内埋丙理ーA
花火が上がるのを、河原から見ていた。
人の生首が飛び散るのを、見ていた。
「え…?あれ、何…?」
周りの人間が囁く。そりゃあそうだろう。いきなり、花火の中に生首が飛び出してきたら、普通は誰だって驚く。
…前以て知っていなければ。
ソレは、元々私のクラスメートだったモノだった。
名前は…えーと、何だったっけ?
「ねえ…君は、誰だったのかな?」
訊いてみても、当然だが返事はない。
「それにしても…コレ、どうしよっか?要らないし、邪魔だし、臭いし、面倒なんだけどな。」
足元の残骸を見下ろし、溜息を吐きつつそう呟いた。
「邪魔ッ!邪魔ッじゃまジャマ邪魔ッ?」
要らないのに。
私が欲しかったのは――
巴巳ちゃんだけだったのに。
搾り出すように吐き出し、何度も何度も邪魔と叫びながらモノの残骸を踏みつける。
やがてソレは、もはや原型が分からないほど崩れ、グチャグチャになったただの肉塊に成り下がっていた。
顔を上げると、頬から汗と血が滴り落ちた。
ぬるり、とした感触が気持ち悪くて、手の甲でそれを拭った。
気持ち悪いキモチ悪いキモチワルイ!
がりがりと手の甲を掻く。いつの間にか皮がむけ、肉があらわになっていた。指は血で真っ赤に染まり、爪の間には手の甲の肉が詰まっていた。