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せめて私らしく  作者: 徳田武威
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第二章不良コーチのまともじゃない指導 5

「良いよ。凄く可愛い」

 パシャパシャと軍艦が写真を撮っていく。

「足をこう……組んで。そうそう少し背を逸らす感じで」

 智衣は軍艦に言われるがままにポーズを取っていた。撮影が始まってから衣装チェンジを間に挟みながら約一時間。智衣の中で色々な感覚が麻痺し始めていた。

(何か……変な気分)

 智衣はそう思っていた。今までの人生で人に見せる為に写真など撮った事が無かった。それが今は誰かに見せる為にポーズを取っている。

『カシャ……カシャ……』

 軍艦の横では笹倉が一心不乱に携帯のカメラで智衣を取っていた。それに智衣は少し寒気の様な物を感じる。

「はい。オッケー。撮影はこれ位にしよう。お疲れ様」

 軍艦が汗を拭いながらそう言った。智衣はそれを聞いてはぁ……と力を抜く。

「つ、疲れた~」

「ははは、そうだろ。撮影されるっていうのは慣れて無いと意外と神経を使う物なんだ」

 軍艦はタオルを智衣に差し出した。智衣はそれで額に浮いた汗を拭う。

「ちいちゃんお疲れ様。凄い可愛かったよ」

 キラキラと目を輝かせながら笹倉がそう言うと智衣は困った様に微笑んだ。

「お、終わったのか」

 すると何処に行っていたのか、撮影には一切顔を出していなかった尾上が現れる。そんな尾上にチャイナドレスを着た智衣が突き刺す様な視線を送った。

「ん。何だよ。怖い顔だな」

「ふん。別に」

 ぷいっと智衣はそっぽを向いた。

「尾上。取材も終わった。素材がかなり良いからな。イメージ系の会社もプッシュしてくれるみたいだ。アンダーグランド寄りのコアのファンが騒げばあっという間にメジャーな所も喰いついて来るだろう」

「おう。そうか。じゃあ後は頼むぞ」

「分かった。じゃあ取りあえずこれが今日の報酬だ」

 軍艦はそう言うと紙袋を尾上に渡した。尾上はそれを直ぐに懐に入れる。

「よ~しお前ら着替えて帰るぞ。今日は遅いからな、夕飯を奢ってやるよ」

 何事も無かったかの様に尾上は笑顔でそう言った。というかいつもよりも明らかに上機嫌だった。そんな尾上を智衣はじぃ~と疑いの眼差しで見る。

「ちょっと、今受け取ったの何?」

「何か受け取ったか俺?」

「誤魔化さないで! 受け取ったでしょ! 報酬だって!」

「っち、別に良いだろう。お前は試合に勝てる。俺は懐が暖まるで、ウインウインじゃねえか」

「あ、あんたね~最初からそれが目的だったんじゃないの! 偉そうな事言って最低っ!」

 智衣はビッと尾上を指差した。しかし尾上はへらへらと笑って反省の色が無い。

「私帰る! 行こう! さくちゃん!」

 智衣は踵を返すと足を踏み鳴らしながらドンドン歩き出した。その後を笹倉が追いかける。

「ち、ちいちゃん待って! チャイナ服のままだよ!」

「ふ、可愛い女の子達だな。お前がもう一度柔道に戻ろうって気持ちが分かる気がするよ」

「そうか? 喧しいだけだと思うが」

 尾上はつまらなそうにそう言った。



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