吸血姫の恋事情
全ての方に感謝の意
一人の少女は、影の中にいた。外はまだ大地に太陽の日が照りつけるぽかぽか陽気。
少し、遊びすぎたかしらね・・・。と、彼女は心の中でつぶやきながら一人夜を待っていた。
「あの・・・、すみません」
少女に声をかける。
「顔色が悪いようですけれど、大丈夫ですか?」
少女は何も答えない。
「もし、よろしければこの日傘に入りません?・・・実は私も日に弱い体質なもので。嫌ならそれで良いのですが・・・」
少女は、素直にその申し出を受けることにした。実際その方が早く屋敷に帰れるのだし、何かあったとしても私がこんな奴に負けるわけがない。
だって私は、吸血鬼。人間とは格が違う。
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僕がこの屋敷に来て、3時間。少女は、何をするでもなく・・・本を読んだり、チェスをしている。僕はそんな少女を見ているだけなのも気まずいので、このあまり清潔とは言えない屋敷を掃除している。少女が話しかけてくれれば、僕も何か手を考えるのだがいままでなんの反応もなし・・・
僕はいままで、普通に生活を送ってきた。朝昼晩規則正しい生活をし、友達もそれなりにいる。・・・それなりに。まあ、彼女は作ったことは無いが話しかける勇気さえ沸けば作る予定だ。
そんな僕の前に、3時間と47分前。少女が現れた。反射神経も運動神経もあまり良いとは言えない僕の前に、現れた少女・・・。
「良かった・・・。やっと見つけた。」
そう囁いたあと、少女はゆっくりと僕の前に近づき吸血鬼の誓いを交わした。・・・説明するまでもないが、僕は吸血鬼にされたらしい。
そして、4時間くらいの時間が過ぎた頃。僕はようやく掃除を終えた。疲れた・・・。なにしろ自分の部屋もあまり掃除をしないので、心身ともに疲れ果てていた。
そして、僕は少し休もうとそう考え少し大きめなソファーに腰をおろし、しばらくぼーっとしていた。すると・・・
(コトンッ)
いままで何もしていなかった少女が、2人分の緑茶を用意して僕の横に並んで座った。少女はちびちびと緑茶をすする・・・。僕は今しかないと思い、すかさず少女に聞いてみた。
「あの・・・、すみません」
少女に声をかける。
「僕はいつまでここにいないといけないんでしょうか?そろそろ帰りた・・・」
少女は答える。
「・・・・ずっとよ。」
僕は答えられない。
「私は、あなたとずっといっしょにいたいから連れてきたの。」
僕は何も答えられない。
「・・・?あなたもそうじゃないのかしら?この屋敷に来てから6時間。何も答えない。抵抗もしない。あなたもそれで良いからでしょう?感謝なさい。私があなたを・・・」
僕は答えた。
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あれから数日経っても少女は僕の前に現れない。正直、復讐とかされるんじゃないだろうかとも考えたが・・・
とにかく僕はあの答えを出したことを後悔していない。人間として生きること、将来の夢を持って生きることを捨てることなんて出来ない。
だってこれが僕の道、吸血鬼とは格が違う。
「あの、すみません」
僕は、振り返る。
「顔色が優れないようですけれど、大丈夫ですか?」
僕は答えない。
「もしよろしければ、私のおウチで少し休まれていきませんか?たいしたおもてなしも出来ないかもしれませんけれど・・・」
僕は、素直にその申し出を受けることにした。実際最近あまり良いことも無かったし、少女のことも好きだったからだ。
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「・・・どうもありがとう。」
少女は屋敷まで送ってくれた子連れのおばあさんに礼を言った。
「いえいえ、困ったときはお互い様ですから。」
普段あまり人間と接することが無い少女は気分が爽やかだった。人間も意外と捨てたものじゃないのかもしれない・・・・。そう思い、少女は屋敷の扉をくぐる・・・その時。
「またね!きれいなおねえさん!」
少女は、振り返る。
そこには、笑顔が素敵な小さい男の子が立っていた。
少女はその言葉を忘れなかった。
実際最近あまり良いことも無かったし、それに・・・人間のことも好きになっていたからだ。
吸血鬼ネタはたくさんあるのでどうなのかなとも思いましたが、題材が題材だけになんとか良い話を作れたと思います。読んでくださった方、ありがとうございました。