プロローグ
桐生 裕二は、日頃から自分の中に存在する欲求を持て余していた。
裕二の家は、ある武術の本家だ。
殺人術、如何に人を効率よく殺すか、それを追求した武術である。
そのような武術であったが為、昨今の日本では必要とされず、現在ではすっかりと寂れ、裕二の父は、自分の家系が武術の本家であるとも知らなかった程だった。
裕二は、幼きある日家の蔵の奥に仕舞い込まれていた、一振りの刀と書物に出会う。
その出会いが彼を変えたのだ。
不思議な引力を持つ刀と、それと1つのセットの様に思えた本。
「桐生派殺人術」
表紙にそう書かれた紙の綴りである。
裕二は、両親に隠れその刀と本を、自室に持ち帰り本の解読に勤しむ。
何分、古い書物であるからして、解読は困難を極めた。
1文ずつ解読し、読み進めるうちに裕二は魅了された。
如何に人を効率よく殺すか
それのみを追求し、それを残した書物。
魅了され、その動きをトレースする度に日増しに強くなる欲求。
「殺し合いをしたい」
命を削る場にその身を置き、自らが習得したその技で、相手を絶望に陥れたい。
そんな欲求を持ちながらも裕二は、日常に溶け込むようにして、生活していた。
ある日裕二は、いつもの様に家の裏にある山の中で刀を振っていた。
無駄な力を使わずに効率よく相手を無力化する為の動き。
修練を終え、家へと帰ろうとしたその時白い光が一閃し、視界が切り替わる。
視界が回復すると無骨な石造りの部屋にいた、対面には豪華な服に身を包んだ人物が複数。
その中央にいた、一際目立つ少女が口を開く
「勇者様、我々をお救いください」