1欲望の始まり
ちょろちょろと投稿始めます
「勇者様、私達をお救いください」
勇ましい鎧たちの集団の、中央に陣取り豪華な服を身に纏った少女が唐突に口を開く。
周りを石造りの壁に包まれた部屋に包まれたこの部屋には、あまりにも、ミスマッチな雰囲気を漂わせている。
突然の出来事であったが、祐二は既にこの状況を理解し始めていた。
祐二は何も、武術一辺倒であった訳ではない。
日本のサブカルチャーである、漫画、ゲーム、アニメ、ライトノベル等の話題作等は、チェックする程度には嗜んでいた。
最近では、手軽に読むことができるネット小説などにも手を出していたのだ。
だからこそ、この状況を理解し始めていたのだ。
「王に会うのだろう?案内してくれ」
祐二の、冷静で何をすべきか分かり切ったような行動に、周りを取り囲んでいる集団は歓喜の表情を浮かべた。
この勇者召喚の法は、彼らが信仰する神よりもたらされた物である。
だからこそ失敗は許されない状況であったのだ。
そこへ、状況をすべて理解していると思われる勇者が召喚されてきたのである。
彼らこれを神の意思と言わずして何というのだろうかと歓喜した。
これで我らの国がこの世の天下を握ったも同然であると・・・
~side祐二~
異世界召喚か・・・前に読んだネット小説に出てきたな。
確か大抵は魔王が復活して世界を救えとか、戦争の道具に使われそうだから召喚された元から逃げ出して、自由に生きるとかだったな。
これからの生活に思いをはせていると、思考に割り込む声が一つ。
「勇者様、よろしければお名前を教えていただけませんか?」
「桐生 祐二だ。桐生が性で、祐二が名だ」
「ユージ様ですね。私は、この国の第一王女の、ライティスル=ソル=マイセルンです、よろしくお願いいたします。詳しい説明に関しては私の父の現国王からお話しいたします。」
さて、どっちのパターンの王族だろうかだろうか?
「ここに傅いてまっていてください」
そう一言伝えると、王女様は何処かへと消えていった。
5分くらいたっただろうか、豪華絢爛な服を着た恰幅のいい男性が玉座の後ろから出てきた。
はっきり言って、、、醜い
ぶくぶくと太った豚が、着飾っているようだ。
「楽にせよ」
立ち上がり顔を再確認するが、やはり醜悪な見た目をしている。
「勇者よ此度は、我々の召喚に応じてくれ感謝する。我の名前は、ランドリーセル=ソル=マイセルンである。我々の国は今、度重なる魔王軍の侵略に脅かされているのだ。勇者よ我々の事を救ってはくれまいか?」
「貴殿の外見に相違ない醜悪なる思想ではないと断言できるのであれば従おう。しかしながら私にはまだ、貴殿を見極める術がない。一度見極める時間をいただきたい」
そう言い残してその場を後にする。
さて、これでどんな反応をするのやら、、、
~sideランドリーセル=ソル=マイセルン~
「何なのだあやつは!!!」
謁見が向こうから強制的に終了させられ、王は荒ぶっていた。
確かに彼の勇者は、神に選ばれ我々の国に来たのであろう。
だからこそ、その名誉に感激し職務に励むべきではないのか!
王の最終目的は、この世界の統一である。
魔族からの侵攻と言っているが実際はこちら側が魔族を迫害した為に起きた戦争である。
その事実が知られれば、あの勇者ならば協力を拒否することもあり得る、ならばしなければならない事は一つだ。
「影」
私が一言発すると、黒装束を身に纏った者が現れる。
影は此の国の暗部、諜報活動から暗殺まで手広くこなす存在である、影に対しての直接の命令権は現国王のみが持っている。
「あいつ(勇者)に愚者の操具を使え」
影は命令だけ聞くと余計な行動は起こさずにすぐさまその場を離れた。
なんと欲深き王なのであろうか
己の欲望に正直に行動する人間の末路は、だいたいの物語で同じなのだ。
人間とは元来欲深き生き物であるにもかかわらず・・・
此は欲望に素直な人間達が生きた証。
醜くも素晴らしい人間達の欲望の物語である。