表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

プロローグ

注)この作品には、タイトルから想像しうる性的描写はありません。どなたでも、安心してお読み頂けます。


 どうして、こんなことに


 弟は、責任を感じている


 でも、弟のせいじゃない


 運命と考えるしかない


 でも、その運命を呪いたい


 現実を受け止められるまでは……

 晴れた空が気持ち良い普通の平日、悪いことなど起こりそうにないと誰もが思う。その女子大生も、そう思いながら大学で講義を受けていた。


 春川流美(はるかわるみ)、二十歳、細身で長い黒髪、プロポーションも良く美人で間違いない。実際に、多くの男性から告白される。しかし、男性への不信感から、全てを断っていた。高校生のとき、初めて付き合った相手に浮気される。しかも、自分の親友とであった。


 それがトラウマなのも確かだが、今は勉強に集中したい。そう思うようにしていた。何処かにきっと、そう思うのはやはり乙女である証拠だろう。


 そんな流美に、その知らせは近付いている。出来ることなら、受け取りたくない知らせ。それは、ふたつの方法で流美に迫っていた。


 先ず最初に


「え? な、なんで……」


使っていたシャープペンが、何の前触れもなく折れる。しかも、横にではなく縦に真っ二つになった。


 流美の脳裏に、ある不吉な言葉が浮かぶ。“虫の知らせ”である。大切な人、親しい人に何かあったときに起きるとされる現象。そのほとんどが、生死に関わることとされる。


 無論、良い場合もあるが、最初に心配したのは旅行中の両親のことだった。何故なら、そのシャープペンは、中学入学のときに父親が買ってくらたもので、以来、大切に使っていたからである。


 そして、二つ目の知らせが流美に届く。それは、残酷な現実からだった。


「春川流美さんは居ますか?」


 講義中、許されない行為。にも関わらずに、大学の職員は、ドアを開けるなり大声で叫んだ。ざわつく講堂内、不安を抱きつつも


「私です……」


と、手を挙げる流美。


 慌てた様子、ただ事でないのは、誰の目にも明らかだった。近付いて来た職員は、流美に残酷な知らせもたらす。


「ご両親が、交通事故に逢われました。急いで、お父様の妹さんの家に向かって下さい」


 頭の中が真っ白になった。あまりの衝撃から、現実を受け止められない。茫然自失流美に


「タクシー呼んであります! 早く!」


と、言うとあ職員活を入れられ、現実に戻る。荷物を持って、講堂を出た。ざわつく講堂の声が聞こえてくる。


「静かに! 講義を続けます!」


 教授の一声で講堂内は、何もなかったかのように静まり返った。普段と何の変わりもないかのように……。


 タクシーに乗り込んで、父親の妹である叔母家に向かう。まだ、状況は分からない。だが、流美の脳裏には最悪の結果しか浮かばなかった。頬を涙が伝い落ちる。


 流れる景色は、流美の瞳には映らない。その瞳に映っているのは、幼い日の両親の笑顔だった。


 叔母の家に着くと、既に弟の幹久(みきひさ)が担任と到着している。タクシーを降りると、真っ先に幹久を抱き締めた。


「大丈夫、幹久のせいじゃないから……」


 固く閉じられた口元、高校三年生の幼い心に大きな責任を感じている。姉故に、それを敏感に感じ取った。


 両親へ温泉旅行をプレゼントしよう。そう言い出したのは、幹久である。無論、流美も大賛成した。両親も、涙を浮かべるほど喜んだ。言い出した自分の責任、そう幹久は考えている。


「俺が、あんな提案しなければ……」


「それは違う。幹久が、悪いんじゃない!」


 必死に慰めるが、幹久の心は深く傷付いている。もう見ていられない。誰もが、そう思うに違いない。


「私はこれで、何か分かったら連絡下さい」


 幹久の担任は、そう言い残して帰って行った。前々から思っている。少し、いやだいぶ頼りない先生であった。


「流美ちゃん、幹久君、落ち着いて聞いて……今、連絡があって……」


 そこまで言うと、叔母はその場に泣き崩れてしまう。それが、全てを語っていた。幹久は、声をあげて泣いている。流美は、少しだけ我慢した。


 だが、悲しみは、怒濤のごとく襲ってくる。耐えられたのは、ほんの数秒だった。


 悲しき叫び声が、春の晴れた空に響き渡ったのである。運命を呪う。泣き声と共に……。


 両親を亡くした流美と幹久


 だが運命は、更なる別れを用意していた


 次回「更なる別れたと決意の挑戦」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ