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8.次は魔法



7歳になった。

家庭教師のレベルに合わせて、魔法を徐々に身につけていくフリをするのは結構めんどくさい。


そこで、家庭教師が必要ない程度まで、才能があって、できてしまった、というアピールをする事にした。

そうすれば、その後は、図書館で、魔法の書物を読んで自習すれば良いだろう。



「ミレーニア様。それで、何の魔法を使ってみせるおつもりですか?」


最近、地の喋り方がうっかり出る時がある。ユーステア相手でも気をつけて、話し方を注意しよう。


「そうね。分かりやすい所で、水魔法はどうかしらね。」

「水魔法の何を?」

「うーん。ブリザードランスとか?」


私は、全属性の魔法が使える。最近は育ってきたので、ブリザードランス程度の魔法なら、問題ないだろう。


「駄目です!!」

「どうして?」

「それは上級魔法で、使える人が限られています。」

「そうなの?でもレイモンド殿下も使えると思うけど……。」

「お嬢様、あの方は、魔法の天才です。」

「あ、そうなのね。」

「もう少し低いレベルの魔法をお願いします。」


この世界の常識が今ひとつ分からない。

ユーステアが言うには、悪役令嬢も魔法は使えるそうなのだが、私ほどではなかったそうだ。


それなら、魔法が得意になれば、悪役令嬢では無くなるのではと思うのだが、それも微妙らしい。

ゲームの中では、天才魔術士である王子に魔法を封じられるので、どうなるか分からないそうだ。

確かにレイモンドは天才だからなぁ。



相談に相談を重ねて、私は、家庭教師に中級のちょっと上ぐらいの魔法を使って見せることにした。


「素晴らしい!」

「先生、ありがとうございます。」

「この魔法をお嬢様は、本を読んだだけで身につけられたのですか?」

「はい。面白くて、本の通りにやったらできてしまいました。」

「ああ、侯爵様にご報告しなくては。」

「父様に、ですか?」

「そうです。お嬢様、今日の勉強はここまでにしましょう。すぐにでもご報告しなくては。」

「はい。先生。本日もありがとうございました。」

「では、失礼します。」



思った以上に順調じゃないか。これなら剣術も、先生に勝てば良いのかもしれない。


「ねぇ、ユーステア。」

「はい。お嬢様。」

「剣術も、先生に勝てば、家庭教師が不要にならないかしらね。」

「それはお止め下さい。」

「どうして?」

「あの方は、元ソードマスターです。」


私は、髭のおじいちゃん先生の顔を思い浮かべた。

そうか、ソードマスターだったのか。それじゃあ、7歳児が勝つのは失礼だよね。


「どうしてソードマスターが私の家庭教師についているの?」

「兄上様の家庭教師です。お嬢様には、そのついでと伺っています。」

「そうなのね。じゃあ、退屈しないように、もう少し本気で教えて貰うことにする。」

「程々に。良いですか?お嬢様、程々にしてくださいね。」



******



家庭教師から聞いた父様は、家庭教師を変えると言い出した。

貴族令嬢が、これ以上魔法を身につけても仕方ないのでは、と思った所に、あちらから、家庭教師をしたいとの申し出があったそうだ。


とても予想外の所から。


自ら、家庭教師を申し出て来たのは、レイモンド王子、いや、今は、レイモンド王太子だった。



「父様、それは、殿下にご迷惑では?」

「私もそう申し上げたのだが、殿下から、ぜひその才能を自分の手で伸ばしたいと言われては、お断りできない。」


将来、彼は浮気をして私を捨てるのでは、なかったのか?だが、とてもそうは思えない。


先日も7歳の誕生日にプレゼントを貰ったのだが、透明なワインボトルの中に、王都周辺にはいない魔物の牙を細工し、動物の楽隊を作って入れてあった。


瓶の細い口からどうやって中に入れたのか分からないが、美しい細工品だった。

以前、恥ずかしそうに、私には、自分の手作りの物しか贈りたくないので、あまり多くは贈れなくて申し訳ないと言っておられたので、これも手作りなんだろう。


一体どれほどの時間をかけているのか……。



「王妃教育もあと少しで一段落との事で、その時間を魔法の練習にあてたいとのお話だった。」

「……わかりました。感謝致します。」



父様が出ていくのを見送り、私はドサッとソファに腰を下ろした。


「ユーステア、本当にレイモンド様は、浮気するのかなぁ。」

「……分かりません。」

「そうだよねぇ。今のままなら、浮気しそうにはないはずよね。」

「そうですね。」

「だったら、もう、ストーリー壊れてるんじゃないの?」

「すみません。ゲームでは、学園に入ってからの事しか分からないので、今の時期については、何も……。」

「そう。」



本を書いて、お金も貯めたのに、意味が無かったかもしれない。

表情の死んでるレイモンドは、悪い人ではないし、今では、出会った頃ほど、印象は悪くない。


友達と言うほど親しくなく、相変わらず会話はないけれど、あの手作りプレゼントを見る限り、私のことを随分と、気にかけてくれているのは、わかる。


あの彼が、どんな指導をしてくれるのか、分からないが、いつもより口数も増えるだろう。

少し親しくなれるかもしれない。


そう、もしかしたら、その時が来ても、浮気しないでくれるかも、と、私は、密かに思うようになっていた。



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