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第47話 異郷の苦難

 私たちは、穴をくぐり、元いた部屋へと戻ってきた。


「セレスティア......。その人を探せばいいのか?」


「その通りだよ。僕も彼女がどこにいるか分からなくてね。噂では、中央都市付近にいるらしいから、その辺りからあたるのが一番良いだろうね」


「その、中央都市ってのはどういけばいい?」


「この石の力で送ってあげるよ。その後は頑張ってほしいけどね」


 男はそういうと、再び石を穴にかざした。すると、見える景色が、草原から人々が行き交う街へと変貌した。


「さあ、行くといい。この小さな君の仲間を連れてね」


 彼は私のそばをずっとついてきていた、小さなトカゲのような生物"ポチ"をチラッと見た。


「そうだな。この子と、何としてでも目的を果たして来る。だから、どうか私を帰してくれ」


「ああ、もちろん。吉報を待っているよ」


 そうして、私は穴をくぐり、人で賑わう中央都市とやらへとやって来た。来たところを振り向くと、既に穴は消え去っていた。


 雑踏は凄まじいものだった。田舎に住んでいたということもあるが、日本ですら、経験したことが無いほどに。


「何なんだ!!この人の量はァ!」


 人混みにもみくちゃにされながら私の人探しは始まった。離れないように、ポチを抱っこし続けていたのは正解だった。


 そこからは、ただひたすらに聞き込みをした。道行く人に、警備をしている人に、店の人に......。とにかく、何か少しでも情報が欲しかったからひたすら聞いて回った。


 それでもセレスティアという人の情報は全く掴めなかった。


 やがて夜が訪れ、この世界の金銭をもっていない私は、やむなく一目につかないところで一晩を過ごすことにした。そんなに冷え込まないのは良かったが、流石にこたえた。


 ポチを抱きかかえたまま、横になる。そこは土だったので、この街の硬い石造りの地面で寝ることは避けられた。


 目を閉じ、私は思った。まず、金を稼ぐ方法を見つけなければ。息絶えてしまう前に。


 次の日からは、仕事を探す方法も聞くことにした。そちらは簡単に見つかった。荷物運びや、草抜き、掃除といった仕事をすることで、わずかではあるが金を手に入れられた。


 そして、その金を使って宿に泊まり、安い食べ物を食べ、またききこ聞き込みをし、時には金を稼ぐ。


 そうこうしているうちに、数日が経っていった。


 ......明らかにおかしいことがあった。


 ポチが異様に大きくなっている。


 あまりにも成長が早すぎる。前までは、抱っこして、腕におさまるくらいだったのに、今では既に私の2倍くらいの巨体になっている。


 もちろん、そんな巨体を連れて回るわけにもいかないので、私と同じ大きさになったころから、近くの森の中で待っていてもらうことにした。


 幸いポチは大人しく、私の言うことに忠実に従ってくれていた。それゆえに、毎回食事を少ししか持っていけないのが申し訳ないが。

 というより、よく私でも少ないと感じるほどの食事量でこんなに成長できたものだ。


 人探しを始めてからさらに数日後、その日もやるべきことを終えて、ポチに会いに行こうと、森の中へ入っていった。


 すると声が聞こえた。


「...へぇー。すごいわ。この世界にもいるのね」


 その声は明らかに、ポチに向けたのものだった。


 私が近づいてみると、すぐにその者は反応した。森の暗がりではっきりと見えなかったが、女性のようだった。


「あら?今日は。このコ、君の友達かしら。ふふふ」


 何か、かつて会ったグリゴールという男と似たような雰囲気を感じ取った。


「あっ!まだ名乗ってなかったわね!セレスって言うわ。よろしくね」


 彼女の名前は、私の探し人と半分だけ一致した。


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