さぁ、はじめよう。
第4話
気がついたら異世界だった。
ある訳ないはずのことが、本当に起きている。
もし、神様がいるのなら、死ねばいいのに。
前の世界で、俺はたいした人間じゃなかったけど、それなりに友達もいたし、片思いだけど、好きな子もいたのに。
告白もできなかった。
パパとママのことだって、鬱陶しいとか思ってたけど、好きっていうか、大好きなのに。
会えなくなると、凄く逢いたい。
両親の優しかったところばかりが頭に浮かんで泣きそうになる。
最近、そんなことばかり、考えてる。
でもそれと同時に、こちらの世界にも。少し慣れて、言葉が理解出来るようになった。
こちらの両親もとても優しい。
確かに、転生したら、みんな思うんだろうな。
親のありがたみ、人の優しさ。
この人生が突然終わった時のことを考えて、頑張ろうって。
俺もちょっと頑張ろうって、4歳なのに思ってる。
4歳の俺に出来ることって、と考えてみる。アニメで見た、転生した主人公は、世界に魔法があることに気がついて、その訓練を小さい時からはじめてた。
だから、俺も、家の中を探検してみた。
魔法はどうも、存在する可能性が高い。
そして今、目の前にこの家に二冊しか無い本の内の一冊が置いてある。
4歳で、この分厚い本を手にするのは本当に骨が折れた。実際には折れてないが。
本棚から本を降ろせない。高さ的にも、重さ的にも。考えた結果、本を指差して毎日泣いてみた。
3日めで父と母が話し合って、俺の前に置いてくれた。今、すぐ後ろに父が座っている。
多分かなり高価なものなのだろう。だから良い。兎に角、文字を覚える。それから魔法も。目標は5歳までにだ。
父さんの大きな手が本をめくり、俺の目に文字が入ってくる。見たこともない文字。父さんが、優しい声でどこを読んでいるのか、指で指しながら話しかけてくれる。どうやらこの本は、世界の歴史について書いてあるらしい。
子守唄がわりに、寝る前に話してくれたこの世界の古の英雄の物語、犬とウサギの騙しあいの話。前の世界で言う童話とか、そういったものも含まれている。それでだろう。凄く解りやすかった。言葉と文字をしっかり聞き比べながら、覚えていく。
父さんと寝る前に、一緒に読むのが日課になった。
分からないところを聞くと、優しく教えてくれる。
親にしてみれば、子供が文字に興味を持つのは嬉しいことだろう。将来、文字が使えれば、職業選択の幅が広がるのだから。
父のいない昼間は、家の外で、地面に落ちている木の棒で本の内容を思い出して書きなぐっていく。親の目から見れば4歳にして世界史を理解し、文字を覚えている。ある意味、天才に見えたかもしれない。
その光景を始めてみた母が俺を抱きしめて喜んでいたから多分そうだと思う。
2ヶ月ほどで、 最初の本が読み終わる。内容についてはいずれ報告することになるだろう。
そして、子供らしい声で父にお願いする。
「明日からは、もう一冊のご本も読んでいいですか?」と。
少し考えた父は、満足げに、
「いいよ。」
と答えてくれた。
次の日、俺の予想した通りだった。
もう一冊は魔術に関する本だった。
どうやら、転生者が、無双する為の当然のルートなのかもしれない。幼少期に魔法を習得するということが。
さぁ、はじめよう。
折角、転生したんだから、俺だって可愛い女の子とイチャイチャして俺ツエーやってやる。
欲望丸出しだな。ふふふ。