戦う意味 拾伍
青年たちは離れた場所からそれを見ていた。
海斗たちに飛んでいった大岩が、Bランク蝕食の尻尾によってたまたま粉砕された様子を。
そのままAランク蝕食へと突撃していったBランク蝕食が、Aランク蝕食の触手の一本を噛みちぎり飲み込んだ様子を。
しばらく動きを止めたかと思ったら、古き皮を脱ぎ捨てて一回り大きくなった白銀の体躯を表した、新たなるAランク蝕食の様子を。
そしてその間、あれだけ逃げ回っていた海斗が一切の動きを止めていた様子を。
隣に押さえつけてある仲間は「生きることを放棄している!」などと叫んでいたが、神楽楓は見極めていた。
確かに途中までは絶望し、生きることを諦めていたかもしれない。
だが、今の自分の弟子が、先ほどまでとはどこか違う空気を纏っているのを、楓は見逃してはいない。
「気付いたかな・・・・・・・・・・・・『大切な想い』に。」
ふう、と息を漏らす。楓の見立て通り、そのことに気づいたのならばもう安心だ。
そしてその答えは、
“死んでたまるかっ!!!!!!”
という海斗の叫びと、それに呼応した空気の動きによって示される。
「さてと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やっと、来たね。」
楓は人知れず呟き、そして動き始めるのだった。その顔に、いつもよりも柔らかい微笑みを宿して・・・。
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・・・目の前に岩が浮かんでいる。いや、水に包まれた岩が水ごと浮かんでいる。一体全体何が起こってるんだ・・・?それになんか・・・周りがピカピカと輝いているような・・・?
「ひっ・・・!」
「・・・?・・・・・・っ!」
後ろに庇っている母親が小さく息を呑んだため、何事かと思って前を見たらまた大岩が飛んできている。しかも何十個も。どうやら二体のAランク蝕食は戦闘区域を岩場の方に移していったようだ。ぶつかり合う衝撃で削れた岩岩が、こちらに飛んできている。大量に。
いや、ど、どうすれば・・・。なんで水が出てきたのかも不明だし、そんなこと考えてる間に岩が・・・・・・。
「【全音消失】」
・・・・・・・・へ?
飛んできた大岩たちが・・・・・・・止まった・・・。
てかこの技、記憶にある。それに、ミューザリオンって・・・。
「まったく・・・・・・ヒヤヒヤさせてくれるよ。」
・・・・・・・!
「楓さん!!!!!」
うわ!めちゃくちゃ久しぶりに見た気がする!おかしいな。別れたのはつい数時間くらい前のはずなのに。
「想定ならもうちょっと早い段階で覚醒するはずだったんだけどね・・・・・・鍛えすぎたのが裏目に出ちゃったかな。」
?何を言っているかよく分からない。
「・・・とはいえ、これで分かったかい海斗?」
・・・・・・?・・・・・・・・・・!!
「・・・・・・ええ。分かりました。『復讐したい』じゃなくて、『生存したい』という想いが大切なんですね。・・・・・・・・そしてそれが、俺の『戦う意味』になる。」
それを聞いた楓は微笑んで答える。
「そう・・・。その通りだよ。それに気付いたなら、もう安心だね。」
「そうですかね。」
海斗もまた、笑って返す。
「まあもちろん、まずはここを切り抜けなくちゃいけないけど。」
とはいえ、まずは現実の直視をする楓と海斗。
「海斗、今君に目覚めた力こそが、蝕食相手に特攻となる力だ。名を『天力』と言う。」
「エーテルギフト?」
「そう。個々人の天力には内容の差異はあれど、基本的には何かを制御下に置き操ることができるという共通性を持っている。」
「ちなみに・・・楓さんのエーテルギフトは・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・それは秘密だね。」
「なんでですか!」
「誰にだって言いたくないことはあるでしょ。それは置いといて。・・・・・・一番最初に覚醒した時には火を、そして今回は水・・・か。まあ、ある程度予想はつくけど・・・・・・。」
なんだ?何かぶつぶつ言ってるけど。
「さて海斗。天力を授かった人間は『エーテル』をエネルギーとして力を行使している。エーテルを通して、対象の操作・事象の発生をさせていると言っても良い。」
エーテル。
「そして、天力に覚醒した今の君なら、空気中に漂っているエーテルが観えるハズなんだけど。・・・・・・どうかな?」
空中に漂っている・・・?
なるほど。さっきから周りでキラキラと輝いているもののことか?
「見え・・・ていると思います。なんか、キラキラしてます。」
「そう、それがエーテルだ。・・・・・・・何色が観える?」
色・・・?
「ええっと・・・・・・・赤と・・・・青と・・・緑と・・・黄色と・・・黒?です。」
「やっぱりか。」
「え?」
「ああいや、なんでもない。それじゃ、これから天力を活用した実践に入っていこう。対象は前方のAランク蝕食二体。まずは回復しようか。」
そう言った楓さんの両目が金色に輝いて———
「【超治癒】」
出たよ。このチート級回復能力。さっきまでほぼ壊れかけだった両足からは完全に痛みが消え、恐らくあばらの一、二本を折られていたであろう身体は最高のコンディションを感じられるようになり、粉砕されていた両腕は完璧に元通りだ。
「ありがとうございます。」
「どういたしまして。さて、それじゃ・・・」
「あ、その前に。後ろにいる親子を避難させたいんです。」
俺はそう言って振り向いたのだが。
「あれ!?いない!」
さっきまで確実にいたはずだったのに!!
「ああ、彼女らなら山下まで連れていったよ。流石にこれ以上戦いに巻き込んではいられないからね。」
・・・いつの話!?
要するに「エーテル」に干渉して常識はずれなことを一部できるようになるから「天力」。
最終ラウンド・・・スタートォォォォォォ!!




