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Witch and Vampire  作者: 和上奏
一章
10/15

少女の正体


「ごめんなさい、ごめんなさい...お、おっおね、お願いだから打たないでください...」


ナイトが居なくなった後、僕はドア付近でソラの様子を見ていた。

ブツブツと謝罪の言葉を並べると同時に、『打たないで』と何度も何度も懇願していた。

背中を丸めて、頭を両手で押さえていた。

僕のことは見ていない。


「えっと...。大丈夫だから。」


僕は攻撃される心配はないと判断して、話しかけた。


「へぁっ…。ご、ごめんなさい…。

あ、あなたの主が…」


体を大きく震わせて、また謝罪をした。

一体どんな生活をしてきたのだろうか。


「大丈夫。ナイトはヴァンパイアだから。あんなので死にやしないよ。」


そう言って小さく笑った後、ソラはこちらを見た。

僕はソラに向かってゆっくりと歩き出した。


「君は魔女だね。

しかも魔力の量が相当多い。」


僕の見解を述べると、ソラは顔を強ばらせた。

当たりだ。


「な、なぜそう思ったので、ですか…?」


ソラはゆっくりと体勢をうつ伏せの状態から座った状態へと変えた。

しかし、目は僕とは合わず、目線だけキョロキョロと周りを見渡している。

誤魔化そうとしているようにも見えるし、部屋からの脱出口を探しているようにも見える。

ドアは鍵も閉めたし、窓から逃げられるとは考えにくいのだが。

きっと僕が信頼出来る相手か考えているのだろう。


「うーん。勘かな?

あと、今年は呪いの年だってことかな。」


呪いの年。

100年に一度訪れる、新年が始まるまでの数秒間口づけを行わないと、魔法が消滅する年。

そして、近年ヴァンパイアに多く知られているのは、この年に魔女と接吻をしたヴァンパイアは多くの魔力を得ることができるということ。

この契約には年齢と種族しか定められていないので、そういった間柄になれば誰でも魔力を得ることが出来るのだ。

追われていたのもこれで説明がつくだろう。

お互いが愛し合わなければという制約が付いているにもかかわらず。

まぁ、接吻で魔力を得られなかったとしても、血を吸ってしまえばいい、とでも考えていたのだろう。


「つまりわ、私、が追われていたことから彼らは魔女を捕まえるためにやっていたのだと判断したというのか…?」


「他にも理由はあるよ。」


彼らとはナイトが吹っ飛ばしたヴァンパイア達のことだろう。

僕はちらりと先ほどまでナイトがいた壁を見た。


「さっきナイトのことを飛ばしたよね。

あの力は魔力で作ったものでしょ。」


ソラは手に何も武器を持っていない。

運び込んだ時に何も持っていなかったことも、周りに何も置いていなかったことも確認済みだ。


「すごいな。そんなこともわかるのか。」


突然ソラの口調が変わった。

少し上からと言うべきか。

しかし、ソラの怯えた様子は変わっていない。

恐らくこれが素の口調なのだろう。


「まあね。

しかも魔法は呪文を唱えないと使えないと聞いたことがある。」


「...。」


ソラは黙って僕を見ていた。

魔力が強いと無詠唱で魔力を放出、または魔法を使うことが出来る。

ナイトも魔力が強いので、無詠唱での魔法の使用が可能だ。


「で、でも魔女だとは断定できないと思う。

ヴァンパイアだってことも「女のヴァンパイアはいないよ。」


僕は途中で話を遮った。

何故だか不明だが、ヴァンパイアの女は存在しないのだ。

ヴァンパイアの血筋から生まれた女は、7割が人間で3割が魔女になる。

しかし、一部のヴァンパイアを除いて、自分の娘が魔女だと知った途端、魔女の血を求めて殺してしまう奴もいる。

自分の娘であってもだ。

そういう奴せいで、実際に生きているヴァンパイア生まれの魔女は1割しかいないと聞く。


「えっと、に、人間かもしれない...」


僕に言われて気づいたのか、人間という方向で来た。

しかし、こちらも違うだろう。


「人間でそんなきれいな金髪見たことない。

しかも赤い目。」


この付近に住む人間の髪は大抵茶色だ。

目は青か茶色が多い。

稀に金髪の者もいるが、ソラの髪の輝きはは群を抜いている。

また、赤い目は文献で見るくらい魔力が強いと有名で珍しいものだった。

ある本には赤い目だけにも大量の魔力があるとまで書かれていた。

また、普通はないモノがソラにはあった。


「でさ、その太ももにある魔法は人間にはとても危険だってこと知ってた?」


「…。」


星形の小さな呪印。

呪印は自分にはかけることが出来ない。

呪印と言っても、相手に害を加える為の他に、加護のためにかける者もいる。

ソラの呪印は恐らく後者だ。

一見黒子のようにも見えるが、わかる人にはわかる。

場所的にはほぼ腰なのだが、今着ている服のサイズでは丸見えだ。


何故人間に呪印をしてはいけないのか。

それは、人間が魔力に耐えることが出来ないからだ。

呪印は常に施されている人の魔力を奪い続ける。

人間にも多少は魔力が存在すると言われているがとても少なく、ヴァンパイアや魔女は別の器官に魔力が貯まっているらしいが、人間は血に混ざっていると聞く。

魔力が消費されると体内にある血が無くなっていき、貧血状態になる。

先に述べたように呪印は自分にかけることは出来ない。

なので、貧血になり呪印を消そうと思っても、かけた人がいなければ消すことが出来ず、結局輸血の速さが魔力の消費に追いつかず亡くなった、という話を聞いたことがあった。

魔法を教わる時、大抵『人間に対して使用してはいけない』としか言われないので、何故使ってはいけないのか知らない人は多い。


「以上。反論は?」


僕の話を聞いて観念したのか、ソラはもう何も言わなかった。

少しの沈黙の後、ソラは自分の両手を広げた。

その手はボロボロで、血が滲んでいた。

じっとその手を見つめた後、僕の顔を見て口を開いたが、また閉じた。

言おうか迷っているようだった。

僕は何も言わず、ソラの様子をただ見ていた。

少し経った後、ソラはボソリと呟いた。


「1つだけいいか?」


「どーぞ。」


ソラは唾を飲み込んだ後、大きく深呼吸をした。


「お前らは我を助けてくれるのか?

それともくれない敵か?」


1話あたりの文量が他の小説に比べて少ない気がするので、少しずつ増やしていきたいと思います!

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