戦う意味 拾陸
「さて、じゃあまずはつい今しがた覚醒した『水』からいこうか。」
俺の隣でそう話す楓さん。いや、いこうかって言われてもなんも分かんないんだけど。
「そんな顔しなくて良いって。ちゃんと1から教えていくから。」
あ、顔に出ていたらしい。
「そうだな・・・とりあえず『青色のエーテル』に意識を集中させてみて。」
「青色・・・?意識を集中させるっていうのはどういう・・・・・・?」
「そんなに難しいことじゃないよ。ただ頭で意識するだけでいい。そうしたら、エーテルは必ず応えてくれる。」
意識・・・意識ねぇ。とりあえず青色に光ってるエーテルについて考えてみる。綺麗だなぁ・・・
ん!?
「あっ!なんかより一層光り始めました!えっ!?なんか近寄ってくる!?」
「落ち着いて落ち着いて。その状態が天力を発動する前の最も基本の状態。扱いたい能力に通ずるエーテルが、自身の周りにあることによって、僕たちは天力を扱うことができている。逆に言うと、エーテルが周囲に集まっていない状態で天力を発動させようとしても何も起こらない。エーテルは僕たちと天力の『繋ぎ目』なんだ。」
なるほど?
「さて、その状態ならば天力を発動できるはずだ。今周囲に集まっているエーテルを意識しながら、『水』を思い浮かべてみて。どんな『水』でも良い。」
水・・・水・・・。
コポンッ
言われて水を思い浮かべていたら、突然そんな気の抜けた音がして目の前に水が現れた。
「・・・・・・まさか、一発で天力を使いこなすとはね・・・。」
「えっ?なんですか?」
ぱしゃっ
あれっ?ふよふよ浮いてた水の塊が急に落下して消えてしまった。
「なんでもないよ。それよりほら、集中集中!さっきも言った通り、常に意識し続けることが大切なんだ。一瞬でも気を逸らすと、制御がとても難しくなっちゃって今みたいに一瞬で形を成さなくなるよ。」
「あっはい!」
集中、集中。
するとまた目の前に水が出てきた。
「うん、そうしたら水を操ってみて。形を変えてみる、と言ってもいいかな。」
「形を変える・・・・・・ですか?」
常に目の前に浮かんでいる水を意識しながら、楓さんにそう答える。
「そう。例えば・・・金魚鉢、分かる?あれの形をイメージしてみてごらん。イメージできたら、そのまま水に意識を流し込むんだ。」
金魚鉢?あの丸っこい・・・。形をイメージして・・・・・・その間も目を離すことなく認識のうちに入れていた水へとさらに意識を戻す。
・・・・・・・・!
「うえ!?金魚鉢の形になった!!!」
「そうそう。上手い上手い。いいかい海斗、これが天力を使って物体を操るっていうことなんだ。」
天力を利用した・・・・・・物体の操作。
「さて、それじゃ応用だよ。目の前にまたまた大岩が飛んできそうだね。あれを防いでみるんだ。」
本当だ。前に目を向けると、また大岩が飛んできている。いや、正確には今までも飛んできていたけど全部楓さんの天力によって防がれていたのか?その証拠に俺たちの少し前には、岩岩が積み重なって地面に転がっていた。
防ぐ・・・防ぐ・・・。単に水を出したとしても、あの勢いは止めることができない気がする。であれば、さっきみたいに水の防壁を作って岩ごと包み込むことができれば・・・。
そんなイメージを抱くと、目の前の金魚鉢型の水が動いた。そしてそのまま飛んできた岩岩に纏わりつき、先ほどと同じようにスッポリと覆って留めていた。
「・・・・・・・・できた・・・!」
「いくらなんでも早すぎる・・・。元々の素質・・・?それとも・・・?」
そんな弟子の成長に、師匠は少々眉を顰めるのだった。
海斗の操作技術はまだまだ未発達。その操作精度は20%ほど。完全・自在とは程遠い。とはいえ、流動系の水を操り、さらにその形をある程度変えられるというのは、能力を発現させたばかりの者には基本できない芸当。
本来、特殊能力児学園では、中等部の三年間をかけて自身の能力を自在に操れるようにする段階まで持っていく。
そして、今海斗がいる操作精度20%に到達するのは大体2年生の中期ぐらい。そう、普通の能力者は能力が覚醒してから、適切な教えをもとにした上で約2年半かけて「ある程度」対象を操れる段階まで持っていくのだ。
それを海斗はたった数分で完了させている。
過去天才と呼ばれ、現在最強と言われる神楽楓が驚愕するのも無理はない。




