第二十話 遅く起きた後に
も、もれる……っ!
ここがどこだとか、そんな事は気にする余裕もなくトイレに駆け込んだ。
ふぅ
すっきりした。
膀胱がパンパンだったよ。
中学生の頃に行った海水浴の夢を見て、急いで起きたがギリギリだった。
なずなのお尻を凝視している自分がいることに気が付き、中学の頃はまだお尻に執着はなかったはずだとハッとなり、夢じゃないかと疑った。
水が出てくる夢は危険だと警報が鳴り、その危機感を抱えたまま目が覚めたというわけだ。
トイレから出て、妖精の里のあてがわれた部屋だったことに改めて気付き、知らない部屋だったらヤバかったと安堵の溜め息をついた。
寸での所で股間がマーライオンにならずに済んだ。
ゆっくりとベッドに腰を下ろし半分寝ぼけた頭を、無理矢理起こそうか、このまま眠気にまかせて寝てしまおうか迷っていると、緑の自動ドアが開いた。
相変わらず気持ち悪い動きするなあ。
「あ、やっと起きた!」
「ウォン!」
「あ~、まだ眠いけどなぁ」
寝てしまうほうに意識が傾いていたがリナリーとラキが部屋に入ってきた事で意識がはっきりとしてきた。
「これだけ寝てまだ眠いの?」
「どれくらい寝てたんだ? っていうかあれからどうなった?」
「ほぼ一日寝てたわね。あそこでイズミが倒れてから――」
どの程度時間が経っていたのか聞いて、そんなに寝ていたのかと少し意外感を覚えた。
ルテティアに来た当初はキャスロのおかげだったが、最近では循環強化の成果か、イグニスの行う激しい訓練を受けても睡眠時間が延びるような事もなく、次の日にまで疲れが残るなんて事さえなかった。
今回は多少の無茶をした影響かも知れない。
関係ないけどオレの貯水タンクも何気にすげえ。
オレが天然闘技場で倒れた後にリナリーが治療をしてくれたらしいが、結構酷かったようだ。
赤水晶の爆発によって全身に切り傷は当然として、それ以外もボロボロだったらしい。
打撲などは当たり前で、全身の筋肉が炎症を起こし、所々断裂もしていたっぽい。
リナリーの説明を聞いて、おそらくそういう事だろうと推測したに過ぎないが、間違ってはいないだろう。
最後の強化の時に、その可能性はありそうだと理解しつつも使ったからなぁ。
その場はなんとか動かしても問題ない程度になるまでオレを治療をして、その後、黒曜竜を無限収納に回収したようだ。それを聞いて、ある事を思い出す。
頼んでおいて今更気が付いたが、使用者権限はどうなってるのか疑問が浮上したので、そこの所を確認してみると、何故か問題なく回収できたらしい。
リナリーも最初は使用者以外だと回収出来ないと思っていたようで、どうしようかと色々と考えを巡らし、寝ているオレの手に無限収納を握らせ、回収しようとしていたようだ。
しかし、その前にものは試しだと、リナリー自身が回収作業をした所、回収出来てしまったと。
どういう事だと思ったが、リナリーにも良く分からないらしい。
目的は果たしたんだから、そこの所は深く考えなくてもいいか。……いいのか?
どうやってオレをここまで運んだかは、ラキが壁沿いに足場が出来るように魔力弾を打ち込み坂道を作って脱出路を確保し、その上でオレをなんとか背中に乗せ里まで帰って来た、という事だった。
ラキも疲れてただろうに、すまんのう。
オレがそんなニュアンスの言葉を口にすると、「わふっ!」と、そんなのはないでもないよ、とでも言っているかのように器用に笑顔でひと鳴きした。
トイレに駆け込んだあと頭がぼやっとしていたせいもあってか、すぐには気が付かなかった身体の調子も、なんとなく理解できた。痛みもなく動作に少し違和感がある程度で、かなり回復しているようだ。
「ケガのほうは、だいぶ良くなったみたいね」
「ああ、おかげさまでな。魔力に関してはまだ完全には回復してないみたいだけど」
「あれだけ無茶したんだから当然でしょ、それは」
何を言ってるんだ、お前は、と言われているとしか思えない表情なのは何故だ?
「絞りきったって言えるくらいスッカラカンになったからなあ。と、そういえば龍脈はどうなった? 黒曜竜がいなくなって元に戻ったのか?」
「一度途絶えてしまったからどうなるかと思ったけど、自然の復元力っていうのはすごいわね。あそこまで色々と捻じ曲がったのに徐々にだけど元通りになりつつあるわ。」
「そうか……なんとかなったか」
ほっと息を吐き、安心から表情が弛緩するのが自覚できた。
「なんとかなったけど、イズミがもし死んでたら意味ないんだからね!」
「意味なくはないだろ。って、わかってるよ。そう睨むなって」
黒曜竜との戦いでちょっと熱くなったのは否定しない。
無茶はしないって言ったのに結果はあれだからな。
確かに、あれでオレが死んでたら、リナリーとしては寝覚めが悪いどころの話じゃなかっただろうな。
調査と、その原因の排除が目的だったとは言え、他人の命を掛け金にしてまで自分たちの安全を確保しようだなんてのは考えもしてなかったはずだし。
リナリーやズカ爺と接した時間は短いけど、それだけは確実に言える。
魔力の量や回復速度、動きなんかで最後までいけるっていう判断を下した訳だけど、予想外の方法でパワーアップされてたら倒し切れなかったかも知れない。
何しろ常識があってないような世界だからな。
オレが倒れた場合もラキならなんとか脱出してくれたはずだとは思うが、土壇場でラキに色々背負わせるのも今思うと申し訳ない気がしてくるな。
そう考えると、ちょっと迂闊だったか? いや、かなり?
まあ、勝ったからいいか。
「ほんとに分かってる!?」
「分かってるよ。そんなにやいやい言うなって。次からはもっと余裕で倒せるように強くならなきゃな」
「わかってない!」
頭を抱えて、ウガーッとでも叫びそうな動きが、ちょっと面白い。
「いや、真剣な話、今回みたいにすぐに逃げられない状況になった場合、対処できるだけの強さは必要だぞ? それにまだ限界まで鍛えてないからな。やれる事だけはやっておいて損はないだろ?」
「確かにそうだけど……」
どこか納得のいってない表情のリナリーだが、強さが必要だというのはリナリー自身も少なからず感じているようだ。
「それより、眠気がなくなったら腹が減ったな……」
「あ、そうだ! 起きてたら昼食にって呼びに来たんだった」
「おお、起きてすぐメシにありつけるのは助かるな。そうか、丸一日寝てたなら昼前後か」
ベッドから立ち上がり腹をさすりながら大体の時間を推測。
ついでに、擦り寄ってきたラキの首もなでる。
「まだ色々とバタバタしてて豪華な昼食って感じではないけどね」
部屋を出て3人で広場に向かうと、前と同じ場所に食事の準備をしてくれていたようだ。
たまらなくいいにおいがする。
そこには食事の準備を担当している数人の妖精がせわしなく飛び回っており、ズカ爺も何やら指示を出して飛び回っている。
だがすぐにオレたちの姿に気が付いたようだ。
「おお、やっと起きたか!」
その身体のどこからというような大きな声でそう言い、飛びながら近づいてきた。
「ここまで寝坊しまくったのは人生初かも知れない」
「魔力の回復具合からそろそろ目を覚ますじゃろうと呼びに行かせたが、いいタイミングだったようじゃな」
「起きて早々にリナリーに怒られたけどね」
「それはそうじゃろう。ワシもその気持ちは分からなくはないからのう」
リナリーに視線を向けると、ほら見なさい、みたいな顔をしている。
「やっぱり無茶だったと思うって事?」
「そうじゃな。ワシとて死んで欲しくて依頼をした訳ではないからの。ただ、あの状況では戦うという決断も仕方なかったとも思っておる。同時に逃げに徹する事も出来たのでは、とも思っておるがの」
うーん、やっぱりそうなのかな?
「じゃがな、どの選択をしたとしても、どれが正解だったとは言い切れんからワシも複雑なのじゃよ」
鉱石竜だと判明した時点で里に戻り避難したとして、果たして無事に避難できたのか。
避難できたとしても樹園木は確実に犠牲になる。
逃げに徹した場合、仮に猛攻を凌いで闘技場外に脱出したとして、その後の対処は?
誘導して頃合を見て離脱というのもなくはないが、その場合いずれ人間の街に被害が及ぶだろうという事が考えられる。
そう言葉を付け足して言うズカ爺の表情は、自ら口にした複雑だという心境を如実に表していた。
「まあ、その話は今は置いておくとしようかの。無事で何よりじゃ。とは言いい切れんか? ラキ殿がボロボロになったお前さんを乗せて帰って来た時は何事かと思ったしの」
「あー、切り刻まれちゃったから服がボロボロなんだよなー。これしかないからどうしたもんか……」
「いや、そういう事を言っているのではないのだがのう」
苦笑気味にやんわりと否定された。
あれ、オレ何か見当違いの事言ったのかな。
「それよりも食事じゃ。一日何も食うておらんから腹が減ったじゃろう」
大きな葉に乗せられた料理の前に座るよう促され、その場に座り目の前の料理を見て生唾を飲みそうになる。
ラキは既に生唾どころではない様子。
「さっきから、においで猛烈に食欲が刺激されてたんだよね」
「遠慮せずに好きなだけ食べてよいぞ、いくらでも追加できるからの」
「それじゃあ、お言葉に甘えて、――いただきます!」
素早く手を合わせ、目に付くものから片っ端に手に取り口に放り込む。
おお。今回の料理はなんか一味違うぞ。
肉系野菜の串焼きは当然の事ながら、川魚の串焼きもある。
そして、これは肉! どう見ても肉! 純粋なる肉の串焼きまであった。
「爺ちゃん、この肉って」
分厚いステーキをそのまま串に刺したようなそれを手に持ち、まじまじと見つめる。
「お前さんから差し入れてもらったドルーボアの肉じゃな。熟成させ下ごしらえをして、シンプルに串焼きにしたものじゃ」
「あれがこうなるのか。それじゃ、さっそく……」
アグッ、と口に含むと想像以上の味と香りがオレを襲った。
すげえ、なんだこれ!
絶妙な柔らかさと歯応え、鼻腔の細胞を溶かしてしまうんじゃないかと思える心地よい香り。
そこそこのランクのものは食べた事があるが最高級の牛肉というのを食べた事がない。
それでも同じ牛肉ということである以上は、その範疇から逸脱した味ではないと想像はつくだろう。
しかしこのドルーボアの肉は今まで食べた肉からはまるで系統が違うような味がする。
延長線上で想像するという事さえ不可能な味だ。
「うまい……美味いとしか言葉が出てこない」
「秘伝の方法で熟成させたものじゃからのう。と言っても単に樹園木の熟成庫に寝かせておいただけじゃがな」
「何それ! そんな便利な機能もあるの? ちょっと欲しいかも」
「ほっほっほ、何とかしてやりたいのはやまやまじゃが、さすがにこればかりは持って運ぶ訳にはいかんからのう」
「あ~やっぱり? 残念。いつでも美味い肉が食えると思ったんだけど……」
まあ、倉庫なんて普通は持ち歩かないしな。
「そう言うだろうと思っての。お前さんの持っていたドルーボアの肉を熟成庫に詰め込めるだけ詰め込んである。悪いとは思ったが勝手に取り出して解体させてもらったのじゃ。もともとお前さんのものじゃからな、好きなだけ持っていくといい」
あ、そうか。リナリーが無限収納を使えるんだったか。
「何せ先に貰った肉は粗方消費してしまっての」
「え、もう? ホントに早いな……。いや、肉は好きなだけ持ってってもらっていいんだけど」
全部は貰うわけにはいかないとか、これは礼の意味もあるとか、なんやかんやあって結局、熟成庫に詰め込んだ肉の半分を貰う事になった。
しばらくは美味い肉が食い放題だ。まあ、熟成には一日、二日かかるらしいけど。
そうして昼食を食べながらの会話が続いた。
ズカ爺としてはいくらでも聞きたいことがあるようで、どこかワクワクとしているようにも感じた。
と言っても、別段急かすつもりもないようで。
「それにしても、リナリーはよくあの状況で事細かに覚えてたな」
「え、何が?」
またそんなデカイもの食って。
「いや、ズカ爺に報告したのってリナリーだろ? ラキにも出来ないことはないだろうけど、それにしてはズカ爺から出てくる質問が細かいというかピンポイントというか、そんな感じだったから、良く覚えてたなと」
「ああ、そういいうこと。私も結果は伝えたけど、そこまで詳細には報告してないわよ」
「ワケが分からん、どういう事だ?」
リナリーじゃないなら、ラキから聞き取りしたって事?
戦闘に集中してたのにそこまで気が回るかな?
さっきはああ言ったけど、ラキってその辺の事とか頓着しなさそうなんだけど。
「ほっほ、その答えはこれじゃ」
そういってズカ爺が懐から取り出したのは水色の小さな球体。
ズカ爺が辛うじて片手で持てるかどうかくらいの大きさ、オレの小指の先くらいの大きさの球体だ。
「『妖精の瞳』と言っての。ワシら妖精の見たものを記録出来るのじゃよ」
リナリーの持っているものとは別の『瞳』だがの、と付け加えながらオレの手のひらにコロンと乗せた。
つまみ上げて、光りに透かしてみたりしたが、なんとも不思議な雰囲気の石だ。
「つまり、これに記録された映像をズカ爺は見たって事か」
妖精の瞳をズカ爺に返しながら、なるほど、と心中で呟く。
「そういう事じゃな。リナリーのみの視点になるが、黒曜竜との戦闘は全て記録されておった」
この『妖精の瞳』も無限収納と同じで一度魔力を浸透させると使用者が決定される。そしてリンクした者の視界の映像を任意で記録出来るらしい。
使用する魔力はその都度消費するのではなく、あらかじめ魔力を貯めておき、それを消費して記録するようだ。まあ、要するに充電式って事だよな。その証拠に込めた魔力量で記録時間が変わるみたいだし。
最長で約一日って言うけどすごくね?
一日中使いっぱなしでもOKなんてビデオカメラ、どこ探してもないと思う。
「リナリーのも、やっぱりコレと同じ色なのか?」
「それぞれ微妙に違いがあるわよ、私のはちょっと赤っぽい白」
要するにピンクか。って、その違いを微妙とは言わない。
「そんなの持ってたなんて全然気が付かなかったけどな。何処に仕舞ってあったんだ? 今も持ってるのか?」
「……どこ見てるの? 今は別の場所で使用中だからないの」
両手を前で交差させて胸を隠すしぐさをしてるけど、ほんとにその薄い身体の何処に隠してたんだ?
引っ叩かれそうだから言わないけど。
「本人しか使えないんじゃないのか?」
「そういう『使う』とは違った使い方だけど、ある程度放置できるから」
「ほっほ、つまり、今は別の場所で中の記録を再生しているのじゃよ」
「上映会してんの!?」
「上映会か、いい表現じゃな。見たいと言う者が大勢いてのう、今朝から手の空いた者が入れ替わりで見ているのじゃ」
どうも希望者のために、ここから少し離れた場所に上映会場を設置したらしい。
明るいと見え辛いという事で森の中の暗がりを利用し、更に布を張り昼間でも視聴可能な会場を設営したという事のようだ。
オレがボロボロになって帰って来た事で、一体何があったのかと里が騒然となった。
帰って来たばかりのリナリーは張り詰めていたものが一気に緩んだせいか、疲労困憊といったような状態で、声高に触れ回る元気もなかったという。
そしてリナリーがズカ爺に事の成り行きを説明し、その内容を里にいる妖精たちに通達。
そこで初めて里の緊張が解かれたそうだ。
リナリーが同行したという事で、妖精の瞳は?という話になり、ズカ爺が確認後、記録内容の開示に至ったという事のようだった。
ちなみに妖精の瞳は誰もが持っている訳ではなく、リンクに成功した妖精だけが所持している。
里で代々受け継がれてきた物もあれば里の外で稀に見つかる事もあるとか。
見つかる経緯もバラバラで、鉱山で見つかったり、川原で砂利と一緒に転がっていたり、木の根元に埋まっていたなんて物もあったそうだ。
話が逸れたが、最初にリナリーが何故ああも頑なに里へ帰るのを拒んだか。
妖精たちが人間へ抱いている感情を何とか改善できないか、依頼解決の過程を記録してそれを役立てようと思っていたと。
当初の予定とは随分違ったが、黒曜竜との戦闘記録が少なからずその役割を果たしたのではないか、とズカ爺がヒゲをさすりながらオレにそう語った。
そろそろお腹もいっぱいになってきたかなという所で昼食の準備をしてくれていた妖精たちも自分達の食事を終わらせたようで、その中の二人、リナリーと背格好が似ている妖精たちがこちらにふよふよと近づいてきた。
「あの……、私たちも見に行ってきてもいいでしょうか?」
「おお、そうじゃな。片付けはこちらでやっておくから見てきなさい」
「「はい!」」
数人の声が重なった返事に、ああ、見たいのは目の前の二人だけじゃなかったのね、と気が付いた。
それでは、と飛んでいく妖精たち。
何人かと目が合ったが、全員が笑顔を見せてくれたのが印象的だった。
多少はオレに対する警戒がなくなったと思っていいのかな。
「どうやら、ワシとお前さんの会話を聞いて、見る気になったようじゃな。手が空かなかったせいで見ていない者もいたが、中には怖くて見られない、といった者もおったからのう」
「怖くて見られない?」
「何せ相手は厄災の獣と言われる黒曜竜。記録されたものだというのに、見た瞬間に逃げ出そうとする者がおったくらいじゃからの」
そこまでなのか……。
あの姿形が本能的な恐怖をもたらすとか、そういう事なんだろうか。
「じゃが、お前さんの話を直接聞いて、何か感じるものがあったようじゃな」
別段変わった事を言ったつもりはないけど、聞き手の心情としては見たいと思う何かがあったって事だろう。
「ところで、いつまでそのボロボロの服を着ているつもりじゃ? 替えは持っておらんのかの?」
「あー、それね……。ほんとにこれしか持ってないんだよね……」
上着をつまみボロボロになった服を見ると、そんな言葉と一緒に溜め息が自然と漏れる。
「ならば、その辺もこちらで何とかしようかの。同じ形のもので良いかの? 何か希望があれば可能な限り応えるが」
「え、いいの? それなら、これと同じヤツ以外に、もう一着欲しいんだけど……うーん、どう言えばいいかな。この世界で一般的に着るデザインの服ってどんな感じ? まあ、街に行っったりしても違和感がなければ何でもいいんだけど」
今着てるのは、夏服の制服だ。
白の半袖のシャツは素肌の上に直接着ている。
ズボンは濃紺だ。
「今着ているものも、そこまでおかしな服ではないと思うがの。戦闘をする装備ではないというだけで、街ではそれほど違和感は持たれんじゃろう。ちょっと変わった服という程度の印象は持たれるかも知れんが」
「この格好でもイケる事はイケるんだ……。まあでも同じ物ってのも味気ないから、これとは違った感じのヤツで一着お願いしたいかな」
「うむ、心得た。他には何かあるかの?」
「うーん、あとは……そうだなあ。爺ちゃんの着てるローブみたいなヤツがあるといいかな。それと靴とかなんとかなる?」
今 履いてるのはスニーカータイプのものだけど、運動に適さない系の革靴とかじゃなくて良かった。登下校で結構な距離を歩いたりしていたから自然とこのタイプに落ち着いたんだよな。
「さすがに靴は同じ物という訳にはいかんが、戦闘時の負担にならない程度の品質での提供は可能じゃな。ローブも問題ないじゃろう」
「なんか色々注文しちゃって申し訳ないけど、改めて指摘されたら、なんか欲しくなっちゃってさ」
「なんの、こんなものでは礼にもならんぞ? もっと欲しいものがあれば遠慮などいらん」
「そうよ? 私たち妖精って意外とそういうの作るの好きだから結構なんでも作れるわよ」
店主が寝静まった隙に靴でも作ってんの?
「とは言っても、思いつかないんだよね。ここでは何が有用か分からないからなあ」
そう言われればそうじゃのう、というズカ爺の言葉に、確かにそうかもと頷くリナリー。
腕を組み空を仰ぎ見ながら、何かないかとひねり出してみる。
結局、思いついたものといえば、Tシャツやトランクス、靴下なんかの身に付けるものだった。
実物を見せたほうが早いという事で下半身パンイチ靴下になってみた。
「なに無表情で脱いでるのよ!」
若干顔を赤らめたリナリーが顔を逸らしながら、いきなりの魔法発動。
危うく水弾が股間にヒットしそうになった。
「リナリーこそドコ狙ってんだ! 弾を玉に当てるとかどういうつもり、どわっ!」
「下品な事いうなーっ!」
顔に飛んできた水弾を避けたら、今度は集中的に下半身かよ!
まあ、全部避けたけど。
また攻撃されたら適わんからズボン穿いておこ。
まったく。使い物にならなくなったらどうしてくれる! 責任取れんのか!?
それに無表情に脱ぐ以外に何がある。
男が雰囲気出して脱いだら気持ち悪いだろうが。
「ほっほ、ではそちらもいくつか用意させよう」
肩で息してるリナリーは放っておくとして、何事もなかったように事務的に処理するズカ爺もなかなかだ。
それにしても、いずれはどうにかしなければと思っていただけに、これは非常に有り難い。
街に出るのはもう少し先の予定だから、どうしようかと思っていたのだ。
神樹の布でなんとかするしかないかと考えていたが、服飾の知識も技術もないので正直うまく作れる自信はなかった。
意外なところで服に関する問題が解決したようだ。
「さて、ワシはまだやる事があるでな。ここを離れるが、お前さんたちはゆっくり食事を楽しむといい」
食べ終わってもそのままにしておいて構わないようだ。
方付けは他の妖精たちがやってくれるらしい。
いや~、なんかすみませんね。
と胸中で呟くと、ヒラリと飛び上がったズカ爺からもう一言追加された。
「夜はもっと豪勢にする予定じゃから間食で腹を膨らまさぬようにな」
そう言って飛び去っていくズカ爺。
これは、宴会かな?
と予想してリナリーを見やると、言いたい事が分かったのか
「龍脈が元通りになって、無事に日常が戻ってきたから、そのお祝いね」
先行き不透明な状況に、かなりの期間、精神の消耗を強いられていたはずだ。
それが解消された事で、ひとつの区切りになったと言えるかも知れない。それにマイナスに傾いていた精神の天秤をプラスにするための儀式は必要だろう。
ましてや原因が天災より性質の悪いものだったなら、それを喜ぶのは当然かもしれない。
つまり何が言いたいかというと、オレとしても楽しい事は大歓迎だ。
~~~~
夕食までの空き時間を利用して、身体の調子を確認がてらラキと模擬戦ではなく、軽く魔法を撃ってもらいそれを木刀で打ち落とすという、訓練というより遊びに近いものをして時間を過ごす。
もちろん、型の稽古も忘れない。
さすがに夕食まで延々と稽古をしていた訳ではなく、一時間半程の仮眠を取った。
美味いものを食べて運動したら眠気に逆らえなかっただけなんだけどね。
部屋から出て広場に向かうとすっかり陽が落ちて大きな月の光りが辺りを照らしていた。
「ウォン!」
「あ、きた。起きてこなかったら、ラキちゃんに引きずってきてもらおうと思ってたけど、その必要はなかったみたいね」
「そこは普通に起こしてくれよ」
起きてこなかったら本当に実行するつもりでいたようで、樹園木の出入り口で二人で待機していたらしい。
「無理矢理起こすのも忍びないから、とりあえずは待ってみたの」
じゃあ、いきましょ、と三人で連れ立って広場の中央に準備された会場に向かう。
そこには数え切れない程の妖精たちが集まっていた。
少なくても3百人くらいは居そうな感じだ。
所々に設置されたロウソクに似た道具の明かりとは別に、大きな蛍が数百と飛んでいるような光景はある意味壮観だと思う。
今まで何処にいたのかと疑問に思うくらいの大勢の妖精たちが、明るい表情で料理の準備をしたり談笑したりしている。
その輪の中にオレが入ってくのはどうなのと、正直気が引けていたが、どういうワケかちょっとした歓声が沸きあがって違和感なく迎え入れてくれた。
適当に空いてる場所を探して腰を下ろしたタイミングで中央に視線が集まる。
「さて、皆の衆! 主役も登場した事でもあるし、始めるとしようかの!」
ズカ爺が開会の挨拶じみた宣言をすると、更に歓声が増した。
オレが主役というのがどうにもしっくりこない響きではあるけど、そこを突っ込むのは野暮かも知れない。
始まってしまえば、あっという間に喧騒に包まれた。
いつの時代、どんな種族でも宴会というのはこんなものなのかも、と思わせるには充分な勢いで盛り上がっている。
目の前に並べられた料理の数々も、また格別の味だった。
「お前さんには感謝してもし足りないくらいの事をしてもらったのう」
さっきまで会場の中心にいたのに、いつの間にか目の前にきていたズカ爺が、オレのコップに飲み物を注ぎながら言う。
「里を代表して礼を言わしてもらおう、ありがとう」
「面と向かって言われると照れるもんだね。感謝の言葉ってのは」
「ほっほ、そこは黙って受け入れれば格好がつくのにのう」
「まあ、そうなんだけどね。オレとして結果的にそうなっただけで運に助けられた部分も大きいと思ってるんだ。だからかな、なんとなく気恥ずかしいのが先にくるのは仕方ないっていうかね」
「難しく考える必要はないとは思うがの。今は単なる結果に対しての報酬と捉えておけば良いのではないかな」
「ん~、じゃ、そういう事にしておく。それよりさっきから気になってるんだけど、アレって?」
会場の奥に大きな白い布が張られているのが目に入り、ずっと気になっていたのだ。
「あれは妖精の瞳の記録情報を見やすくする為の布よ。まだ見てない人がいるから、ここで見てもらえばいいだろうって」
隣でおとなしくラキと一緒に料理を食べていたリナリーが、オレの質問にそう答えると「ちょっと行って来る」と言って白い布が張ってあるほうへ飛んでいった。
「そんなに見たいもんかねえ」
「当事者ならそう思うかも知れんが、実際の所、安全に鉱石竜の姿を見ることなど、まず出来んからのう。そういう意味でも貴重な機会なんじゃよ」
好奇心が強い種族ってのはこういう所に性質が現れるわけか。
しばらくするとリナリーが戻ってきて上映会が始まった。
「おお、すげえ。なんか立体的に見えるぞ」
思わず口走ってしまったが3D映画とはまた違った感じの映像だな。
視界情報をそのまま記録したって事らしいけど、解像度もハンパじゃない。
リナリーが注視していたと思われる部分意外も高解像度で記録されてるのは、かなり不思議だけど、どうなってんのかね?
もしかして妖精って、物の見え方が人間とは違うとか?
あり得なくはなさそうなのがちょっと怖い気もするけど。
次々と流れていく今のこの映像は、場面を飛ばしてるのかな?
『リナリーはこの事を里に戻ってズカ爺に伝えろ』
おっとメインのシーンが始まったか?
音もちゃんと入ってるのか。
視界情報って言ってたから、映像だけだと思い込んでた。
「こうやって見ると、オレって結構イケてる?」
映像を見て、リナリーに視線を向けそう聞くと、リナリーも顔をこちらに向ける。
数秒の沈黙の後、すぐに顔をフイっと逸らし
「……微妙」
「微妙って言うな!」
「普通はそういう事聞かないの!」
お世辞でもイケてるって言ってくれりゃいいのに。
お、デカイ音がしたから次は闘技場の中にいく場面か。
オレとしては次の映像は当然分かっていたけど、見ていなかった妖精たちにしてみたら衝撃的だったらしく「ひっ!」という小さな悲鳴や「大丈夫だから!」と周りに言い聞かせる声がいたる所から聞こえてきた。
よく見ると小さい子供の妖精もいるけど大丈夫なんだろうか。
「なに、心配はいらんよ。映像の中に居るお前さんがここに居るという事実が不安を解消させるのに一役買っておる。黒曜竜と遭遇したにも関わらず無事に帰還、そして倒したという事実を受け入れるには充分な証拠じゃろう。映像記録を見れば見るほど、その事を実感するはずじゃ」
ちょっとピンとこないけど、そんなものなんだろうか。
オレが居るからってそこまで影響があるとは思えないけど。
「まあ、当事者とはそういうものかもしれんのう」
そんな会話の最中に次の場面に切り替わる。
黒曜竜が壁面から突撃してくるシーンでもやっぱり盛大なリアクション祭りだ。
一人称視点であれ見せられたら、そりゃビックリするって。
あれ、そういえば編集されてる?
オレがリナリーを抱えた時とか素早く動いたりした時に場面が微妙に飛んでる。
ブレた映像とかほとんどないから、たぶんそういう事なんだろうな。
映画とか撮ったら便利そうな機能がいっぱい有りそうだよな妖精の瞳って。
今見てるのは映画どころかノンフィクションなんだけど。
「それにしてもイズミよ、お前さん相当気が短いのう」
どの場面について言ってるか、見なくても分かる感想だな。
「いや、普通はああするって」
「いやいや、普通は躊躇なく斬りかかったりはせんぞ? その後の瓦礫を投げる攻撃も容赦がないしのう」
挟撃時の映像は主にラキサイドの映像だが、なかなか面白い。
オレの攻撃に合わせて牽制するそのタイミングは実に絶妙だ。
それにしても、みんないいリアクションするなあ。
最初は怖がっていた妖精たちも、しばらくして食い入るように見るようになっていた。
「ああっ!」とか「そこだ!」とか叫びながら、かなり入り込んでるみたいだ。
オレが尻尾を収納したシーンなんかは、「えっ、そんな事出来るの?」なんて声が聞こえたりしてきた。
薙ぎ払いのブレスをラキがどう避けたのかやっと分かった。
オレのいた方向が薙ぎ払いの起点になっていた事を利用して足元に密着していたようだ。
言うのは簡単だが、高速でほぼ一周したその攻撃に対して一瞬の判断で実行した事に驚嘆する。
実際、予備動作を見ていたにも関わらずオレは避ける事が出来ずに異相結界による防御を選択している。
そんな事を考えながら鑑賞していると、今までと違った反応が会場全体に広がった。
周囲から「あの魔法は何?」とか「見た事のない魔法だな」など皆一様に疑問を持ったようだ。
「昼間に聞こうと思っていて忘れておった。イズミよ、今の魔法は?」
ズカ爺が代表しているかのように聞いてきたのは中二病的な名前の魔法の事のようだ。
「ん? レーザーブレスの事?」
「名前から察するに、あれはブレスなのか? どう見ても光りの筋にしか見えぬのじゃが……。どうすればああなるのじゃ?」
「って言っても圧縮してるだけなんだけど」
「その辺を詳しく聞かせてはもらえんか? あの魔法を見たもの達から質問が相次いでの。大量の魔力を使っているようには見えぬのに黒曜竜の身体を貫いてるのが不思議でならんようでな。実を言うとワシも詳しく知り――と、何度見てもこの場面は肝が冷えるのう」
丁度オレが拘束魔法をくらって吹き飛ばされ、黒曜竜のブレスで追撃されているシーンだった。
「消し飛んでしまったのではないかと疑ったほどじゃ」
確かに異相結界がなければ間違いなく消し飛んでたよなあ。
「ここでかなりイラっときたんだよね」
「黒曜竜を前にして、その感想もどうかと思うがの……」
「首切り落としても効果がなかったから余計にイラっときて乱射したけど、決定打にならなかったんだよね。それでも良ければいくらでも説明するけど」
「そうか、それは助かる。が、やはり認識が間違っておるのう……」
と、苦笑気味に言うズカ爺の言葉を聞いても、正直何が間違っておるのやらって感じだ。
そうこうしてるうちに記録映像は終盤間近だ。
黒曜竜が第二形態に変化した場面に突入。
その姿が映し出された瞬間から拳を握り締めて食い入るように見る者、あれが本当の黒曜竜なのか、と推測や議論を周囲と始めたりする者と、他にも様々な反応で今までとは違った空気が会場に満ちていた。
オレとしてはちょっと気になるシーンがこの後にあったりする。
きた、ここだ。
『ああっ! 一張羅が!』
耳鳴りがして良く聞こえなかった時だ。
『こんな時に何言ってるのよ! この尻好きバカーッ! そんな場合じゃないでしょ!!」
そんな事言ってたんか。
尻好きバカってなんだオイ。
隣でもくもくと食べながら映像を見ているリナリーを思わず観察してしまった。
「なに……?」
「この時、耳鳴りでよく聞こえてなかったから何言ってたか気になってたけど――」
「やっぱり聞こえてなかったんだ? でも大した事は言ってなかったでしょ?」
「でしょ? じゃねえよ。思わず自分でもそうかと納得しそうになったけど、こんな不特定多数にオレの嗜好をばらすなよ!」
「いいじゃない、事実なんだから」
「事実だからだよ!」
結構な人数の妖精たちが、尻好きバカーッ!のセリフの後に生温い表情でこっち見てたんだぞ。
こんな事、自分から盛大に公表するヤツなんていないっつーの。
そのシーンのせいで一瞬微妙な空気になった気がしないでもないが、終盤だという事で皆、より一層集中して見ている。
ラキの怒涛の攻撃で歓声が上がる。
「凄まじい攻撃じゃな。ラキ殿に勝てる生物というのは、竜種以外におるのかのう」
「わふっ」
「あ、やっぱりラキってそういう立ち位置なんだ」
ズカ爺のセリフにオレの気になっていた答えが含まれていた。
イグニスの口ぶりから、ラキの仮想敵は竜なんじゃないかと思っていたけど、やっぱり強さとしてはそんな感じだった訳だ。
そして決着間近、もうひとつあった疑問が解消された。
どうやってラキが黒曜竜の両腕を落としたのか。
レーザーブレスだった。オレが使っていたものより、やや高出力の攻撃で切断していたのだ。
いつのまに覚えたんだ? オレだってこの戦闘で初使用だったのに、それを見て覚えたのか?
それとも、そういう使用法を教えられていた?
どっちにしても、あれでかなり楽になったのは確かだ。
「ラキもレーザーブレス使えたのか。本来の名前とかイグニスはなんて言ってた?」
「わふっ?」
「イズミが使ってるのを見て、覚えたみたいよ」
「マジか……」
それを聞かされたオレとしては、ええーっ! そうなの? としか言えないくらいショックなんだけど。そのオレの顔を見てひと鳴きした声が、「うん、そうなの!」 としか聞こえなかったのにも、なんだかよく分からないショックを受けた。
実戦で使うのは初めてだったけど、結構いろいろと試行錯誤して実用範囲にまで漕ぎ着けた魔法。
それを見ただけで覚えてしまうラキとの才能の差に、ちょっとどころか、かなりヘコむ。
ま、まあ、とにかく既存の魔法じゃなかったという事だけは理解できた。
オレが若干落ち込みながら、ラキとの差ってなんだろうと考えていると、いつの間にか周囲は歓声に包まれていた。
丁度オレが刀で真紅の球体を貫いて、とどめを刺したシーンが流れた後だった。
「何度見ても興奮を覚えるのう。大昔の英雄と言われる者たちの物語を体験しているかのような、そんな気分にさせられる内容じゃったな」
小さなコップをあおり、ふう、と息を吐いて言うズカ爺は、確かにどこか気分が高揚しているように見えた。
会場にいる妖精たちも、初めてみた者、2度、3度見たも者、皆例外なく余韻にひたっているようなそんな雰囲気だ。アクション映画の傑作を見た後のスカっとした気分に近い感じだろうか。
見たものについて感想を言い合っているのも、映画を見終わった後の感じに似ているかも知れない。
上映会も終わり、そろそろここでお開きかと思ったが、ここからが本番だとばかりに更に盛り上がりそうな勢いだ。
「歴史の証人になれそうな機会に恵まれたのだ、多少はハメを外してもよかろう。ワシもまだまだ飲み足りんしのう」
その言葉の通りに無礼講になりつつあるのは、ここ何ヶ月かの精神的な圧迫からの反動もあるのだろう。オレたちの周囲にも妖精が輪になって囲むように集まり、色々な質問に答えるという形で談笑まじりに会話を重ねていった。
里に来た時に感じた壁のようなものが完全に取り払われたのではと思うほどには距離が縮まったような気がする。
ちょっと印象的だったのは、イケメン成年風の妖精が声をひそめて「私も女性のお尻が好きなんですよ」と、ウインクをしながら言ってきた時だ。「ああ、うん、そうなんだ……」と思わず遠くを見そうになったが、なんとか笑顔で対応する事ができた。
これは同好の士を得たと思っていいんだろうか? なんか違う気もするけど……。
それにしても今飲んでるこれって果実ジュースのはずだよな?
アルコールは飲めないって伝えたら、ここには人間が飲むようなアルコールの入った飲み物はないって言ってたのに、なんか気持ち良くなってきたんだけど?
「樹園木の実で作った果実水じゃ。我々妖精が特別な時に飲む、人間にとっての酒のようなものじゃな。酒と違って、より直接的に身体に作用する魔力成分が含まれておる。身体に害はないし、二日酔いもない。なので酒が飲めない人間でも安心して酔えるという訳じゃ」
それってほんとに人間が飲んで大丈夫なの?
アルコールじゃないのに酔うって、なんかヤバイもの入ってそうなんだけど。
ああ、なんだかよく分からないけど気持ち良くなってきて色々どうでも良くなってきたな。
今が楽しければいいか? いいよな。
そう思い、今この時にしか味わえないものを優先するほうが有意義だろうと、余計な事は考えない事にした。
そうして喧騒に包まれたまま、夜は更けていくのだった。
1万字前後でなんとかしようと思ったんですが増えてしまいました。
まとまりのない文章ですいません(´・ω・`)




