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無題
ぼくが愛したのは彼の筈だった。
ぼくの身を、心を捧げたのは彼の筈だった。
愛している
そんな感情を抱いていた筈だった。
少し前まではぼくのなかにある気持ちだった。
彼を抱きしめた時に初めて知った感情、情動、吐きそうな程の胸の締め付け、表現が出来ない、とても複雑な感情。
愛している
どういう時に抱いた気持ちだったか、今は思い出せない。
暖かい春の昼下がりに、部屋で寝ている時のような気持ち。
とても心地良いものだったように感じる。
最初は、最初は好きという感情だけだった。それだけでよかった。他の感情なんて必要なかった。
では好き、とは何か。考えた時にぼくはよくわからなかった。1つの対象に執着するそれだろうか。抑えきれない情動だろうか。どちらでもなければどちらでもあるようなものだったように感じる。
彼を初めて見つけた時のあの気持ちはどちらでもなかったように今は思う。