文字数制限内に収める短編小説のコツ
どうも。日頃、エッセイや歴史、SFや童話など、主にマイナーなジャンルで色々書いている歌池聡です。
何をどう間違ったのか、『第5回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』を受賞してしまったので、少しは知っている方もいるかな?
自分はこれまで『なろラジ大賞』やいくつかの自主企画で、文字数制限のある短編に挑戦してきました。『なろラジ大賞』の1000文字や『とんかつ料理企画』『麺類料理企画』の2000文字、最近は500文字ぴったりという超短編の企画などもあったりして。
そういう作品を色々書いているうちに、短い文字数で話を収めるコツみたいなものがわかってきたような気がします。そこで、このエッセイではその辺についてちょっと語ってみたいと思います。
──主に初心者の方向けに『いかに文字数を節約するか』という話になるので、ベテランの方には『そんなのとっくに知ってるよ!』と思われるかもしれませんが。
1. ネタ作りについて
『なろラジ大賞』に挑戦した方なら実感されてると思いますが、1000文字で物語をまとめるのはかなり大変です。
複雑な伏線を張ったような話や、場面がいくつも切り替わるような話はまず無理です。
1000文字なら基本は一幕もの、場面や時間が切り替わるようなものでも1・2回が限度でしょう。
500文字なら場面転換はかなり厳しいです。それこそ『小噺』くらいのネタが精一杯じゃないでしょうか。
登場人物もあまり多くは出せません。1000文字なら、せいぜい主要人物が3人まででしょうか。
ひとり出すたびに、やはり関係性などにも触れないといけないので、一言で済ますにしてもやはり字数のロスです。欲張るのはやめて、少人数で進行する話を考えましょう。
2. キャラクターについて
当然ながら、500文字や1000文字の小説で細かいキャラクターの描写はまず無理です。
外見の美醜や体型、髪の色や目の色など──。
それらの特徴が話の展開に大きくかかわるのであればともかく、そうでなければバッサリ切る勇気も必要です。
あと、キャラクターの名前も短くすべきですね。『ジークフリード王太子殿下』『ランドリエール公爵令嬢エカチェリーナ』なんて長々と書いちゃダメですよ。文字数の無駄遣いです。
日本を舞台にした物語でも、姓名合わせて3~4文字が無難でしょう。2文字は少数派なのでちょっと違和感があります。『関猛』とかだと、何だか字面が三国志の武将っぽいし。
1字姓+2字名か、2字姓+1字名の方が自然でしょうか。
いや、いっそ固有名詞抜きで『僕』『彼女』『先輩』などの代名詞だけでもいいかもしれません。
異世界もので『王子』『公爵令嬢』とだけ書いても、ここの読者さんたちならだいたい外見も含めてイメージしてくれるはずです。
3. 漢字を開かない
『漢字を開く』という言葉を聞いたことありますか?
漢字を使える語句でも、読みやすくするためにひらがなで書く方がいい場合もある、ということです。
例えば『暫く』『偶に』などの副詞、『従って』『但し』などの接続詞、『~して頂く』などの補助動詞などですね。
詳しくは検索して調べていただくとして──でも文字数を節約するためには、読みやすさを犠牲にして、あえて漢字を多用するという手もあります。
読みにくいと思ったら、上の例のようにルビを振ればいいんです。実は、ルビは文字数にカウントされませんので。
4. ルビの裏技
ルビは、必ずしもフリガナでなければいけないということはありません。ルビが文字数に含まれないということを利用して、そこに補足情報を入れるというのもひとつの手です。
『祖国』くらいならそう読みにくいこともないでしょう。最初だけ『松田薫』としておいて、それ以降を『彼女』表記に統一する、とかもアリですね。
ルビは1文字あたり10文字まで付けられます。ただし、あまり多用するのも考えものです。
『俺は奴を許さない』なんてのは、さすがにやりすぎでド顰蹙を買いそうですね。
5. 『言葉の経済効率』を意識する
『言葉の経済効率』とはあまり聞き馴染みのない言葉だとは思いますが──。
これ、『プレ○ト』という番組の俳句コーナーで、よく使われる言葉です。
俳句は五・七・五の17音で表現しますから、言葉の無駄遣いが許されません。なので、ひとつの語句でより多くの情報量が含まれた季語を選ぶのが大事になってきます。
例えば──
『満開の桜の木々から、時折吹く風によって一斉に花びらが舞い散る』
こんな情景も『桜吹雪』の一語で表現できるんです。
他にも『雛収め』という季語には、『雛祭りが終わって雛人形を仕舞ったあとの、何となくがらんとした部屋の寂しい空気感』まで含まれてるんです。凄いでしょ。
季語ではなくとも、ちょっとした言葉の選び方で、その場の雰囲気や感情まで表現できるということがあります。
例:『彼女とデートで回転寿司に行った。』
この文から、彼女があまり高い店でなくても楽しんでくれるタイプだということは伝わりますね。また、ファミリー層の客で賑わっている店内の様子も察せられるので、そこの描写は特に必要なさそうです。この『回転寿司』という言葉も、なかなか経済効率が良さそうですね。
例:『閉園間際の遊園地、僕は彼女をただ待ち続けていた。』
この文から、待ちぼうけを喰らわされた人の切なさや虚しさも、あえて書かなくても伝わってきますね。対照的に、楽しそうに帰っていく他のお客さんたちの姿なども見えてきそうです。
このように経済効率のいい言葉を意識して使うと、情景描写や心象描写にかける文字数を大幅に節約できるので、ちょっと覚えておいてください。
6. おまけ:逆に文字数を増やすには?
ここまでは、主に文字数を節約するやり方を語ってきました。
でも、この『小説家になろう!』で活動していると、文字数を増やす必要にかられることもあります。各社が主催するコンテストでは、『未完結作品も応募可──ただし○万文字以上』などの条件が付けられていることが良くあるのです。
締め切りが近づいてるけど、あと○千字足りない! そういう時にどうすればいいのか。──そうです、これまでに書いたことと逆をやればいいんです!
登場人物の名前は無駄に長くしましょう。ヒロインを『マリ』から『セリスティアーヌ』に変えれば、ほら、名前を一回呼ぶたびに6文字も嵩増しできます。
このサイトの入力ページには『一括変換』の機能があるので、名前の変更も簡単ですしね。
ただし、一括変換した後には必ず読み返すことを強くお勧めします。
思いがけないところまで変換されてしまったために、文章がおかしくなる可能性もあるので要注意です。
例えばそれまで『王子』とだけ表記していたのを『クリストファー王子』に一括変換すると。
後から登場する『第二王子』『隣国のアレス王子』が『第二クリストファー王子』『隣国のアレスクリストファー王子』になるという、シュールで訳の分からん事態が発生してしまいます。
さらに『八王子市』が『八クリストファー王子市』に!? ──まあ、ファンタジーや異世界ものでその地名はまず出てこないでしょうけどね。
7. では実際に書いてみましょう!
『──え? これで終わり? そんなことより、面白い話って具体的にどうやったら作れるの?』
すみません、そこは自分もまだ暗中模索しているところです。というか、ほとんどの書き手の方がずっと悩み続けている永遠の課題でしょう。
自分でいくつも書いてみたり、他の方の作品を読んでみたりして、ご自分に合った創作術を探してみてください。そして『これだ!』という方法が見つかったら、ぜひエッセイにして投稿してください。自分も拝読して学ばせていただきたいと思ってます。