はじまりのはじまり
引きこもりと天才は紙一重⁉
一年間、引きこもりだった、俺は、高校二年の春、超エリート高校の編入生となった。
新年度、学園登校日初日。
「おーい、このクラスに新しい仲間が増えるわよー。」
転校生がきた時の先生お決まりと言えるこのセリフにうながされ、俺は教室へ足を踏み入れる。
「えっと、このクラスに編入することになりました大掛 龍矢です。これから、よろしくお願いします。」
ざわざわざわ。教室中から、歓迎するというより、奇異の視線、あるいは、獲物を見定めるような視線を向けられる。それもそのはずなのである。なぜなら、ここは超倍率の高い超エリート高校なのだから。そして、俺はそんなエリート高校の編入生なのだから。
「お、大掛くん⁉」
そう言って、一人驚いた顔をしながら立ち上がる少女が一人。
「わ、私だよ、瑠奈だよ!中学時代の同級生だった!!」
「あぁ…。」
思い出した。彼女は佐々木 瑠奈。中学の頃の同級生で三学年最後の県内統一の学力テストで一位だった(らしい)。
俺は、瑠奈に「また、これから、よろしく。」と声をかけ、空いている後ろの方の席に座った。それから、朝のホームルームが始まる。これは、まだ、しばらくの間は奇異の視線を向けられることになりそうだと覚悟しながら、新しい高校生活が始まったのである。
放課後。視線は気になるものの、何事もなく一日の授業か終わり、多くの生徒が帰路についたころ、俺は、理事長室へ向かっていた。その途中で、瑠奈に会った。
「今、帰りか?」
「あっ、大掛くん。うん、今、ちょうど委員の仕事が終わったの。大掛くんは?」
「俺は、放課後、理事長に理事長室来るように言われてたから、行くところだ。」
「それじゃね」
理事長室にて。
「やぁ、よくきたね。まっていたよ、龍矢くん。」
この人が、俺の恩人であり、この学園の理事長の村坂 勉。
「村坂さん、編入の件ではありがとうございました。感謝してもしきれないです。」
感謝の気持ちを込め、深々と頭を下げる。
「龍矢くん、顔をあげて欲しい。僕は嬉しかったよ。」
「嬉しいですか?」
「あぁ、編入についての話し合いの時、君に言ったように、本当なら試験なしで編入できるはずだったんだけどね。君が精神不安定の引きこもりだったと誰かが言い出して、批判の声が出てしまってね。それで、編入試験を受け、いい点数を取ることを条件にすることで押し切られてしまってね。内心、正直焦ったよ。君がいくら頭が良かったとしても、一年間勉強していなかったブランクは大きい。でも、そこからがすごかった。君は、僕たちの前で試験の問題を解き、ほとんど満点の点数をとって見せたんだから。その時、僕の目に狂いは無かったのだと、嬉しく思ったよ。」
そう、俺は突然呼び出され、問題を解かされた。でも、解けたのには、理由があった。
「俺、実は編入の話を聞いた時、もしかしたらと思って、知らされてから三日間、猛勉強してたんです。」
村坂さんは、驚いたような顔をした。