戦う意味 拾弐
か、書く気が起きん・・・・・・!
誰か・・・力を・・・・・・・!
「グァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
「ひぃっ!!」
「ちぃっ!【拳魂武術】・・・・・・【薙脚】!!!」
「ゴァァァ!!!」
状況は最悪だ。ただでさえ身体はボロボロだったというのに、守りながら戦わなければならなくなってしまった。逆に、奴は簡単に食える獲物が二体もやってきたことで、狩猟本能に火が付いたようだ。今の俺と奴、どちらのモチベーションが高いかなど言うまでもない。そしてモチベーションが高い奴の動きは、同じ手負いの俺と比べて高くなってきている。
「・・・・・・くそっ。」
「・・・・・・・・・あ、ありがとう・・・・・ございます。」
「礼はいらない・・・です。・・・・・・それより早く逃げてください。ここは危険ですよ。」
先刻の蝕食の攻撃から庇い、後ろで地面に座り込んでしまっている二人の人間を見ながら言った。一人はまだ幼い男の子だ。10歳ぐらいだろうか?いかにも登山用のリュックサックを背負い、ジャージに身を包んでいる。その男の子が震えながらしがみついている女性が、彼の母親だろうか?こちらはより専用っぽい登山具を持っているから、登山家なのかもしれない。庇いながら戦うのはキツイから、早く逃げて欲しいのだが・・・・・・・。
「そ・・・・・・それが・・・・・・・。腰が抜けてしまって・・・・・・・。」
今にも泣き出しそうな顔でそう言った母親に、俺は思わず心の中で舌打ちする。分からない訳ではない。あんな巨体を前にしたら、体がすくみ動けなくなるのも無理はないだろう。だが、脇目もふらず逃げ去ってくれた方が、彼女らと俺の両方の生存率が上がることは間違いない。
「グルルルルルル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
先ほど蹴り飛ばした蝕食が復帰してきたようだ。すでに身体はボロボロだが、その目は捕食者の輝きを失っていない。対してこちらは親子の登場により完全に「獲物」へと成り果てた。非常にまずい。
楓さんは・・・・・・出て来る気配もない。俺に任せているのだろう。・・・が、こんな時くらいは出てきてほしい。流石に死にそう。
「ゴァァァァ!!」
「【拳魂武術】・・・・・・【抜脚】!!」
「ゴァァ!!!!」
「ぐぅっ・・・!!!・・・はぁっ・・・・・・はぁっ。」
「・・・・・・・・・グルルルル・・・・・・」
どんだけ起き上がってくるんだ・・・。もうすでに相当以上のダメージは与えてるはずだぞ!?流石にそろそろ限界だ・・・・・・。あと何回、奴の突進に耐えられるか・・・・・・。
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「・・・・・・本当の本当にっいい加減にしてください!」
「ん?」
「いつ動く気ですか!?本当に死んじゃいますって!!」
歌那はそう声を荒げて、未だ傍観を決め込み全く動こうとしない楓に叫ぶ。
「せ、せめてあの登山者たちの避難ぐらいはさせてくださいっ!見れば分かるでしょう!?彼女らがあの子を追い詰めてます!!」
「駄目だってば。何回言ったら分かるの?」
「な、なんでそんな冷静でいられるんですか!?一般人の登山者がいるんですよっ!?」
「・・・え?」
「・・・え?な、何ですか?」
「まさかと思うけど・・・歌那、君は彼女らがこの山を登り始めていたことを知らなかったのかい?」
「・・・・・・ぇ、い、いや知りませんでしたけど・・・・・・・。」
「あぁ、だからそんなに焦ってたんだね。君にとっては彼女らが『アクシデント』だったから。」
「・・・・・・まさか、彼女らが登頂していることを知っていたんですか!?」
「もちろん。」
「そ、それで放置してたんですか!?蝕食がいるのに!?」
「言っただろう?海斗の成長には『きっかけ』が必要だと。・・・歌那には言ってないっけか。」
「い、言われてません・・・・・・。・・・・・・・・・ということは、彼女らを利用したということですか!?あの子の成長のために!?死ぬかもしれないんですよ、どっちも!」
「利用したって言い方は悪いね。海斗の成長のための道標になってもらったんだよ。」
「同じことです・・・!」
「しょうがないだろう?海斗が『天力』を解放するために必要なことだ。本来は中等部でその解放方法を学ぶからね・・・・・・。確かに海斗の武術は強いけど、中等部で三年間しっかりと学んできた子たちと肩を並べるには、やっぱり『天力』は必須だ。」
「なぜ中等部に行かせなかったんですか!?こんな過酷な修行まで課して・・・!」
「遅すぎるのさ。歌那だって薄々気づいているだろう?海斗は、武術のセンスといい、あの精神力といい、対蝕食の人材としては素晴らしい可能性を秘めている。そんな人材に、他の者と同じような基礎的な内容の三年間を過ごさせるのはあまりにも勿体無い。」
「・・・・・・・それは・・・何となく分かりますが・・・・・・。」
「・・・さて。もう一つの『きっかけ』も段々と近づいてきたようだ。頑張ってね、海斗。来る日に備えて、力を付けるんだよ・・・・・・。」
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彼らがいる山から少し離れた辺境の村。男が畑仕事をやっていた。
「よいしょ、よいしょ。ふう。・・・・・・ん?」
一息ついた男の顔が暗くなる。太陽光が当たらなくなったのだ。
「何だろう、雨でも降るのかな?」
空を見上げた男は、一瞬雨雲が広がっていると思った。そしてなぜ雨が降っていないのか気になった。だが、男は気づいてしまった。雨雲が尋常ではない速さで動いていることに。
「ひっ・・・!」
ぺたん、と尻餅をついた男はガクガクと震え出す。
「な、なんて大きさだ・・・!こんなの・・・・今まで見たことがない・・・!・・・・・・・こ、これが・・・・・・・・・・・・・・Aランク蝕食・・・・・・・!!!!」
「シィィィィィィィィィィィィィィ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
村一つを覆い隠すほどの巨体は、着実に海斗たちへと近づいてきていた・・・・・・。
不屈の精神・・・何度殴っても、何度蹴っても、目的(餌を食べる)だけを見据えて必ず起き上がってくる・・・・・・
一体どっちが主人公なんだか・・・・・・っは!?
能力者がもつ固有能力のことを「天力」と呼びます。諸々の説明は楓さんが今度してくれるそうです。例えば、楓さんの天力は「———」という感じですね。
・・・・・・なんなんでしょうね、楓さんのは。
Aランク蝕食さん、お待たせしました〜!
存分に、暴れてください!←人類の敵がいます。処刑してください。




