500文字台本『人間パズル』(フリー台本)
『人間パズル』 作:秋月榎莫
「人が……消えた?」
そう訝し気に女性に聞いたのはミステリアスで容姿端麗な探偵、依堺 怜だった。二十代前半のように思える彼の眼はどこを見るわけでもなく伏せ気味で、首元で揃えられた整った髪がサラリと風に揺れる。森で囲まれた孤立した集落で、次々と人が消えては数日後、記憶を無くして帰ってくると言うので依堺はこの地に足を運んだのだった。
依堺「そして昨日旦那さんが記憶を無くして戻ってきた、と……。そのような人たちに何か共通点はないのですか?」
女性「そうねぇ……、あ、帰ってきた時に軽いぶつけたような痣と肘のあたりに爪痕が残ってた……くらいかしら。一応お医者さんに見せたときにね、偶然見つけたの」
すると近くにいた男性が何か思い出したらしく「あ!」と声をあげた。
男性「それなら俺の妹も、戻ってきたときあったぞ!」
依堺「共通点は戻ってきた時の軽い痣と爪痕……。――あった。過去に事例が。わかりましたよ、『マッド・レクザン』がこの近くにいます」
女性「マッド・レクザン……? その人は、一体何を?」
すると依堺はいかにもミステリアスな笑みを浮かべた。
依堺「過去に捕まらなかった愉快犯です。――『人間パズル』を楽しんでる、ね」
Fin.