1.01
2012/10/10 初投稿
2012/10/26 改稿①
俺、葛平七生は神を信じていない。
これまで一度たりとも信じたことはなかったし、これからも信じることはないだろう。
何故なら、神が信用に値する存在だとは、そして信頼の置ける相手だとは、ましてや信仰すべき対象だとは、俺には到底思えないからだ。
全知全能である世界の創造主。それが神に対する個人的なイメージだ。
しかし、そんな神が創ったこの世界は未完成かつ不完全で、山のような問題をいつも抱えている。
果たしてこんな状況になることも、あらゆる全てを知っているはずの神の計画通りなんだろうか。
もしそうだとしたら、神は相当ねじ曲がった性格の持ち主じゃないだろうか。それとも全知全能ってやつは、ドジっ娘属性も完備しているのだろうか。
そしてそのどちらにせよ、そんな存在を信じることなど俺にはできないし、すべきじゃないと思う。性悪もドジっ娘も、願いをきちんと叶えてくれるはずがない。
だから俺は、神を信じていない。
第一、会ったことがない、それどころか見たことすらない相手を信じろというのが難しい話だ。それなら初対面の相手の方が、まだ少しは信じられる。
たとえ、それがどんな出会い方であったとしても。
「やあ、青少年。君は神を信じるかい?」
四月二十一日、木曜日。時刻はおそらく、午後九時を少し過ぎたあたり。
等間隔に点在する街灯が照らす、治安の良さだけが自慢の閑静な住宅街にて。
ひしゃげた右脚を引きずり、千切れた右腕を左手に持った状態で、まるで道でも尋ねるかのような気軽さで声を掛けてきた彼女に。
正義の味方ならぬ、正義が味方に。
女郎花庵音に――俺は出会った。