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水の聖者  作者: 森川 悠梨
序章
4/7

隠居の魔術師

前回よりかなり時間が経過しているため、設定や話の流れ等かなりの変更がございます。

変更点について以下記述します。それらを踏まえた上ご拝読いただけますと幸いです。

・ロウの外見について

実年齢はそのままですが、肉体年齢について、以前は20代ほどとしていましたが、種族の変更はないまま「本人の意思で年を取るという選択をした」ため、肉体年齢を実年齢と同じ47歳としました。


・シノンの能力等について

彼は記憶喪失以前の記憶の一切を保持しておらず、追加で新たに彼の夢に関する設定を追加しました。

新たな設定に関しては、今後の物語で語る予定です。

過去や知識に関する記憶は断片的ですが、肉体には記憶があるため既視感などをよく経験しています。

扱う武器は基本的に双剣術であり、そのほかには予備として短剣などを扱います。


・第3話「闇夜」の時系列について

わかりづらい方も多いかと思います。稚拙な文章で大変申し訳ございません。

第2話「襲撃」は、海上での海賊からの襲撃に遭ったという設定であり、船の乗客の大半が一般人や富裕層も含め怪我もしくは殺害され、ロウやシノンたちの活躍により収束しました。旅客船を護衛する護衛船までも事前に占領された大規模な襲撃であったことを記述せずに投稿してしまいました。

第3話「闇夜」の冒頭は、その襲撃が収束して数日後の出来事です。

エジルは単独での野宿経験が少なく、その晩の野宿場所を探すうちに辺りは暗くなり、雨に降られてしまったところで闇狼に襲われてしまった、という設定になっています。


今後、以前の話について変更する具体的な予定はありませんが、余裕ができたら修正します。

長くなりましたが、ゆるゆる投稿してみようかな~と思ったので、これからもゆるゆるよろしくお願いします。

 木々が深く生い茂る森を歩く四人の人間がいた。

 大人が二人、そしてまだ子供ともいえる二人の少年と少女であった。


「あ、シノン、ここ足元気を付けてね」


 後ろから二番目を歩くルミナが、地面から大きく飛び出している木の根に気が付き、自分のすぐ後ろを歩くシノンへ忠告をする。

 相も変わらず無口なシノンだったが、特に嫌な顔もしないので、すっかりシノンを気に入ったらしいルミナは積極的に話しかけている。

 お互いに同年代の友人と呼べる存在はあまりおらず、今回共に旅をすることになり、新鮮な気持ちなのだろう。

 ちなみに、先日闇狼(ダークウルフ)に襲われたエジルとルミナの傷は、シノンの回復(ヒール)によって完治している。

 現在四人が森の奥へ向かって歩いているのは、エジルが言っていた「お礼」を受け取るためだった。

 とはいえ、このような森の奥深くに何か特別なものがあるとは到底思えない。しかし、ロウはエジルのことを信頼しており、彼が言うのならきっと何かがあるのだろうと、持て余した時間を割いてこうしてついてきているのだ。


「ルミナがあんなに楽しそうなのは、久しぶりに見たよ」

「…そうか。実を言うと、シノンのあんな姿を見るのも、俺は初めてでな」

「そうなのか……詳しくは聞かないから、無理に話さなくてもいい。シノンの様子から察するに、余程人が怖いのではないかということはわかっているさ。でも、ああして打ち解けてくれていることにも、感謝しているよ」


 シノンもルミナも、定住していないという事情があり、これまで同年代の子供と関わることはあまりなかった。

 しかしシノンは十二歳、ルミナは十三歳である。

 自分と同じ環境におり、互いに共通点を持つというだけで、子供にとって相手に興味を持つには十分すぎる条件だった。


「それで、私もまだ戦うのあまり上手じゃなくて。どうやったら、シノンみたいにあんなに強くなれるのかなって気になってて。やっぱり、毎日こわい魔物と戦っているの?」

「……別に。ロウと組み手してるだけ」

「ロウさんと? 組み手って、模擬戦のことだよね? …私にはまだそんなすごそうなことできないや」


 ルミナは、腰に装備している自身の短剣に手を当てながら、少し落ち込んだように呟く。

 そんなルミナに対し、シノンは少し考えてから、ルミナに対し一つ提案を持ちかける。


「俺が見ようか?」

「えっ?」


 まさかそんな提案がシノンの口から飛び出してくるとは微塵も思っておらず、思わず困惑するルミナ。

 そんなルミナに対し、特に気にした様子もなく続けるシノン。


「ルミナが大人と組み手するってなったら、絶対体格合わないし、俺ならルミナと同じくらいの身長だし、ちょうどいいと思う」

「…えっと、そうじゃなくて、シノンが、戦い方を教えてくれるってこと? いいの?」

「…? うん。いいよ」


 混乱していた頭を整理し改めてシノンに確認を取ったルミナの顔は、徐々に明るい笑顔へと変わり、嬉々として前を歩いているエジルへ報告する。


「エジル! シノンが私に、戦い方を教えてくれるって言ってくれたの! いいかな?」

「ほう? いいんじゃないか。シノン、わざわざいいのか?」

「別に…暇だし…」

「やったぁ! じゃあ、マガネスおばあちゃんのお家に着いたら、ぜひ教えてほしいな!」


 ルミナの嬉しそうな声が、深い森の中に響いた。

 シノンの手を握ってから、跳ねるように再度進み始めた。


「マガネスおばあちゃん?」


 思わずルミナの口から漏れ出たその名前に反応したのは、ルミナに対するシノンの珍しい対応を意外に思いながらも、嬉しそうに微笑みを浮かべていたロウだった。


「あ、うん。こっちには何回か来たことがあるの。エジルのお師匠さまなんだって」

「有名な名前だから、お前も知っているだろう。「魔女マガネス」、その人だ。ほら、見えてきた」


 エジルがそう告げると、正面に見えてきたのは木々が開けた場所。

 そこは、これまで進んできた生い茂った木々がまるで嘘かのように、何もない場所だった。

 ただ一つ、中央にそびえる大きな木を除いては。


「…ツリーハウス?」


 珍しそうにつぶやくのは、木を見上げているロウ。

 同時に彼は、不思議にも思っていた。これまで深い森を歩いてきて、こんなにも大きな木に何故今まで気づかなかったのかと。

 というのも、目の前にあるツリーハウスは、周囲に存在している木よりも二倍は背の高い巨木であったため、遠くからでもその存在を認識できてもおかしくはなかったはずなのに、シノンも含め全くそれに気づいていなかった。

 しかしそれもそのはずで、シノンはロウも気づいていなかったある事実に気がつく。


「…人除けの結界か…」

「よくわかったな。術隠しもしてあるのに」


 思わずつぶやいたシノンの言葉に、感心したようにエジルが反応した。

 術隠しとは、魔術の痕跡を隠すための術であり、魔術を扱うものでさえ簡単にはこの場所に辿り着けない、あるいは結界や術隠しの存在を知らない者が結界を認識することさえできないものである。

 そして仮に、結界の存在を認識したとしても、それがどのような効果を持つ結界であるかを把握できない仕組みになっていて、術者以外の者が結界の解除を行うことができないという特性も併せ持つ。

 術者よりも高度な技術を持つ者か、あるいは魔力に過敏な性質と結界に対する知識を持つ者であれば、それを見破ることができるとされている。

 シノンの場合は、おそらく後者に当てはまるのだろう。


「これは、魔女の術なのか?」

「ああ。歳はとったが、まだまだ現役さ」

「…噂には聞いていたが、ここまでの腕とは。シノンに言われるまで、結界の存在すら認識できなかった……」


 ロウは驚きのあまり、あまり言葉が出てこないようだ。

 そんなロウの様子を満足げに見ていたエジルは、ロウとシノンをツリーハウスへ招く。


「さあ、立ち話もなんだ。お師匠様が待ちくたびれてしまう、早く行こう。気をつけて登ってくれ」


 エジルがツリーハウスに取り付けられた階段を指差し、ルミナ、シノン、ロウ、エジルの順で上へと登る。

 木製のツリーハウスは、長く使われた痕跡があるにもかかわらず古びた様子はなく、手入れがされているのか木材にはシミひとつなかった。

 魔女と呼ばれる魔術師が暮らしているだけあって、家の保存方法には何か秘密があるのだろう。

 階段を登った先のベランダは十分な広さがあり、転落を防止するための柵も設けられていて、随分と安全対策のされた家だった。

 エジルは登ってくるやいなや、玄関の扉をノックもなしに開け中へと入って行く。ルミナもそれに続いて、シノンに手招きをしながら家の中へ進んで行った。


「お師匠様、ただいま」

「マガネスおばあちゃん、お邪魔します!」

「やっと来たね。お茶も菓子も用意してあるから、座りな」


 ロウとシノンも招かれるままにツリーハウスの中へと入って行くと、賑やかなルミナの声に反応する老婆の声が聞こえてきた。

 ツリーハウスの中は外見よりも広く見え、外の様子と同じく、長く使われているように見えるのに、全く古さを感じさせない内装だった。

 家具は最小限で、キッチンとテーブル、そしてソファと小さなタンスがあるのみ。

 奥にはまだ部屋があるようで、開かれた扉の先に廊下と階段が少し見える。

 計画的に建設された家で、陽の光がよく入ってくるため屋内はとても明るく、気温の調整もよくできており過ごしやすい環境となっている。

 キッチンの傍に設置されたテーブルには、5人分のお茶菓子が用意されていた。

 これらはエジルとルミナが家に入る前から、準備されていたものだ。


「お師匠様、紹介させてくれ」

「槍の王ロウに、その息子のシノン、だろ? ロウは、エジルの幼馴染みか。シノンには、ルミナが世話になったみたいだね。私からも礼を言うよ」

「そうそう、さすがお師匠様」


 ロウが驚いて唖然とする中、シノンはルミナに手を引かれ隣合って席に座る。

 まだ、エジルが話す前、自分たちが自己紹介をする前に、自分たちの名前を当てられてしまった。

 エジルの様子を見るに、間違いなくマガネスには訪問に関してなんの連絡もなかったはずなのだ。

 それなのに事前に用意されていた人数分のお茶菓子と言い、エジルが紹介をする前に自分たちの素性を見透かす洞察力と言い、ロウは素直に驚きを隠せなかったのである。

 そういえば、噂だけが独り歩きしていると思っていたことがある。


「……予知能力というのは、本物だったのか」


 そう、魔女マガネスの名が世界中に広まった理由の一つは、高い的中率を誇る予知能力である。

 彼女は200年以上生きた老婆で、過去に起こった災害や戦争の予言を数多く残しているとされた。

 あまりに的中するため、国家の秘密までも世界に広がってしまうことを恐れた各国が、彼女一人を国が保護するという名目の下、大金をちらつかせて懐柔しようとするなどという事件も起こったという。

 予言者の一面を持つ彼女は、日常の小さなことから世界中で起こる災禍まで予言出来たため、彼女を捕らえ懐柔しようとしたある国の騎士達から、全くの痕跡も見せず逃げ切ったという話まである。

 魔女は自由奔放であり、コペル王国に定住しながら数々の予言を残した後、忽然と姿を消したと言われていた。

 世間では、死んだとされる説が濃厚だったのだが、数々の伝説を残した老婆が実はまだ生きており、こんな森の奥深くで隠居生活を送っていたとは意外だと、ロウは思っていた。


「信じられないかもしれないが、こちらは俺の師匠で魔術師の、マガネス師匠だ。あと、もう一人、兄弟子もいるはずなんだが。お師匠様、兄さんはどこにいます?」

「山菜でも取りに行ってるんじゃないかね。寄り道して、薬草でも探してそうだが」

「じゃ、帰ってきたら紹介させてくれ。とりあえず座ってくれ、ロウ。実家だと思って、寛いで欲しい」

「あ、ああ……マガネスさん、初めまして。もう既に、ご存知のようですが、冒険者のロウです。こっちは、息子のシノンです。よろしくお願いします」

「気になさんな、早く頭上げて座んな。大事な弟子と孫娘の命の恩人だ、私に出来ることなら、なんでも叶えてやろうじゃないか」


 慣れない敬語で改まって自己紹介するロウに、マガネスは手を振りながら言った。


「いえ……エジルは自分の幼馴染みです。こいつに死なれたら、昔馴染みは一人もいなくなってしまいますし」

「ははは、傭兵のような生活をしてる奴にこんなに謙虚な男が他におるかね。まあいい、そうだね……あんたはシノンの記憶を探しているんだね?」

「えっ……」


 驚いて、思わず声を上げるロウ。

 シノンは、ルミナと話していたにもかかわらず、マガネスの一言により緊張を走らせる。

 先程まで賑やかだった居間に、ほんの一瞬だけ、静寂が訪れたようだった。

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