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第7話 悪ーい魔王へと旅立って

「俺たちの目的は、悪の王を倒す事だ」


 巌がそう言った。


「悪の王?悪の王...」


フィリアが考えている。


「悪の何たらの情報が分からなければどうしようもないよな」


 そう、天使からそういう存在を倒せと言われただけで、実際問題、それが何か全くわかっていない。


「いや、心当たりがあるぞ」


「本当か!フィリア!」


「ああ、恐らくそいつはここから遠い西の方角に居る"魔王"のことだな」


 魔王。それらしい響きだ。


「何でもすごい悪ーい奴らしくてな、配下を従えて、悪い事をしているらしい」


「なんだ、悪い悪いって。具体的なことはどうなんだ?」


「いやー、私も故郷にいた時噂で聞いた程度なんだよ。それを利用して母さんがよく『良い子にしてないと、魔王が食べにくるぞー』なんて言ってたな」


「子供の教育に使う程度の存在か、調べる価値はあるのか?」


 俺は疑問だった。そんなに悪いやつならもっとその悪行が知れ渡ってもおかしくないのに。


「火のないところに煙は立たないってな。調べてみる価値はあると思う」


 巌が言う。


 確かにそうだ。ここで二の足を踏んでいても何も始まらない。


「そうだな。とりあえずその魔王とやらを目的にしよう」


「よし。じゃあ西に向かうことになるな」


 そう言ってフィリアはどこからか地図を取り出しこちらに見せて、指差した。


「今いる拠点からまず、南西に向かい、中心都市"トリーブ"に行くべきだろう。そこの方が魔王に関する情報が集めやすいはずだ」


 彼女は地図上の指を右上から左下に移動させた。


「その道中には、一つ村がある。魔竜の村、"マナス"と呼ばれる村だ。長い旅になるだろうから、そこで一回休みをとろう」


「分かった。助かるよ」


「よし!了解した!じゃあ明日に向けて準備しないとな」


 巌はそう言い、部屋から飛び出した。


「お、おい!」


 俺はそう叫んで呼びかけたが、もう彼はいなかった。


「行動が早すぎるんだよな...。しかも勝手に明日出発って決めてるし」


「あはは。まったく面白いやつだ。さて、じゃあ私も明日に備えてしっかり休んどかないとな」


「明日で確定なのかよ。じゃあお前の分も俺が準備しないとな」


「すまないな。だが助かる!ありがとう!」


 フィリアのこういう、さっぱりとした感謝は本当見習うべきだな。俺はつくづくそう思う。


 そうして、俺は残りの金を手に、旅のための物資調達をした。当然ここの文字は読めない。だがなぜか会話は通じるので、何とかなった。


 使い勝手の良さそうなカバン、日持ちしそうな干し肉、寝る時に布団代わりになりそうな布切れ...、特にフィリアのために寝具はちゃんとしてやらないと。枕も用意はしておいた。


 そうこう買い物するうちに、日は落ちた。


 宿に戻る頃には、俺は心身ともに疲れていた。だが、その疲れは心地よいものだった。だって、今日は命の危険がなかったから。


 フィリアに一言かけようと思って、扉をノックすると、こう返答があった。


「んぁ、誰だ、カイかー?」


 そうむにゃむにゃと、明らかに眠そうだったので、俺はおやすみとだけ言って部屋に戻った。


 そういえば、部屋の扉は直っていた。無事に弁償できて本当に良かった。このまま、お金稼ぎに躍起になってバケモノに食われた結末があるかもしれないと思うとゾッとする。


 俺は干し肉を一つ齧って食べた。しっかりとした歯応えだが、良い味だ。


 これでやっと、味気のない日々から解放される。俺はどこか、これからを期待しているのかもしれない。


 ベッドに横になった。考える余裕が出てきたと考えるべきか、これまでを振り返ってみる。


 フィリアはどうして、体が弱いにも関わらず、あんなに明るいのだろう。


 巌の住む100年後の日本は、俺の想像よりはるかに発展しているみたいだ。


 ......俺は未来に来てしまった。もし、目的を果たせたとして、元の世界に戻れるのだろうか。過去に、遡れるのだろうか。


 俺の悪い癖だ。思考を巡らせると、いつも悲観的な考えに帰結する。だから、心配や不安がいつも絶えないんだ。


 そうしているうちに、だんだんと瞼が重くなっていった。


「「起きろォ!!」」


「わあぁ!」


 扉が勢いよく開けられ、男と女の大きな声が

急に響いた。ちなみに、男の声のほうが早口かつ早く言い始めていたので息はまったく合っていない。


 窓を見ると、すっかり明るくなっていた。


「ささ、カイくん。行こうじゃないか」


「私も楽しみだぞ!」


「分かった分かった。準備するから待っていてくれ。気が早いんだからホントに...」


 フィリアは...まあ分かるのだが、この巌とかいうおじさんの性格はどうしたものか。社長ってもっと落ち着いているイメージがあるのだが。俺のただの偏見か?


 支度を済ませ、2人と共に宿を出た。いよいよ旅の始まりだ。何の憂もない、気楽な旅であることを願いながら、仲間と共に拠点を後にした。

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