
ねぇねぇ楓さん、デパートで買い物してたんだけどね、途中からすっごい視線を感じたんだ。
一体誰が見てるんだろう?




