共なる闘い、されど・・・・・・
「・・・・・・。」
「・・・・・・斗。」
「・・・・・・海斗。」
うーん・・・?
「海斗。」
「・・・っは!?」
目を覚ますと楓さんが覗き込んできていた。
「楓・・・さん?」
「おはよう海斗。身体は痛くないかい?」
身体・・・身体。・・・・・・!?
「腕が・・・治ってる?」
「あーうん。海斗が気絶してる間に一通り治しといたんだけど・・・。他にも痛いとこはない?」
「・・・欠損した部位まで、完全に復元できるんですか。」
「まあ、そうだね。」
・・・・・・チートじゃないか。余りにも強すぎる。
まあ、楓さんに常識が通じないのはもう慣れたことだ。
そんなことを考えながら体を起こし、その場で軽く運動する。
「・・・大方、大丈夫そうですね。問題なく身体は動きます。」
「それは良かった。」
見るからにホッとしたような顔で呟く楓さんから目を離し、周りを見渡した俺は・・・
「・・・あ。」
目の前に広がる漆黒の塊を目にした。・・・否、全く動かないが色で分かる。
「本当に・・・・・・倒せたんですね。Aランク蝕食を。」
「うん・・・。海斗・・・本当に、よく頑張ったね。もちろん海斗なら倒せるだろうって信じてはいた。ただ、最悪何かあっても僕が必ず救い出すぐらいのつもりでいたんだけどね・・・。まさか腕一本だけの犠牲で倒し切るとは・・・。君は本当に素晴らしいよ。というより、天力に覚醒して数分・数十分の者がAランク蝕食を討伐した・・・こんなことは絶対にあり得ない話だ。君には本当に驚かされる。」
「ありがとう・・・ございます?」
やだな、そんな褒められると照れるじゃないですか。
「あ、ところで・・・この漆黒の死体、どうするんですか?」
こんな大っきい死体、どうやって処理するんだろうか。
「ここにこのまま置いておくよ。市街地に現れた場合は、死体を運んで処理する必要があるけれど・・・ここは山だからね。多くの動物の食料となり、隠れ家になる。そして次第にその上には土や枯れ葉が降り積もっていき・・・残った養分を基に木々も生えるかもしれない。最終的に長い長い刻と共に、その身体はやがて山の一部となる。」
「そんなことが・・・。」
「もちろんすぐにという訳にはいかないだろうね。だけどここには人もあまり来ない。実害はないさ。」
死体が・・・山の一部に・・・。
「何はともあれ、本当にお疲れ様。そしてAランク蝕食の初討伐、おめでとう。」
「自分だけの力じゃないですよ。」
そう、自分だけの力じゃ・・・・・・。えっ?
「そっ、そういえば!白銀・・・もう一匹のAランク蝕食はっ?」
まさか・・・楓さん、殺しちゃった!?
「ああ。大丈夫大丈夫。殺してないよ。」
俺のそんな焦りを読み取ったのか、楓さんが笑いながら言う。
そして手を2回叩いた。
「何をして・・・。・・・・・・えっ・・・なんか、地面・・・揺れてる・・・?」
その直後。
「ゴァァァ!!!!」
「うわあああ!?!?」
俺たちのすぐ真横の地面をぶち破って、超巨体が飛び出してきた。
目を疑うほどに透き通った白い表面。漆黒よりは劣るものの、それでも巨大な体躯。
・・・・・・間違いない。
「白銀!!!!!」
「グルルル・・・・・・。」
そこには、つい先程まで共闘していた白銀の姿があった。
・・・・・・ていうか
「お前・・・顔ほとんど削れてなかったっけか・・・?」
俺の攻撃と・・・漆黒の最後の技で吹き飛んでたはずの顔が、元通りになっている。なんで?
「ああ、それは僕が治したからだよ。」
楓さん?
「君たち揃って瀕死状態でぶっ倒れてたからさ。海斗を治療するついでにね。」
蝕食も治療できるんだ・・・。やっぱチートじゃん。と言うよりも・・・
「なんでですか?」
なんで殺さなかったんだ?
「なんでって・・・・・・。ずっと言ってるでしょ。その蝕食を倒すのは、君の役目だよ。」
えー・・・・・・。
現実を直視して言う。もう、こいつ倒せるのか?なんかどんどん進化してくからめんどくさいんだけど・・・・・・。というか、今から戦えってこと!?
そんな思いで白銀の方を見ると・・・・・・
「グルァ・・・・・・・・」
めっちゃめんどくさそうじゃん。いや分かんないけど。
こうなんか・・・顔が「え、めっちゃ疲れたんですけど」みたいな顔してる。分かんないけど!
「ふふ。別に決着を今にしろって言ってる訳じゃないさ。またふらっと来て鍛えなよ、海斗。」
ですよねー!良かったー!
「グルル・・・。」
「・・・・・・おう、そういうことだ。決着はまた今度にしよう。あと・・・ありがとな。一緒に戦ってくれて。お前がいなかったら、負けてたよ。」
表情の読み取れない白銀の蝕食と、分かりやすく照れてお礼の言葉をぼそっと言った海斗。
見つめ合う一匹と一人は、遠くかけ離れた存在で。
されどその目にはどこか同じようなものが浮かんでいて。
それは敵意?
それとも憎悪?
否・・・・・・・・・
「グルァァァ!!!」
遠く響いた咆哮と共に、再び地中へと姿を消したのを最後に、一人と一匹は別れる。
全力で殺し合った。
必死に共闘した。
そして共に『生』を掴み取った。
それは燃え盛る敵対心ではない。
しかして、それは友情でもない。
一人と一匹の間に“絆”なんて生ぬるいものはない。
あるのはただ、尽きせぬ『闘争心』のみ・・・・・・。
それが再び燃え盛るのは・・・・・・・両者のみぞ知る。
仲良くするつもりはない。
そして、次があったら確実に殺す。
だからこそ、今だけはお互いを認め、そして別れよう。




