鹿のつのしたユニコーン
いっぱい「ちくび」って、描きました。
ペットボトルのふたをあけたら
魔神がどろんって でてきて
ねがいをかなえてやるから みっついえ
とっとと いえ
つぎがつかえてるんだから はやくしろ
あたしに そうまくしたてた
あたしには ずっとほしくて
だけど じぶんひとりじゃどうしようもなくて
そんな たいせつなものを ひとつだけ
両ちくびのあいだに ちょこんともってたから
魔神にたよっちゃうのは なさけないけど
このさいだから おねがいしちゃった
それが ひとつめのねがい
へえ そんなんでいいんだ
いいだろう かなえてやるぞっ
なんか ぴかって 光ったとおもったら
あたしの 両ちくびのあいだにしかなかったものが
ちゃんと てのひらでつかんで
ぐにぐに いじくりまわせるようになってた
さあ のこりふたつのねがいだ
とっととしろって いってるじゃないか
せかしてくる魔神に ちょっとまってしたあたしは
ぐにぐに ぐにぐに いじくりつづけた
お風呂にも いっしょにはいって
スポンジで あわあわにしたし
まくらもとにおいて眠って
夜中に目が醒めたら かおのまえにあってにんまりした
ねがいがふたつのこってる魔神は
あたしについて まわってた
でも ごめんね
あたしは ひとつめだけで満足なんだ
ねがいがふたつのこってて
かえるにかえれない魔神は
きょうの夕飯も あたしといっしょにたべるけど
どうやら彼は ピーマンがにがてらしい
ぐにぐに きょうも いじっているうちに
なんだか ここんとこに
にょきりとした突起がほしいって
おもっちゃったから
つまんで よりよりして
ちょっとした突起をつくってみたよ
そしたら こんどは
ここんとこにラインをひきたくて
お道具箱の12色のマジックから
赤いやつをとりだして きゅっきゅってした
きらきらがほしくなったら びーだまをうめこんだし
ぼよよんってさせたかったら ばねをつけたした
そんなことするんだったら
のこりふたつのねがいをつかえよ
親切に さとしてくれる魔神の声もとどかずに
あたしは
かつて 両ちくびのあいだにあったものに
いろんなものをもとめるようになって
かつて 両ちくびのあいだにあったころとは
ちがうものをもとめるようにさえなってた
たいせつなものは
かつて 両ちくびのあいだで ちょこんとあったころとは
にても につかぬ にっころがしになってたんだ
だけど
かつてあったばしょ
両ちくびのあいだに ぎゅっておしあててみると
ああ
かつて ここにあったものなんだなって
あたしには ちゃんとわかったよ
たいせつなものは たったひとつだけ
それに ぜんぶをもとめちゃうなんて
あたしは おおばかやろうだ
ほしいものの ねっこはたったひとつでも
そのさきを枝わかれさせちゃって
たいせつなものを ちがうすがたにさせちゃうなんて
それみたことか
のこりふたつの ねがいをつかえばよかったのに
ふふんってする魔神に うんざりしながら
あたしは のこりふたつのねがいをすることにしたんだ
枝わかれした
鹿のつのしたユニコーンをよんできて
これが ふたつめのねがい
枝わかれした
鹿のつのした このユニコーンの
つのを もとにもどしてあげて
これが みっつめのねがい
ねがいをぜんぶ かなえおわった魔神は
ペットボトルロケットで
つぎのひとのねがいをかなえに
どっか いっちゃったし
もとのつのを とりもどしたユニコーンも
あたしにおれいを いうでもなく
ぱからん ぱからんらん
やっぱり どっか いっちゃった
よかったね もうまちがえちゃいけないよ
あたしは
ちがうすがたにさせちゃった たいせつなものを
かつてあったばしょ
両ちくびのあいだに ぎゅっておしあてながら
じゃあねって 手をふったんだ
ねがいをつかいはたしたあたしに のこされたのは
ちがうすがたにさせちゃった たいせつなもの
たった それだけ でもまあ いいや
ちがうすがたにさせちゃったけどさ
あたしには かわらずたいせつなものなんだから
両ちくびのあいだに ぎゅっておしあてながら
あたしは ばかだから ごめんねって
それでも かわらず たいせつだよって
とびっきりやさしいキスをした
だから これでいいんだ
ばかだけど わるくない
みっつのねがいのつかいかただっておもってる
その証拠に あの魔神も なんでだか
週末にはいつも あたしのところに
夕食をたべにやってくるんだもん
きょうこそ ピーマンをたべさせてやろう
ぎりぎり、詩ですかね?