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とある夏の終わりの風景

作者: 秋葉竹




『じいちゃん、海をとってる』


小魚を掬い上げている

お爺さんをみていた

3歳くらいの女の子が

そんな言葉をたどたどしくこぼした


そろそろ帰ろうかと

ビーチで今日一日の後始末をしていたとき

そんな言葉が風に揺られて届いたものだから

僕は

沈む夕陽を背景にして

陰絵のように佇んでいる2人の姿をみた


お爺さんはバケツの中に

サッと『海』を入れて

その女の子に

バケツを覗かせていた

『おとと、だよ』と

魚のことを『おとと』という

子ども言葉で呼んだ彼に

その孫娘さんはまとわりつき

『おとと、おとと』と

キャッキャ、キャッキャ、と

昼間の海より明るく輝く笑い声で笑い

飛び跳ねて

とっても陽気でへんてこな踊りを踊っていた


夕陽はまだ沈み切らずに

水平線とみわたせる世界すべてを

ゆっくりと朱色に染めてゆき

それをみている僕の白目も

その色に染まっている気にさせた


お爺さんと孫娘さんが2人とも

じぶんのパラソルへ帰って行ったのを

なぜか最後までみ送って

僕は丸めた銀のビニールシートと

閉じて丸めた七色パラソルを抱えて

サンダルでヨタヨタと砂浜を歩いて

駐車場までなんとか辿り着く

砂まみれのサンダルを一度脱いだとき

海を振り返ると

ちょうど水平線に夕陽が沈み終える瞬間


あっ、

と声が出てしまって

周囲をみまわし

想わず照れてちいさく笑ってしまう


あゝ、夏も終わるのかな


でもこの夏の最後に

とてもちいさく可愛い詩人さんに

出会えて

なんだかとても幸せだと想った


いいよね


『じいちゃん、海とってる』








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― 新着の感想 ―
[良い点] いいですね、 「じいちゃん、海とってる」 本当にいいな お爺さんと孫娘さんのはしゃいでいる姿が浮かびました。茜いろの秋さんの白目も。 何度もこのあたたかな 夏の光景が浮かんできました…
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