終わりから始まる話
「この世に魔法はある」
唐突に、そんな言葉が世の中のテレビから流れた。
どうしてなのかは分からないが世に存在する全てのテレビ、電源が点いていようがいまいが、出荷前の製品だろうが、壊れて動かないものであろうがお構いなしに。
ありとあらゆるテレビと呼ばれるものから同時に、同じ映像が強制的に流れ出したのだった。
映像には中央に一人の男がいた。
薄暗い空間の中、ぼやっとした高原が上にあるのかその男の周りをスポットライトのように照らしていた。
奥にまだ誰か人影がいたという説も流れたが今ではもう定かではない。
そうして始まった、このなぜかあらゆる記録に残らず、後世に残ることの無い暴露映像は、世界中のありとあらゆる人間の記憶に刻み込まれた。
こうして一人の男の「世界に向けた大暴露」は全ての人々に不意打ちの形で行われ、結果的に後世の世界をひっくり返すこととなった。
今となっては彼がどうしてこんな事をしたのかは分からない。
が、彼は間違いなく何かを成し遂げようとして、そして成し遂げたのであろう。
この話はここに至るまでの話。
彼が何者で何を願い何を成し、何を目指したのか、その記憶の物語だ。