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第十四話 外出



「どわっ!」


 ドガッ!

 ズドンッ!

 ズズンッ!


「ちょっ! 手加減しろおおっ!」


「しておる」


「嘘言うなーっ!」


 爆音の中でかき消されそうだが、オレの叫びはしっかり届いていたようで、それに答えたイグニスの声が間近で聞こえた。

 土、水、火、風と様々な属性の魔法を繰り出しオレの前進を妨げている。

 炎の槍からはじまって、着弾時に爆発する巨大な火の玉、氷の槍の雨、足を踏み入れた瞬間に爆砕する地面、爆風に紛れて飛んでくる鎌のような風の刃、威力は多少違うかも知れないが、どれも初歩の魔法だという。

 初歩でこの威力というのを聞いて、やはりこの世界は危険だと認識せざるを得ない。


 点と面での攻撃をオレの回避や行動に合わせ、絶妙の間で仕掛けてくる。

 思ったように目的の場所まで進めない。

 攻撃を回避して進行方向に意識をを向けると、そこを狙ったように死角から魔法が飛んでくる。

 火と水系統の魔法は比較的視認しやすい。

 だが土と風が厄介だ。


 風の場合はまだいい、巻き上げられた土煙がその視認の手助けをしてくれるので今の状況だと比較的に対処は楽だ。

 しかし土属性の魔法がとにかく見えづらい。

 というか、見えない。

 足元からいきなり円錐状の槍のようなものが生えたり、落とし穴になったり、先に挙げたように地雷と同じく一定範囲に踏み込んだら反応して、その範囲ごと吹き飛ばしたりと、かなり凶悪な攻撃が視認出来ない状態で襲い掛かってくる。

 それをなんとか回避出来ているのは魔力を感知することと魔法障壁のおかげだ。


 先程から本当にオレのための訓練なのかと疑問に感じ始めたこの訓練だが、始める前に簡単な取り決めと、感知と魔法障壁の展開方法の復習をした。

 これまでに短時間だが感知と魔法障壁についても講義を受けていた。

 感知とは自分を中心とした任意の範囲で自分以外の魔力を感じ取る技術だ。

 魔法として規格が決まったものではなく、完全に個人の技量による魔法技術。

 低濃度の魔力を球状に広げ、鉱石を探知した時と同じように魔力を感じ取る。

 物質を特定して探知する時とは違い、単に魔力の違いを探知するだけなので魔力消費もそれ程ではない。

 それに比べると魔法障壁は多めに魔力を消費する。

 魔力を極薄の壁状、または球状にして自身以外の魔力と反発させる効果を持たせて魔法による攻撃を防ぐ。使用する魔力量次第で壁の厚さを調整可能で、受ける攻撃の規模、強度に対応して変更が可能だ。やろうと思えば物理攻撃も防ぐ障壁を作ることも出来るが、その場合持続時間との相談になる。

 基本の魔法とはいえ、いろいろと応用が利く奥の深い魔法だ。


 しかし、この二つの魔法を戦闘中に常時展開というのは結構難しい。

 同時に駆使するのはなかなに集中力を要求され、少しでも気を抜くと魔力と一緒に霧散してしまう。

 戦闘時における基本の型のようなものらしくオレも慣れておくべきだと言われ、確かにその通りだという事で、条件付きの訓練に同意したのだ。


 無限収納エンドレッサーと鞘の完成後に遅めの昼食を済ませ、午後から開始された訓練だが、宣言通り魔法の防御に重点を置いたメニューだ。その際の条件というのが異相結界の使用禁止。


 異相結界だけに頼った防御というのはリスク管理の視点からは完璧とは言えない。

 複数の防御手段で万が一に備えるのは戦闘従事者からすれば当然の事だろう。

 何事も絶対はない。

 という事で、いち早くそうした技術を身に付ける為に出された条件が、異相結界の使用禁止という縛りプレイというわけだ。


「楽しくなってきたのう」


「オレは楽しくないぞ!」


 魔法をただ受けるのでは拷問になる可能性が高い、という懸念がぬぐいされなかったオレは、セットごとの終了の条件の設定を提案。

 離れた位置から攻撃魔法をかいくぐってイグニスの目の前に刺さった丸太を切ればゴールというルールだ。

 そうだ、ルールを決めたのだ。決してエンドレスの訓練ではない。

 ルールを決めたのに、一向にその条件を満たせない。

 何ともいやらしいタイミングの攻撃でオレを丸太に近づけさせないのだ、この竜は。


「うおおおっ! 前に進めねえ!」


 特にノックバックが酷い。

 小規模の連弾系魔法で足止めしてから、足元や上空からの広範囲攻撃や高威力の攻撃後に、回避と前進のために踏み込んでから飛び出した瞬間の、両足が地面から離れた一瞬の隙を狙って、障壁ごと後退させる吹き飛ばし系の魔法をぶち当ててくる。

 オレがどんな回避行動を取ろうが一定距離まで近づくと高確率でノックバック有りの追撃を仕掛けてくるのが厄介な事この上ない。


「くっ! これじゃ埒があかねえなっ!」


 強化タフ・ドライブも使ってはいるが、あまり過度な状態にするとちょっとした移動のつもりが高く飛び上がってしまうので、これ以上の高速移動が出来ない。

 この状態でなんとか出来そうな手札を切らないといつまで経っても訓練が終わらない。


 どうもイグニスはオレに魔法を当てるのが楽しくなってきたらしく、ちょっとやそっとじゃ終わらせる気はないようだ。

 

 むう……これは回避は捨てたほうがいいか?

 魔力量はまだまだ余裕があるし、違ったアプローチをするべきかも知れない。


 大きく回避はせずに真正面から軸をずらすだけにパターンをシフトする。

 球状の魔力障壁を利用すれば射撃系の攻撃は射線さえ外せばなんとかなる。

 地面からの攻撃も魔力感知をフルに使って発動範囲を見切ってギリギリを移動。

 障壁だけでは防げない攻撃は、刀を使って弾く。


「む、次は力押しか?」


「それだけじゃ芸がないだろ?」


 耳元で聞こえた声にそう答えながら、口元が笑みの形にゆるむのを抑えられない。

 ここまで、いいようにされていたが、ただ攻撃を受けていたわけじゃないってのを見せてやる。


「なにか考えがあるようじゃな」


 不適な笑顔、とでもいえばいいんだろうか。

 明らかに何かを期待した表情を隠そうともしていない。

 それをきっかけに一層激しさを増した攻撃が襲い掛かる。


 無数の氷槍、火矢、炎壁の攻撃を、分厚くした障壁と刀の迎撃の力技でやりすごしつつ疾走を開始。

 ここで回避のパターンに再度シフト。


「それでは結果はかわらんぞ?」


「どうかなっ!」


 幾度目かの回避後にそれはきた。

 何度か食らって後退を余儀なくされた直径1メートル程の火炎球。

 きたきたきたーっ!

 これを待ってた!


 周囲に張った魔力障壁を最低限の強度まで下げて、その分の魔力を刀身の前面に展開した魔力障壁に集中。

 巨大な羽子板状に魔力障壁を変化させ、中段水平の脇構えから背中を見せる程に全身をひねり、そこから全力で振りぬく!


「っっしゃおらーっ!!」


 ゴンッ!という音と共に打ち返された火炎球は一直線に丸太の杭に向かって、すっ飛んでいく。

 

 ドゴォォォッ


 杭に当たった瞬間に大爆発を起こす火炎球。

 爆煙が周囲を覆い尽くし、風に流され消えるまでのいっときの静寂。


「……どうよ」


「ふむ、終了じゃな。それにしても――」


 と、地面からわずかに顔を出す焼け焦げた杭を見ながら。


「まさか打ち返すとはのう」


 ラキの魔力球とは違い、物体や、自身以外の魔力に接触してから爆発するという条件を与えられた火炎球を、そのまま打ち返すとは想像もしなかっただろう。

 通常であれば接触した瞬間に爆発炎上は避けられない。

 魔力障壁に接触しても爆発することなく打ち返せたのにはちゃんと理由がある。

 氷や土の槍なんかだと打ち返す以前に魔力障壁に衝突した時点で砕けてしまうが火炎系の、特に球状の魔法はあることをすることで打ち返す事が可能だ。


 断定してはみたが、実を言うと実践してみたのはこの訓練中が初だ。

 プリントアウトの練習時にオレの記憶能力が魔力を介しても発揮できるという事が分かり、いろいろ応用がきくのではないかと考えたのがきっかけだったが、確信に至ったのは何度か火炎球を食らってからだ。


 そのある事とは、魔力パターンの模倣。

 魔力パターンの同調によって接触しても発動させないようにする。

 要は、同じ魔力だよ~って騙すのが目的だ。

 抽出ピックアップの練習で金属の固有魔力パターンを読み取ったのと同様に、他人の魔力、取り分け、攻撃魔法時のパターンを読み取り記憶する。

 この作業を実際に魔法攻撃を受けながら行った。

 魔力パターンの把握自体はすぐだったが、そこから先が骨が折れた。


 魔力障壁の表面のみを魔力攻撃の波長と同化させるという作業に慣れるまで、イグニスに気付かれないように実行するのは至難の業だった。

 隠す必要はなかったかもしれないが、やられっぱなしというのもなんか悔しいからな。

 

 魔力の模倣というなら攻撃魔法そのものもコピーしてしまえばいいと思うかも知れないが、残念ながらそれは不可能に近い。

 他人の魔力パターンの模倣でさえ自身の魔力との違いで、歪みのような感覚があり長時間持続できない。その上、個人固有のパターンに上乗せされた属性魔法に変化させた魔力は、解析出来たとしても模倣などまず出来ない。


 つまり、接触しても爆発しない魔力障壁はほんの数秒から数分持続させるのが限界だったと言うわけだ。

 はっきりいえば、この技だってオレの記憶能力ありきの技だろう。

 画像を記憶するという能力を、魔力の固有パターンを記憶する事に応用出来たからこそだと思う。


「攻撃魔法の魔力を読み取っていたようだが、この為だったのじゃな」


 うそん、ばれてた。

 ちょっと意表をついてやろうと思って、ちまちま解析と模倣をバレないようにやっていたつもりだったのに全然隠し通せてなかったとか、そりゃないわ~。

 結構な労力だったんだぞ。


「分かってたのに対応を変えなかったのか」


「途中から楽しくなってきてのう。それに、飽和攻撃をどうさばいてクリアに至るのか興味がわいたのじゃ」


「……いいけどね。魔法攻撃がどんなものか、なんとなくだけど今の訓練でわかってきたし、イメージの手助けにはなったのは確かだからな」


 あれだけの種類と物量を食らえば、いやでも脳内に刻み込まれる。

 不思議だな、とか、それどうやってるの、なんて思う攻撃もあったが、追い追い聞いていけばいいだろう。


「それにしても全く手加減がなかったよな」


「あの程度の攻撃でおぬしがどうこうなるはずはないしの。怯まないのは分かっておったから、あとは小細工で足止めをした、というわけじゃ」


 あのシビアなタイミングでの攻撃を小細工と言い切るところがなんとも。


「威力のほうは手加減はしておったがな。神域周辺の森程度であれば今回の訓練に対応出来れば問題ないじゃろう」


「なら外に出ても良さそうだな」


「うむ、しかしこの訓練は継続じゃな」


「なんで!?」


 外出許可のためのテストみたいなもんじゃなかったの?


「何故そこで疑問に思う。まだ上の魔法があるのだから当然じゃろう」


「うっ、そういえば初歩って言ってたな……」


「それに今の訓練で新たに課題も出てきたのではないか?」


「確かに強化タフ・ドライブを使いこなせてないんだよなあ」


 訓練中に痛感した事だが、せっかくの強化を移動速度に反映出来ていないのだ。

 おそらく徐々にスピードアップしていくのなら時速にして100キロ以上は出せる可能性はある。

 チーターでも可能なのだから同じ程度の重力のこの星なら強化されていれば、4足と2足という違いがあっても同じ速度での移動は実現可能なはずだ。

 ただ、イグニスが課題だと指摘したように回避などの突発的な移動に、強化で得られる効果を明らかに活かしきれていなかった。


 初速から高速で移動するのがかなり難しい。

 強化を使った状態で物理的に一瞬で距離を縮めるのは不可能なんじゃないかと思うほどだ。

 特殊な歩法と挙動でいきなり間を詰めたように感じさせる技はあるが、こういった遠距離での回避に主眼を置くとあまり意味が無いので自然と単純な回避運動になるが……。

 一部の常識ハズレの短距離走者のように三歩でトップスピード、なんて事をやろうとすると最初の一歩目でどんなに前傾姿勢をとっていようが、関係なく飛び上がってしまう。

 そうならないギリギリのラインでなんとかやりすごしていたのだが、この世界での戦闘を考えれば、どうにかしたほうがいいのは確かだ。


「そこも常識が邪魔をしておるようじゃな。肉体を強化して終了、では行動の制約を突破したとは言えぬからのう」


「ああ、その辺りでもこの世界ならではの法則みたいなものがあるんだ?」


「射線をイメージして魔法を撃つという練習、それを応用すれば良いのじゃ」


「ん~? ……あ、自分の身体を弾丸に見立てるのか?」


「それに近い事をすれば良いのじゃ。攻撃魔法の発動初期段階では自身の掌握エリア内で待機している魔法が滞空しておるのは半ば常識となっているのは知っておろう」


「知っておろうって、いろんな事すっ飛ばしてそれ前提で話されてもなぁ。掌握エリアとか始めて聞く単語があるんだけど……。でもまあ、大体言いたい事は分かる」


「自身を滞空させるのは無理だが、ベクトルの操作は可能じゃ。その操作によって身体を必要以上に浮かせることなく移動すれば強化された能力を無駄なく活かせるようになるはずじゃ」


「慣性制御?」


「物理法則のみの側面から見ると、そうなるかの。しかし実際には別次元からの力も僅かだが働いている故に慣性制御とも言い切れん部分がある」


「この世界独自の法則って、そういう事か。なんにしても、自分を魔力の塊として捉えて動きの制御をすればいいって事だろ? 細かい理論とかはオレにはハードルが高すぎるから遠慮するとして。それ覚えれば戦い方の幅がかなり広がるよな」


「思い切り魔法が撃てるのう」


「それ目的でアドバイス!?」


「それ以外に何があるのじゃ?」


 すげえいい笑顔だ。

 ドラゴンの基準は分からないけどイケメンだ。


「いや、いいんだけどさ……」


 また講義の内容が濃くなるなあ。




 


 ~~~~






 その後にラキと組み手? のような事をして今聞いた話の、魔法による慣性制御の習得に時間を費やす。射的で培った感覚が役にたったのか、おぼろげながらにだが短時間で感覚を掴めた。

 あとは武術の鍛錬と一緒で反復あるのみって感じだろう。

 ラキも当然のようにこの技術を身につけているようで、結構参考になった。

 あれだけ自在に使いこなしていたら、そりゃオレの攻撃なんて当たらねえわ。


 ラキとの組み手の内容に納得しつつ夕食の準備に取り掛かる。

 乾燥させたハーブ、スパイス類を自作のすり鉢で粉末にしたものを肉系野菜になじませて焼く。

 やばいな、そろそろ米とかパンとか炭水化物が欲しくなってきた。

 肉が食えるだけでも贅沢なんだろうと思うけど慣れって怖いね。もっと色々欲しくなってきた。

 人間の欲は果てしないってのは本当だな。


「あ~、炭水化物が食いたい!」


 腹いっぱいになると同時に手足を放り出して寝そべりながらの心の叫び、とまではいかないまでも結構切実になりつつあるものが言葉として出てしまった。


「穀類はこの森には生育しておらんからのう、やはり人の生活圏で手に入れるか野生種を採取するくらいが関の山じゃな」


 穀物系の植物はこの世界にも普通にあるんだな。

 そう聞くと街で暮らしている人間がどんな食生活なのか気になる。

 目的としてはオレの食生活を充実させたいってのが第一だけど。


「やっぱり一度は街に出ないと話にならないか」


 その前に、まずは通常の森で狩りだ。明日から探索して、この神域との違いを多少は知っておいたほうが良いだろう。

 この世界の事を知るにはそこから始めるのが丁度いいらしいし。

 神域には大型の野生動物がほとんど生息していないが外の森にはそこそこいるようで、強さもそれ程ではなく手頃だろうと。

 現時点では神域のみでルテティアでのオレの世界が完結しちゃってるから、そこから外れてみるのがちょっと楽しみだ。


 その晩は若干気持ちが昂ぶって寝つきが悪かったが精神年齢が幼稚園児並みとかそういう事ではないと否定しておこう。

 その様子を見ていたイグニスが「子供じゃな。夜鳴きしそうじゃの」と。

 するかっ! 夜鳴きってなんだ。

 夜泣きならまだしも、子犬が寂しくて鳴くんじゃないんだぞ。


 一応突っ込みは入れておいたけど、そんなのどこ吹く風の顔。

 ラキが鼻をピスピスいわせて寝ているが子供の頃は夜鳴きでもしたんだろうか。

 イグニスって実は育児で苦労したとか?

 そんな事はいいか、寝よ寝よ。



 翌朝、待ちに待った外出の日。

 別に浮かれている訳じゃない。

 その証拠にちゃんと毎日のルーチンはこなしている。

 今も日課の修練を終えて食事と刀の砥ぎをしていた所だ。


「おぬしは歌の才能は開花しなかったようじゃな」


「――えっ、何が?」


「鼻歌が壊滅的じゃ」


「余計なお世話だ! ってオレ鼻歌出てた?」


「修練後から結構な時間、うめき声のような雑音がしておったな」


「ウォンっ!」


 ほんの少し眉間にシワを寄せて困ったような顔をしたラキ。

 ラキにまで非難された……。

 それよりもイグニスの言い草がひどい!


「言うに事欠いて雑音って……。ラキもそう思うのか?」


「クゥン……」


 申し訳なさそうに頭を下げて上目使いでチラッと。


「自覚が無い訳じゃないけど、面と向かってそういう反応されるとちょっとショックだ」


 でも鼻歌なんか歌ってるつりはなかったんだけどなあ。


「おぬしの持っていた本の情報では3ヶ月真剣に練習すれば上達はすぐだとあったが、実践してみればよかろう」


「……したんだよ」


「何をじゃ?」


「歌の練習! 実践してこの有様だよ!」


 経験の記憶の読み取りは曖昧な部分もあるようだけど、ピンポイントで抉るとかワザとじゃないかって疑うぞ。

 それとだ。

 オレは断じて浮かれて――ないと思う……。


「そんなことより外出の話だ!」


「ふむ、何か理由がありそうだが、まあ良いか」


 一人で何を納得してるか知らないけど、この話は終わり。

 これ以上楽しみに水を差してくれるな。


「神域の外に出る話だが、ラキと一緒に行かねば帰って来れんからの」


「わかった。でも何か理由があるのか? 認めた者の出入りしか許さないとか」


「基本的に出入りは自由じゃ。しかしある意味ではそういう事になるかの」


 セキュリティのためにオレに教えないとか、そういう事じゃなかった。

 自分で認めた者しか許さないのかと聞いておいて、イグニスにその権限があるならオレの事を認めてくれてないのか、とちょっとショックを受け気味だったが違ったようだ。

 

「神域と外界の繋ぎ目の場所が人間には判別出来ないのが理由じゃな。その時々で位置が変わる故に一度覚えればいいという訳にはいかん。が、ラキならば探し当てる事が可能じゃ」


 出入りが自由なのになんで? と思ったがそういう理由だったのか。


「おお、ラキすごいな」


「わふっ!」


 笑顔でフリフリと尻尾が揺れるのを見て、完全に言葉を理解してるよなあ、と感嘆する。

 

「イグニスは?」


「ワシが一緒に居ては狩りにならんぞ?」


「あ~、なんとなくわかる……」


 おそらく、というか間違いなく相手が逃げるんだろう。


「それに森の中では動き辛いしの。上空から行くという事も出来るが今回は遠慮しておこう」


 それにおぬしの記憶を反芻するのに忙しい、と引きこもりが言いそうな事を付け加えた。


「また漫画か?」


「次はラノベというヤツじゃ」


「そこに手を出すのか……」


 実を言うとオレが読み終わっているそれ系の作品はそれ程多くない。

 漫画原作から興味をもった作品なども多数あり、古本屋で買い漁ったり友人に借りたり、申し訳ないとは思うが立ち読みしたりと目に付くものを取り敢えず記憶しまくってはいたが半分も読破していないのが現状だ。夏休みを利用して読もうと思っていたがその前にここに飛ばされたから目を通した物が少ないのだ。

 この分だとイグニスのほうが早く読み終えそうだなぁ。


「趣味嗜好は個人の自由だからいいんだけどさ。変な影響受けてオレで実験しないでくれよ?」


「実戦に有効であれば当然取り入れるがな」


「はぁ……まあ、イグニスならそうなるよな」


 溜め息が出るのはどうにもならないという諦めからか、納得からか。

 両方だな。


「それは良いとして準備はどうじゃ? ぬかりはないか? 忘れ物は?」


「お、一応トイレに行っとくか! って、なんで急に母親みたいになってんだ」


 予定としては外で一晩明かして狩りに集中。

 そのために無限収納エンドレッサーに多少の食料と木刀も入れて、刀は腰のベルトの左側に紐で装着。

 ちなみに無限収納エンドレッサーは肩から斜め掛けにした背負い袋の中に入れて一応のカムフラージュだ。


「おぬしは追い詰められると突飛な行動に出るからのう。周辺を焼け野原になどということは無いとは思うが、余裕のある状況で行動させたほうが色々な意味でリスクが少ないじゃろう」


「イグニスの中でのオレの位置づけが気になるけど……言わんとしてる事はわかった」


「あとは場所の事だが。南のエリアが妥当じゃろう。その先の森を抜けると街へと続く街道が通っている。いずれ街に出るために通るのならば探索範囲としては丁度良いじゃろう」


 その他の注意事項は油断をするなという、言葉とは裏腹の軽い感じの忠告程度だった。

 そして準備が出来次第出発だ。


「それじゃ行ってくる!」


「ウォン!」


「無茶をするでないぞ」


 心配性だなと思ったが、オレの事ではなく周辺の森を心配してるんだったか。

 なんの戸惑いもなくラキと並走して南に向かって走り出す。

 強化タフ・ドライブを使って、あっという間に広場から遠ざかるのを肩越しにチラと振り返り確かめた。





「うげっ! 気持ち悪いなコレ」


 神域の境界面を越えるには避けられないとはいえ、このグニュッとした壁を通らなきゃいけないのか。

 広場から4キロ程離れた境界線上にある壁のようなそれは、柔らかい透明な膜の様な物だ。


「こんな所で突っ立ってても仕方ない。行くか」


「ウォン!」


 ラキもオレの言葉に同意したように声を上げる。

 それを合図に頭突きをするように壁に突撃をかます。


「っ! あれ? 気持ち悪い感触があると思ったのに……」


 勢い良く壁を飛び出してタタラを踏む。

 期待と違った結果に拍子抜けしているとラキが悠然と歩いて出てきた。


「……普通に通ってきたなラキ」


「?」


 小首を傾げ「どうしたの?」とでも言いたげな表情。

 なんだ、全然警戒する必要なかったのか。


「なんでもないよ」


 さて、神域の外に出たっぽいけど正直あまり違いがないように思う。

 いや……神樹の気配を感じないな。

 壁を通過する前までは確かにあった気配がなくなっている。


「ふ~む、久しぶりの狩りだけど上手くいくかね」


「わふっ」


 任せて、とでもはっきり言葉で聞こえそうな雰囲気を漂わせるラキ。


「いや、ラキに任せちゃったらオレのリハビリにならないだろ?」


「クゥ」


「上手くいかなかったら頼らせてもらうから」


 まずは散策しながらの索敵、かな?

 良く見ると神域とは若干植生が違う気がする森の中を、周囲に意識を向けながら移動する。

 隣のラキはといえば鼻をヒクヒクさせながら耳をせわしなく動かしている。

 

 これはもしかしてラキは獲物の気配に気付いてるけどオレは気が付いてないってパターンか?

 嗅覚と聴覚はさすがに敵わないからなぁ。

 ならちょっと方針を変えよう。


「ラキ、ちょっと試したい事があるけどいいか?」


「ウォン!」


 いいよって言ってる気がする。よし。

 一応許可も取ったし魔力を使わせてもらおうか。

 感覚を取り戻す意味でも気配だけで索敵しようかと思っていたが、よく考えたらもっと使えそうな力があるんだから出し惜しみしないで使ってみるべきだよな。


 取り敢えず球状の魔力エリアではなく極薄の円盤状の魔力を獲物に接触するまで広げてみることにする。今回は上空は敢えて無視。この森には人間を襲うような飛行系の大型種はいないらしいからだ。


 半径100メートル、…500メートル、……1キロ。

 2キロに届こうかという所で反応があった。

 ラキはこれに気付いてたのか? 魔力を使った気配は無かったから純粋に生物としての能力だけで捉えたって事になる。


「ラキはすごいな。この距離で気付くとはね」


 その何者かがいる方向を見て振り返りそう言うと、尻尾を振って返事をするラキ。

 本当はレーダーを再現したかったが電波の再現が難しそうで、ちょっと面倒だなと。

 魔力を使えばその代わりになりそうだとは理解していたが、相手に確実にバレるということで使うか迷ったのだ。が、むしろバレたほうが好都合だと思い至り使う事にした。

 気付かれた場合の反応も知ることが出来るし向かってくるなら手間が省ける。


 それにしてもこの反応はなんだろ?

 どう考えても全長が5メートル以上ある。

 地球の常識と照らし合わせるのも無意味かも知れないけどゾウよりデカいぞこれ。

 そんなデカさのヤツがこっちに向かって猛烈な勢いで移動している。


 接触するまで待つという選択肢もなくはないが、反応を確かめる意味でも回り込みながら動いて様子をみてみようか。

 大きく反時計回りで回り込むこちらに合わせて軌道修正をしてくる所をみると、単なる移動ではないようだ。一キロ弱の距離の辺りからオレの方もどうやら敵さんに獲物として認定されたっぽい。


「ふむ……標的にされたのは確定、と」


 こちらは強化状態で相当な速度で移動しているが、それに怯む様子も無い。

 ちなみにラキも後方で同速度で移動中だが余裕でついてくる。


「このままエンカウントまで何もしないってのもアリかも知れないけど、それはオレの知ってる狩りじゃないなぁ」


 高速で移動しながら落ちていた石を幾つか拾い集めてポケットに詰めておく。

 遠距離攻撃用の為のものだ。

 今のオレだと射程は100から200ってとこか?

 予想外の遭遇なら仕方ないが、充分に距離がある状態で獲物を捕捉したなら、接敵する前に仕留めるのが定石だ。


 ポケットに詰めた石を取り出し魔法でそれを強化して握り締める。

 移動スピードも上乗せして放つための独特の投擲法も実はあるが、今回は普通に助走つきのオーバースローで目標に向けてストライクを狙う。


「ぉらぁッ! 当たれぇ!」


 『飛穿孔』その名の通り、物を飛ばして穴を穿つ。

 正式な投げ方はコレとは違うが、標的に当てるという行為自体は同じなので別に構わないだろう。

 もうちょっと捻れよご先祖様ってネーミングだけど捻り過ぎて良く分からない感じになるよりはマシかも知れない。


 ギャォ! みたいな悲鳴が聞こえたって事はどこかしらに当たったようだな。


「よっしゃ、たたみかける!」


 ビシュ! ビシュ! と空気を切り裂くような音をさせながら次々と投擲していく。

 200メートルを1秒――時速にして約720キロ?

 新幹線の倍のスピードか。結構でてる事に驚きだな。


「これは人間ヤめてるなー……。でもこの世界だと、このくらいは普通なんだろうな」


 魔法が生活に根付いてるくらいなんだから、この程度の事はこなすヤツは大勢いるはずだ。

 そんな事を考えていたら獲物の動きが止まった。


「お、仕留めたか?」


「ウォン!」


 おや、ラキの判定も仕留めたに1票か。

 成果を確かめるために獲物の倒れた場所まで生い茂った草木を飛び越えて行く。

 茂みを越えた先に待っていたのは全長10メートルに達しようかという全身を毛で覆われた生物。


「定番って言えば定番だな。にしてもデカ過ぎだよ……」


 目の前に横たわっているそれは、どうみても猪だ。

 ただしサイズと牙がすごいことになってる。

 バビルサのようにちょっとおかしな所から牙が出ているのだ。

 下顎から計6本出ているが、4本は上に向けて大小2本ずつ対で、残りの2本は顎の下から湾曲して生えていた。

 機能的には重機のバケットのような使い方をするのを想像してしまう、そんなシルエットだ。

 どの牙も人間の胴回りくらいのの太さがあるんじゃないだろうか。


「体毛も針金なみの剛毛だな」


 こんな鎧のような毛皮を着込んだ猪を石つぶてだけでよく仕留められたもんだ。

 良く見れば身体中のあちこちから血を流しているが、頭部への攻撃が致命傷になったようだ。

 分厚い毛皮も投石による攻撃を防ぐには至らなかったと。


 ここで解体してもいいけど、ちょっとそれ所ではなくなりそうなんだよな。

 実を言うと、この巨大バビルサもどきを相手にしている最中も魔力の索敵円盤を広げ続けていた。

 半径約5キロまで広げて動き回っていたのだ。

 その結果、大小数十の反応があったのだが、そのことごとくがこちらに向かってきている。


「あ~、調子に乗りすぎたか……。ラキ、悪いんだけどちょっと手伝ってくれるか?」


「ウォン!」


 いいよ~、と受け取っていいのかな?


「っていうか、どっちが多く倒すか競争するか?」


「ウォン! ウォンッ!」


「お、やる気だな」


 ハッハッハッと呼吸しながらオレの問いに元気に返してきた。

 ちょっと数が多いけどなんとかなるだろう。

 駄目そうなら逃げればいい。

 移動速度を比べれば充分逃げ切れる速度のようだし。

 取り敢えず円盤状の魔力を糸状に変化させて、それぞれの固体に繋げてあるからどこにいるかは丸分かりだ。という訳で勝負の判定も可能。


「よし、じゃあ勝負開始だ!」


「ウォン!」


 それを合図に同時に別方向に飛び出す一人と一匹。

 まずは、各個撃破を狙うために一番近い獲物に接近する。

 と同時に二番目三番目の距離のヤツに投石の遠距離攻撃。

 ラキとの会話の最中に充分補充しているので投げ放題だ。

 遠距離攻撃があるオレのほうが有利なんじゃないか? と思っていたら遠くの方からドゴンッ!ドゴンッ! と破壊音が聞こえてくる。


「やべっ! ラキは魔法攻撃が使えるんだった」


 あれだけ模擬戦で撃たれてんのに、すっかり忘れてた。

 同じ条件の狩りでラキに本気出されたら勝てない気がしてきたぞ。

 などとちょっと焦りを感じつつ獲物との距離をゼロにすべく速度を上げる。

 今度は遠距離ではなく直接対峙する。

 実戦での神樹の刀の使い勝手を確かめる為にも、この世界の生物の強さを肌で感じる為にも必要だろうとの判断からだ。


「やっぱりバビルサもどきか。群れか何かだったのか?」


 先程の個体より一回り小さいが、それでも5メートルは超えていそうな巨体が目の前にいた。

 20メートルほど離れた場所で右前足を激しく動かし、こちらを睨んでいる。

 偶蹄類がよくやる突進の前の行動。

 そこから突進してくるか? と警戒していたら、予想と違う行動に出るバビルサもどき。

 下顎から伸びた牙を地面に深々と刺し、そのまま突進してきた。


「やっぱりそう使うのか!」


 地面をめくり上げ、土砂を津波のようにして襲い掛かってきた。

 シルエットから予想したとはいえ、実際にその通りになると驚く。

 魔力が動いていたという事は物理と魔法の合わせワザか。面白い魔力の使い方をする。

 感心していたが食らってやる義理はないので攻撃を確認と同時に側面側に移動して既に影響範囲からは脱している。


 回避される事が織り込み済みだったのかどうかは知らないが、即座に反転して再度津波と一緒に接近してくるバビルサもどき。

 こっちの世界にも猪突猛進ってことわざあるのかな? と考えてしまったがそんな場合じゃない。

 

 ここで神樹の刀を鞘から抜く。

 土砂の津波とともに迫る巨体を眼前に正眼に構え迎え撃つ。

 だが馬鹿正直に迎撃するつもりはない。

 オレも目標に対して突進して津波を切り裂き、全身を覆った魔法障壁を利用して押し広げた隙間に飛び込み側面に立つ。

 明確に表現するならば、すれ違い様ということになるだろう。

 その瞬間に振り上げた刀を首に向けて振り下ろす。

 狙うは首筋。首を落とす必要はない。脳へ血を運ぶための血管だけを斬ればいい。

 結果は、斬られた血管からの大量出血。


 勝負あり。


 ドズンッ! と大きな音をたてて崩れ落ちるバビルサもどき。


 結果だけを見れば難なく勝てた。しかし不安要素が全くなかったとは言い切れない。

 斬りつける瞬間に脳裏をよぎたったのは、地球の生物とは全く違った生体構造をしていたら仕留められないのでは? と。

 例えば、血管が骨のような外殻で守られていたりしても神樹の刀であれば問題なく切断可能。しかし脳の位置が頭ではなく胸部や腹部にあった場合、首にみえる部分を攻撃しても脳への血流を遮断するという事が出来ないので意味がない。呼吸にしても口や鼻でしてるとは限らないし。

 そうなると首を攻撃しても致命傷にはなり得ない。

 もしそうであった場合、仕切り直さなければいけない所だった。

 だが、どうやら危惧していたような事にはならなかったようだ。


「まずは一匹」


 刀を手に次の目標に向けて駆け出す。あ~んど、投擲。

 目標以外の獲物にも遠距離攻撃しつつ、極力、複数同時戦闘にならないように警戒。

 投石で何体かは動きが鈍ったり動かなくなったヤツがいたが仕留めにはいかず、定めた目標は変えない。

 距離と速度で判断して、脅威順に効率よく各個撃破していく方針は変えないほうがいいだろう。

 そして本日二度目の戦闘が始まる。


「今度は熊かよ……」


 索敵時は四足での移動のせいかバビルサもどきと区別がつかなかったが、対峙と同時に立ち上がって威嚇行動に出たのでイヤでも判別がついた。

 耳の後ろから角のようなものが生えてるが外見はどう見ても熊だ。

 バランス的に腕が太いようにも見えるし若干毛足も長いが、熊だ。

 やはりというかなんというかコイツもデカい。

 立ち上がった状態で軽く3メートルは超えている。

 完全に直立していないにも関わらずこの体高というのは相当な大きさだ。

 魔法なし武器なしで遭遇したら間違いなく挽き肉にされるだろう。

 

 この世界に来てからデカいヤツにしか出会ってないぞ。

 なんでこの世界のヤツらはみんなデカいんだ。


「デカけりゃいいってもんじゃねえと思うけどな」


「グオォォーッ!!」


 オレのその言葉に反応した訳でもないと思うが、オレが言い終わるや否や周囲の空気を震わせ地面までをも振動させる咆哮を上げ、その巨体に似合わぬ速度で襲い掛かってきた。






 ~~~~






 結果から報告しよう。

 熊には勝った。

 決まり手は撲殺。


 その太い腕の攻撃をかわし何度か斬りつけるチャンスを敢えて見逃し、魔法障壁を攻撃に転用出来ないかと考えていたので、それを実行した。

 巨大羽子板を魔法障壁で作り出し、イグニスの魔法を打ち返した時より魔力を込めて物理干渉力を強化した。

 面で殴り飛ばしたり横にして薙ぎ払ったり、数回ほど殴打しただけだが当たり所が悪かったのかそれで勝負がついてしまった。


 その後、数回の戦闘を繰り返し次の目標に意識を向けようとした時に強烈な魔力の放射がオレの行動を止めた。


「なんだこの魔力は……。ああ、これラキの魔力だ」


 何かあったのか?

 ここまで強烈な魔力を使わざるを得ない敵がいるのか?

 いや、オレの知覚範囲にはそこまで強そうな生物はいなかったはず。

 

 これは、……威圧?


 気付くと周囲から動くモノの気配がなくなっていた。

 ラキの放つ魔力のプレッシャーに耐え切れず逃げたようだ。

 そう状況を冷静に分析して当然周囲の景色も目に入る。

 

 しばらくここに留まって戦っていたが、100メートル四方程の範囲がなかなか酷いことになっていた。

 複数同時戦闘は避けていたつもりだったのに結局囲まれてしまい、ここでそこそこの時間戦闘を繰り広げていたのだ。

 地面はえぐれ、木はなぎ倒されたり真っ二つに斬られていたり、まあ、この真っ二つの方はオレが切り倒しちゃったんだけど。


「……環境破壊も甚だしいな」


 そんな周囲の惨状に対して反省していたら背後の茂みからラキが姿を現した。


「ラキ、何かあったのか? えらい勢いで威圧してたけど」


「クゥ」


「ん゛?」


 何かがラキの口元にいるように見える。

 正確にはラキが何かを口先でつまんでる……。


「ラキ、なんだそれ? なに拾ってきた?」


 小さな身体に小さな手足。

 ひらひらとした薄手の生地のワンピース。


 そして背中の薄い蒼い色の羽。

 間近で見れば間違いようがない。



 ラキは妖精を拾ってきたようだ。



二話に分けようか迷いましたがそのままにしました(´・ω・`)

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