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時計塔の魔女

窓から差し込む陽光に目を覚ます。なんだか素敵な夢を見ていた気がする。とっても暖かい夢。きっと日差しの暖かさにつられたのだろう。

私はうたた寝していた窓辺の机から体を起こす。少し寝汗をかいたのか首筋についたくせ毛が鬱陶しくて、腰まで伸ばした金髪を両手で持ち上げてみる。

まったく、この髪の色で…と忌々しく思いながら塔の外を見る。

人の街はこの100年ほどでだいぶ変わった様な気もするが、未来を描いた先人達の作品と比べるとそれほど進化していない様な気もする。

人間に期待した魔族の暇人は、退屈なあまり人間に期待しすぎたのではないかしら。

こんなことを思う私だって、きっと体のほとんどを人間の血が流れているに違いないのだが。

何の悪戯か、色素が薄い魔族の特徴と魔力を持って生れてしまった。

分別の付く歳になれば魔力は隠せたかもしれない。だが歳を重ねるごとに薄くなる髪の色を隠し続けるのは容易では無かっただろう。

どちらも想像でしかないのは、分別が付く前に披露した魔法が決定打となり、ここに送り込まれたからである。

実は陽光を写した様な髪の色は少し気に入っている。第一ここに来た頃、髪はまだかろうじて茶色かった。だから髪を疎ましく思うのはお門違いよね、とそっと撫でる。


考えにとりとめのつかない寝ぼけた頭を軽く振って窓を開ける。

「…っ!アルジス!?」

心臓が早鐘のように脈を打つ。呼吸は一瞬詰まる。

驚いたのは一瞬で、馬鹿げた自分に気づいて息を吐きながらそっと肩の力を緩める。


幼いころに分かれた彼の声が「オセル」と呼ぶのを聞いた気がした。

けれど、それは有りえない。人間の彼はもう何十年も前に亡くなっているはずだ。塔に居た魔族の先住人だって十年ほど前、遂に 亡くなったのだから。


二人へ思いを馳せゆっくりと目を閉じる。たちまち広がるリアルな花畑。

ああ…そうか。先ほどまで子供のころの夢を見ていたのだ。100年経っても、私はまだまだあちらの世界に未練が有るらしい。


気を取り直して開いた目は、それでも塔の外に、人の住む街に向いてしまう。

そしてまたしても、息を詰まらせる。

人が…人間の団体が塔に向かって来ているのだ。

数十年ぶりだが、またしても時計の塔へ子供を捧げに来たのだろうか?そうに違いない。それ以外に人間がここへ来る理由は無いのだ、最早。


純粋な人間よりも恵まれた体を持っているが、目を凝らしても詳細は良く見えない。見えないということが一層動悸を早くする。

深く息を吸ってみても今度の動悸はなかなか治まらない。きっと彼らが辿り着くまで落ち着かないだろう。

私は焦る気持ちを隠さず塔を駆け、水晶球の元へ向かう。肉眼ではまだ遠い集団も、魔力を使えば十分に近いのだ。

子供の年頃は?性別は?人数は…きっと一人だろう。塔に捧げなければいけない、私の様な魔族返りはそんなに多くないのだ。

いずれにせよ早く情報を掴みたい。何ができるわけではないが心構えを少しでもしておきたいのだ。

だって私は時計塔の魔族だから。

人間が期待するような魔女として、余裕たっぷりに、すべてを見透かさんばかりの眼差しで出迎えてあげようじゃないか。


私は勢いのまま椅子に座り、水晶球を見つめる。

それから空気中の何かを取り込むように、丁寧に大きく深呼吸をひとつ。

「お願い。見せて頂戴。」

台座から取り上げた水晶球を、両手でそっと持ち上げ心をこめてキスをする。ゆっくり目を開くと、水晶球は先ほど見た景色を映し始めるのだった。

私は、はいっぱいいっぱいですが、1000文字ちょっとって読むとあっけなさそうなレイアウトですね…。

お話の全体像は有るものの悩みつつ文字にしていて時間がかかって仕方有りません。がんばろう。

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