表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷の貴婦人  作者:
第三章 アトレーの家族
39/58

カジノ

 馬車で少し行くと街に到着した。街自体の規模は小さいが、なかなか賑やかで人々も楽しそうだ。


 早速教えられたカジノに向かい、入口でチェックを受けた。

 初めての来店だと告げると、マネージャーがやって来て、システムを教えてくれた。お金を予めゲーム用のチップに替えて遊ぶようだ。

 

 カジノとしての営業は9時からだそうで、それまでの時間はゲームを楽しむラウンジということだった。チップも現金化はできない。


 それから、子供は十一歳以上で、入店は父兄同伴、常に一緒に行動することと、七時まで限定と言われた。とても真っ当な店だ。


 グレッグが、この子に見覚えはないかい、と尋ねた。


「ありません。こんなに目立つご子息を連れていらっしゃったら、絶対に忘れませんから確実ですよ」


「ありがとう」


 三人はお金をチップに替えて、ルーレットに向かった。

 アトレーがなかなか勘が良く、赤黒で賭けて行って、大分チップが増え、グレッグとキースが数字に賭けてすったあたりで、また元金程度に戻っていた。


 キースがポーカーをやりたがり、子供だけの参加は駄目と言われたので、アトレーと二人でひと席をもらった。テーブルの他のメンバーは、綺麗な父と息子に見とれながらも、彼らをカモだと踏んで、ほくそ笑んだ。


 ところが始めてみるとこの親子が強い。

 特に子供がすごく強かった。

 ポーカーフェースがうまく、手が読めないついでに、目が合うとニッコリ微笑むのだ。デレーッとしているうちにチップを巻き上げられる。


 あのテーブルで天使のような悪魔がゲームをしていると評判になり、ポーカーのテーブルの周りに、人だかりができてしまった。


 グレッグが二人の間に体をねじ込んで来た。


「おいおい、勝負しにきたんじゃないだろ。七時には出なくちゃいけないんだ。聞き込みをしなけりゃ」


「あ、そうか」


 キースが声変わり中の、ちょっとかすれた声で言って、慌てて立ち上がった。


「これで終わりにしますね。皆さん、ありがとう。チップを置いていきますから、分けてくださいね」


 テーブルを囲む面々は複雑な顔で、またおいで、と声を掛けてくれた。

 グレッグがキースに問いただした。


「なんだって、あんなにポーカーが強いんだ。おまけに慣れているし」


「それはね、ジョンとやっているからだよ。彼は大人のすごく強い人とよく勝負しているから、すごく強いんだ。僕もやっと対等にゲームできるようになったんだ」


 グレッグが、溜息をついた。


「あの王子様かあ。曲者だな。そういえば、先日マックスを見たときも、全く表情に出さなかったもんな」


「うん、いつもね、彼が何を考えているかなんて、僕には全然わからないよ」


「じゃあ、どうしているんだ?」


「聞くの。何考えてるって」


「ああ、そりゃあいいね」


 二人の会話を聞いていたアトレーは呆れたが、笑い出した。


「キースはグレッグに良く似ているよ。それで、ジョン王子は前王に似ているんだろ。そりゃあ、いいコンビだ」


「何か飲むか?」


 グレッグが奥のバーカウンターに二人を誘導して、適当に注文してくれた。

 キースはアップルジュースをもらった。


 バーテンンダーにチップを渡しながら、グレッグが聞いた。


「ここにゲート伯爵家子息の奥方がよく来るって聞いているんだが、知っているかい?」


「ああ、常連です」


「へえ、貴婦人一人でこういう店にやって来るなんてめずらしいね?」


「いえ、いつもご主人とご一緒ですよ」


「へえ~。そりゃあ、仲の良い事でいいね。じゃあ、ありがとう」


 グレッグはグラスを持って二人の元に戻り、今聞いた事をアトレーに話した。

 キースに聞かせるにはふさわしくない内容だ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
さっさと離縁して忌み子も絶縁しろあの忌み子がやらかして困るのはもう一人の息子と家族なんですよ
そんなこったろうと思ったわ<旦那(浮気相手)と一緒
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ