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10話:カナリアのわがまま

 ……と言う訳で、現実逃避も兼ねて今日一日の出来事を振り返った訳だけど、僕の記憶の中で、一番濃い日だった事は間違いない。自殺して、気が付いたら巨乳美少女になり、謎の天使様に仲間入り宣言をされ、女児に(かしず)かれる。

 百万回生きた猫でも体験した事は無いだろう。


 禊が終わった後、一階の奥まった場所――恐らくこの建物で一番広い部屋に通された僕は、椅子代わりのベッドマットに腰掛けながら、カナリアさんに髪を乾かされている。

 細い指の間からそよそよと漂う温風が実に気持ちいい。

 これも先ほど聖水を作ったのと同じ要領なのだろう。器用なものだ。


「カナリア姉ちゃん、おなかすいた……」

「へったー」


 髪をくすぐる心地よい感触に身を委ねていると、イカルちゃんとツグミちゃんが、入り口からひょこっと顔を出した。

 彼女らはタオルで拭いただけなので、髪の毛がまだ完全に乾ききっていない。

 仕方ない事だが、子供を押しのけて自分だけ特別扱いされているようで、何だか申し訳ない。


「ミサキ様の聖水を飲んだでしょ? 今日はそれで我慢しなさい。明日になれば私の神力も大分回復すると思うから、そしたら朝御飯を作るからね」

「ぅー……」


 カナリアさんの答えに、二人ともは不満げな表情を作る。

 けれど、僕と視線が合うと、しぶしぶ納得してくれた。

 会話からすると、食べ物もエーテルと言う技術で作ってるみたいだ。

 飲食店らしき物なんか全く見かけなかったし、ちょっとコンビニ行って来るというわけにもいかなそうだ。

 何でも神力とエーテルで生成出来るのは便利かもしれない。

 逆に言うと、力が無いと何にも出来ないというのは結構えぐい世界だ。


「仕方ないよ。がまんしよ? カナリア姉さま、それじゃ私たち先に寝させてもらうね」


 後を追うようにやってきた、眠たげに瞼を擦るアトリちゃんに促され、イカルちゃんは顔を引っ込めた。

 食欲よりも睡眠欲が勝ったのか、三人はあくびをしながら二階へと上がっていく。

 恐らく、先ほどのように三人で川の字になって寝るのだろう。


「明かりを付けますね」


 そう言うと、カナリアさんは蛍火を集めたようなライトを作り、空中に浮かべさせる。

 光量的には病院とかの非常口のライトを思わせる光だけれど、寒々しいあの光より、ずっと優しい感じがする。


「禊の聖水とか、私の髪を乾かしたりとか、何から何まで手間を掛けちゃってごめんね」

「いえ! 下級天使として当然の事をしたまでです! ああ、あんなにお美しい御髪(みぐし)が、こんなに短くなってしまうなんて……」

 

 静寂が支配する幻想的な空気の中、カナリアさんの悲しげな溜息が耳朶(じだ)を打つ。

 僕の髪はどうでもいいのだけれど、その口調には、昼に比べて明らかに疲労の色が混じっていた。

 エーテル固定とやらを教えてもらって食べ物を作れないかとか考えたけど、疲労困憊のカナリアさんに教わるのは少し気が引ける。

 力加減の出来ない僕が勝手にやってしまうと、家を破壊するほど巨大なパンとかが出る可能性もある。

 フランスパンに埋もれて圧死とか、間抜けすぎる死に方だ。


 カナリアさんに色々教わるのは、明日以降にしたほうが無難だろう。

 僕はというと、女体化や授乳その他で精神的な疲れはあるものの、肉体的には元気そのものだ。

 空腹も喉の渇きも全く感じない。これも神力のお陰なのだろうか。


「ミサキ様、今日は本当にありがとうございました。ミサキ様が居なければ、私はあの場で消されていたかもしれません。いくらお礼を言っても、切られた髪は戻りませんが……」

「だから髪なんかどうでもいいって。それより、羽があれば一人前って言ってたのに、消されるなんて穏やかじゃないね」

「羽の有無に関しては、普通の天使族の基準です。私の場合、どこまで言っても下級天使ですから……この羽だって、皆に協力してもらって、ようやく作れたものなんです」


 そう言ってカナリアさんは、苦笑しながら小さな羽をはためかせる。

 灰色の鳩のような羽は確かに小さくて頼りないけれど、それだって羽は羽だ。


「協力って、具体的にはどうしたの?」

「神力は受け渡しが出来る物なんです。勿論、あまりやり過ぎると存在が維持できなくなりますけれど……」


 輸血みたいなものだろうかと想像していると、カナリアさんは言葉を続ける。


「下級天使の個々の力は本当に小さなものですし、やはり純正品じゃないと綺麗にはなりませんね。私が無理を言ったのに、皆の期待を裏切ってしまいました……」


 カナリアさんは、寂しく笑う。

 全てを諦めたようなその横顔に、胸が締め付けられそうになる。

 死ぬ直前の僕もこんな顔をしていたのかもしれない。


「カナリアさんはどうして上神の儀式に出たの?」

「え……?」

「気を悪くしたら悪いんだけど、カナリアさんは下級天使達のリーダーでしょ? だったら、そこで満足している事だって出来るんじゃないかと思って」

「…………」


 僕は鶏口牛後(けいこうぎゅうご)という故事を思い出していた。

 無理に大きな集団の底辺でいるより、小さくてもいいから頂上に立つほうが良いという考え方だ。

 与えられた地位を維持していくことだって、大変な事だと思う。

 カナリアさんは困ったように眉を潜めている。

 僕が何も言わないで居ると、彼女は言葉を選ぶように、口元を少しずつ開いていく。


「……偉くなろうと思ったんです」

「偉くなる?」

「私、皆のリーダーとして頑張ってきたつもりです。毎日みんなのために頑張って、少しずつ力も付いて……だから、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、自分が強いような、偉くなったような錯覚をしたんです」

「……………………」

「『自分は特別な存在なんじゃないか』って思っちゃったんですね。もっと高みへいけるんじゃないか。皆の力を借りれば、もしかしたら天使族に認められるんじゃないかって。イカルやアトリには反対されたんですけど……」


 馬鹿ですね、と付け加え、気を紛らすように僕の髪を梳きながら、カナリアさんは心情を吐露していく。

 それはまるで懺悔のようだ。


「でも、やっぱり全然駄目でした。塵をいくら集めたって山になんかならないんです。塵は積もってもゴミなのに。力の差は分かっていたはずなのに。分不相応な場に出て、恥をかくだけで終わっちゃいました」


 カナリアさんは、アスファルトの隙間から咲いた一輪の花みたいな物だと思う。

 それは雑草で、名も無い花で、綺麗なバラ園に相応しくないものだ。

 当然『これは雑草だから』と無造作に引っこ抜かれ。ゴミ箱へポイというわけだ。

 管理する側から見れば、正しくて、当然の行動だ。反吐が出る。


「カナリアさん、ちょっと僕の前に来てくれるかな?」

「は、はい……」


 僕はベッドから立ち上がると、近寄ってきたカナリアさんの頭を少し強めにくしゃくしゃと撫でる。

 細く繊細な銀色の髪はひんやりとした感触で、滑るように僕の指の間を縫う。


「あ、あの、ミサキ様……? 一体何を?」

「偉くなんて、ならなくていい」

 

 それは、お婆ちゃんが、僕が泣いている時に言ってくれた言葉だ。


「え……?」


 何を言われたのか分からないのか、カナリアさんは目を瞬かせる。

 女性としては背の高い僕と、小柄なカナリアさんとでは、頭一つとまではいかないがかなりの身長差がある。

 彼女の目線に合わせるように、僕は少し前かがみになる。

 お婆ちゃんはこうやって、僕を上から押さえつけるような事はせず、僕の目をはっきりと見てくれていた。

 ここから後は自己流だ。僕に上手くできるだろうか。


「カナリアさんはもう偉いんだ。今までずっと一人で背負い込んで、頑張ってきて、それ以上自分を苦しめる必要なんてない」

「偉くなんてないです! イカル達を助けたのも、皆を助けてきたのも、私より弱い存在を哀れんで、自分の価値を高めようとしただけなんです! 私は汚い鼠なんです!」

「そういうのもう止めようよ。カナリアさんは自分なりに考えて、努力して、戦って負けたんだ。失敗したって、恥ずかしい事なんて何も無い」

「それは綺麗事です! 偉くないと駄目なんです! 負けたら意味なんてないんです! 結果が出ないのに頑張ったって誰も褒めてくれませんし、私を必要となんてしてくれません。ガラクタに価値なんてないじゃないですか!」


 負けたら意味が無い。

 ガラクタはガラクタ。

 人に褒めてもらえないと意味が無い。

 強くて、美しくて、正しいものに価値がある。

 実際その通りなのだろう。

 そうじゃなきゃ、世界は滅茶苦茶になってしまう。


 ――けれど、本当にそれだけなのだろうか。


「じゃあ言い方を変えよう。カナリアさんはどうなりたいの?」

「え……わ、私がなりたい、ですか……?」

「褒められるとか、価値があるとか、何が出来るとかじゃなくて、カナリアさんがしたいこと。心から思っている事。カナリアさんの夢……いや、そんな大それたものじゃなくていい。心の底に押し込めている感情。それを吐き出しちゃいなよ」

「私の……感情……」


 偉くならなくていいかもしれないけど、それと夢を見るということは全く別物だ。

 夢を見る、希望があるから、人は明日を信じて生きていける。

 出来るなら、幸せで、素敵な人に囲まれて、笑いながら温かく綺麗な世界で輝きたい。

 誰が好き好んで石の下のダンゴ虫になりたいもんか。


「ここには私以外誰も居ない。あの三人も眠ったし、他の下級天使も、エミューにモア――怖い天使達もいない。私とカナリア、二人だけしか居ないよ。だから怖がらないで言ってみて。私は絶対に馬鹿にしない。約束する」

「……………………」


 カナリアさんが物凄い要望を言ったとしても、僕に出来る事は無いかもしれない。

 ただ聞くだけだ。

 今日会ったばかりの胡散臭い奴に、話す事でもないかもしれない。

 それでも、彼女一人に抱えさせて置きたくなかった。

 自分一人で黒いものを抱え、先の見えない世界を生きていくのは本当に辛いことだから。

 

 多くの人は、自分の今の気持ちを押し殺し、仮面を被って生きていく。

 けれど、あまり我慢ばかりしていると心が死んでしまう。

 褒められる事、価値のある自分を求め、そうでない自分自身を責め立てる。

 虚飾の鎧に身を包み、いずれ鎧の重さに耐えられなくなる。

 そうした者の行き着く先は、僕自身が体験済みだ。


 だから、人が生きていくには、そのままでいいよって言ってくれる人が絶対に必要なんだ。

 現実は残酷だ。どれだけ望んでも、決して手に入らないものもある。

 そんなこと、僕だって分かってる。


 一番強くはなれないかもしれない。

 一番美しくもなれないかもしれない。

 けれど、一番納得できる生き方は出来るかもしれない。


 長い長い沈黙の間、僕はひたすら待ち続けた。

 そうして、カナリアさんの貝のように閉じられていた口がゆっくりと開いていく。


「……たいです」

「うん、どうしたい?」

「強く、なりたいですっ……! も、う嫌な、んですっ! 悔し、いですっ! 何、とかなる、んじゃないかって頑張、って、虫けらみた、いに扱われ、てっ……! 私、だって、綺麗に、なりたい! 皆に大事に、され、たいっ! 光り、輝く世界を、見てみたいっ! ううう……ああああああんっ!!」

「よしよし、辛かったね」

「うわあぁぁあああぁああああああんっ!!」


 カナリアさんの嗚咽交じりの慟哭は、後半殆ど台詞になっていなかった。

 号泣するカナリアさんを、僕はなるべく優しく抱きしめた。

 抱擁というより、赤ん坊をあやすような感触だ。

 華奢な背中をぽんぽんと叩いて、泣きたいだけ泣かせておく。


 こうされると、不思議と心が落ち着いた。

 人に優しく抱きしめられると、何が変わったわけでも無いのに、僕は居てもいいんだ、愛されてるんだって感じる事が出来るから。

 カナリアさんは、泣いて泣いて、泣き続けた。

 大きくなると、感情を吐き出す事が難しくなる。

 小さな頃はもっと世界は輝いていて、辛ければわんわん泣いて、楽しい時はけらけら笑って、上手く心を浄化することができたのに。


 何で出来なくなってしまうんだろう。

 つらい事や悲しい事になれてしまうからかな。

 見栄やプライドとか、甘えられる相手が居なくなってしまうからかな。

 良く分からない。

 泣きたい時は、泣いてもいいのにね。



 ◆ ◇ ◆



「申し訳ありませんでしたミサキ様。お恥ずかしい所をお見せしてしまって……」


 心に溜まっていた(おり)を洗い流すように、カナリアさんはずっと泣いていたけれど、暫くすると泣き腫らした顔で、恥ずかしそうに僕に謝罪をした。

 心なしか表情が柔らかなものになっている気がする。

 これが気のせいで無いなら良いのだけれど。


「ううん。やっぱり泣きたい時は泣くべきだと思う。少しでも役に立てたなら嬉しい」

「ミサキ様はお優しいのですね……」

「別に優しく無いよ。ただ、自分で自分を責める人を見るのが嫌なんだと思う」

「私、少し無理をしていたのかもしれません……」

「少しどころじゃないよ。破綻寸前だよ」


 僕がそう言うと、カナリアさんは照れながらも、柔和な笑みを浮かべる。

 それは朧月のような幽かなものだったけれど、気負った物ではなく、本当に穏やかなものだった。

 この子、こんなにいい表情が出来るんだ。


「さっきのカナリアさんの願いだけど、あれなら私にも出来る事があるかもしれない」

「どういうことでしょう……?」


 カナリアさんは困惑して眉根を寄せる。


「ほら、次の上神の儀式、カナリアさんも参加できることになってるよね。そこでカナリアさんを神にすればいいんじゃないかな。そうすれば、否が応でも誰もが一目置くでしょ?」

「えええっ!? む、無理ですよぉ!?」

「まあ厳しいよね。でも私が協力すれば、無理じゃないかもしれない」

「……と言いますと?」

「だから、表向きは私が受ける準備をしている事にして、儀式を受ける時に、カナリアさんが出て行けばいいんだよ」

「そ、そんな! 無茶です!」


 まあ無茶だとは思う。

 けれど、相手の懐に飛び込んでさえしまえば、意外とどうにかなったりする事もある。

 完璧な世界なんて存在しない。

 神にだって、神であるが故の弱点もある筈だ。


「そうかな? いいアイディアだと思わない? だって、私は力はあるけど常識が無いし、カナリアさんは知識があっても力が無い。お互い協力し合えば丁度いいんじゃない?」

「で、でも! それではさすがに……!」

上司(ケツァールさん)が参加していいって言ったし、やり方までは指定しなかった。ルール違反じゃない筈だよ」

「そうじゃなくて、ミサキ様に何のメリットも無いじゃないですか!」

「あるよ」

「な、何ですか?」

「面白そう」

「ええっ!?」


 高慢ちきで、決まりきったルールの中で、最底辺の異分子が大暴れする。

 実に面白いじゃないか。ほら、昔のことわざにもあるでしょう。

 鼠一匹で、大山を鳴動させることが出来るって。


「面白そうって……たったそれだけの理由で、ミサキ様は自分のチャンスを台無しにされるのですか!?」

「元々、私はあんまり神とかに興味ないんだよ。でも、カナリアさんの願望を叶えるには神になるのが手っ取り早い。そして私はそれを見たい」

「で、ですけど。神の位は本当にみんなが望むものです。それを捨ててしまうなんて……」

「みんなが素晴らしいと思うものでも、それを私が欲しいとは限らない。その逆もまた然りだよ。カナリアさんは自分の事を価値が無いって言ったけれど、そんな君を、何よりも素晴らしいと思う人も居るはずだよ」


 そして、その人はここに居る。

 恥ずかしいから言わないけどね。


「もっとわがまま言っていいと思うよ。そうじゃないと、どんどん利用されるだけになっちゃう」

「わがまま、ですか?」

「うん。自分の事を大事に出来ないと、他人を本当に大事に出来ないと思うから」

「……じゃあ、わがまま言ってもいいでしょうか?」

「うん。何かな?」

「あ、あの、頭を撫でて貰ってもいいでしょうか?」


 自分で言った手前、どんな無理難題を言われるかと身構えていたが、拍子抜けしてしまう。


「……そんなのでいいの?」

「は、はい! 先ほどしていただいた撫でられ方が、その……とても心地よかったので」


 確かに気持ちは籠めたけれど、こんなに綺麗な髪をくしゃくしゃにしてしまって、逆に申し訳無いと思っていた。

 本人の要望ならまあいいか。

 先ほどと同じように小さな頭に手を伸ばすが、意識してしまうと何だか妙に緊張してしまう。


「これでいいかな?」

「も、もう少し強めがいいです!」

「こ、こうかな?」

「ありがとうございます……」


 ひんやりとした髪を、少し荒っぽく撫でてあげると、カナリアさんは照れ臭そうにはにかんだ。

 今までに見た事の無い、蛍がぽっと輝くような、何となく見ていて落ち着く表情だ。


「あ、あの! も、もう一つわがままを言ってもいいでしょうか!」

「おうっ、どんどんおいでっ」


 気合の入れ方からして、ようやく本番らしい。

 今の僕には金も常識も無いが、やる気と謎のパワーだけはある。

 天使の根城に単身殴りこめと言われても、多分実行するだろう。


「私の事、カナリアと呼び捨てにしていただいていいでしょうか?」

「え……?」

「やっぱり駄目でしょうか……?」

「いや、駄目ってわけじゃないけどさ。余裕だけどさ。そんなんでいいの? むしろマイナスだよ?」

「ミサキ様に呼び捨てにされたいんです。そ、その方が特別な感じがするので……」


 カナリアさんは頬を真っ赤に染めて、上目遣いにこちらを見る。

 本人は気付いていないようだけど、物凄く庇護欲を掻き立てられる視線だ。

 これで駄目だと断れる男が居るなら、是非ともご教授願いたい。


「分かったよ。カナリア、これでいいかな?」

「は、はいっ!」


 いつの間にか蛍光ライトは消えうせて、窓から差し込む月光のみが部屋を照らす。

 怜悧な光を受けた銀髪がきらきらと反射して、その美しさに負けない程、カナリアは可憐に微笑んだ。

 出来るなら、この子のこんな表情をもっと引き出して上げられたらいいなと思う。


 予想だにしなかった波乱に満ちた新生活の一日目が、ようやく終わろうとしている。

 明日から忙しくなりそうだ――。


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