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ハイジじゃない

「酪農と農業の両立。それを考えれば一番日本人が思いつきやすいのはアルプスの少女ハイジかもしれない」

「山岳地帯で山羊を飼って下のほうで農業ってやつですか」

「そんな平和な共存は歴史上では極めて稀だ」

「稀なんですか?」

「酪農と農業の間にはマリアナ海溝より深い溝があり、その溝にはたっぷりと鮮血で満たされている。それが歴史だ」

「匈奴と呼ばれる遊牧民と中国の主要政権は常に血で血を洗う戦いを続けてきた」

「それは知っています」

「一番有名なのは万里の長城だな、あれは遊牧民を締め出すために作られた」

「有名ですね」

「なぜ、遊牧民と農耕民は分かり合えないのか、それは彼らの掲げる正義の形が違うからだ」

「正義ですか?」

「根本的な正義が違う。これはどちらが悪でどちらが正義という平和なものではない、だから悔い改めることもできない」

「例えば、野にある野苺を摘むことは罪ではないだろう」

「やったことはないですが」

「遊牧民はそうしたことと、畑の大根を根こそぎ持ち去ることとの差が理解できないのだ」

「人んちの畑の大根を持ち去ったら泥棒ですね」

「それは農耕民の発想だ」

「遊牧民は違うと?」

「彼らは野苺をつまむのと、畑の農作物を持ち去ることの差が理解できなかった」

「十戒には汝盗むなかれとありますが」

「それは、おそらく家畜を指すと思われる」

「そうですか?」

「まあいい、旧約聖書にはそこかしこに農作業をけなす発言が出てくることは確かだ。もっともメソポタミアの神話では、人間は神に変わって苦役をする存在とされている。農作業もその一つだ」

「そういうもんですか?」

「とにかく、農民たちのとって遊牧民がとてつもなく迷惑な存在であったことは確かだ」

「迷惑ですか」

「まあ有名なところでは遊牧民は時々農民を襲撃し略奪の限りを尽くすところもあるが、地味なところで、農作物の山羊や羊による食害もそれなりに深刻だったと思われる」

「麦畑なんかですか?」

「麦は重要だよ、麦の栽培は食料を得るのみならず、神への信仰儀礼でもある。その麦畑を羊による食害があったとすれば、ユダヤ人は神に呪われた民族ということになる」

「で、どの国がユダヤ人を紙に呪われた民族呼ばわりしたっていうんですか」

「それは決まっている、バビロニアだ」

「根拠は?」

「いっぱいあるだろう、悪徳都バビロンとか、バビロンの大淫婦とか、後バベルの塔だが、やはりバビロニアのジックラトだという説がいま有力だ」

「すごい悪口雑言ですね」

「つまりそれだけバビロニアはユダヤ人に恨まれているということだ」

「でもそれはバビロン虜囚の影響では?」

「そうかな?」

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