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氷の貴婦人  作者:
第一章 最初から破綻した結婚
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話し合いの結果

 ランス伯爵はそこまで言ってから、今度はマーシャの方に向いた。


「マーシャは自分で勝手に生きろ。既にサウザン子爵家に嫁いだ時に離籍している。今後も関係を持つ気は無い。我が家に接近することを禁じる」 



 これには流石にマーシャも驚いた。婚家から離縁されるのは想定内だったが、実家は考えてもいなかった。


「なぜなの。ソフィだって結婚した時に離籍しているし、条件は同じじゃないの」


 グレッグが怒鳴りつけた。


「同じじゃないだろう。お前はランス伯爵家の名にも泥を塗ったんだぞ。金輪際顔を見たくない」


「マックスは孫だし、甥よ」


「知らないね。誰の子かもわからない私生児など、我らは知ったこっちゃない」


「ひどい。アトレーの子よ。あの顔を見たら一目瞭然じゃない」


 そこで、心底不思議そうに、グレッグがマーシャに尋ねた。


「お前、貴族社会に知れ渡るような真似をなぜした? なんの為に?」


 マーシャに代わってゲート伯爵夫人が答えた。


「キースより可愛いと、皆に言わせたかったのですって。それとアトレーの子供だと広めて、アトレーの後妻の地位を狙ったそうよ」


 グレッグも、他の者も、しばし絶句した。

 グレッグが頭を振りながら絞り出すように言った。


「馬鹿馬鹿しい」


「同感よ。それで失うものが分からないほど馬鹿なのね。悪いけど、ランス家の教育を疑ってしまったわ」


「そうですね。こいつはソフィと違って昔からそんなだった。だからアトレーにはソフィを紹介したのに、お前がそれほど悪趣味だったなんて知らなかったよ。マーシャと生涯の恋人? 好きにしてくれ」


 ヒートアップする場とは正反対の、のんびりとした口調でランス伯爵が言った。


「ではこれで話は終わりでいいな。サウザン子爵家への対応は各々で行う。では、帰ってくれるかね」


 背を向けかけた伯爵に向かってマーシャが叫んだ。


「いつもソフィにばかり良くしてひどい。お兄様だってアトレーを私に紹介してくれたら良かったじゃないの。私は田舎の子爵家に嫁がさせられたのよ。遊ぶ場所もないところに」


 ランス伯爵が振り向いた。


「お前がそんなだからだ。何度も言い聞かせただろう。貴族界のルールを学ばないなら、貴族の家に嫁がせられないと」


 そして疲れたように言った。


「それでも、できれば貴族の家に嫁がせてやろうと、大丈夫そうな相手を選んだのに、何の意味も無かったな」


 マーシャは怒りで真っ赤になって叫んだ。


「私は、アトレーと再婚するんだから。後で後悔しても、孫には会わせてあげないわよ。それにゲート伯爵家のほうが格上なのよ、残念ながら」


 溜息をついてグレッグがアトレーに尋ねた。


「仕事、解雇されたんだろ。出世の道が閉ざされたな」


「ああ、昨日解雇された」


「え、なぜなの?」


「君のせいだ。馬鹿は要らないそうだ」


 グレッグが焦れたように言った。


「まだ理解していないのか。お前のやったことは貴族社会では認められないんだよ。もうまともな家からは相手にされない。たぶん子供達も厳しいだろうな。可哀想に」


「なぜよ。わからないわ。子供を洗礼式に連れて来ただけじゃない」


「すぐにわかるよ。お前はアトレーと子供を道連れに、貴族界から脱落したんだ。友人達も、もうそっぽを向いているだろうな。平民として働いたらどうだ」


「馬鹿な事言わないで!」


「もう良いだろう。早く出て行きなさい」


 ゲート伯爵家の一同は、追い立てられるように邸から出された。


 伯爵夫人はこのままマーシャを置いて行こうと言ったが、泣き叫ばれて結局馬車に乗せてしまった。マーシャだけならどうでもいいが、アトレーの息子は捨てられない。



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