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【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません  作者: ゆうき


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第六十七話 最後の抵抗

「父上! ミトラと陛下は魔法で操られていただけでした! 彼らに手を出したのは、ルシア・ラーナー、ゲオルク・モンティスの両名です!」


「なんだと!? 兵達よ、その狐族の少女ではなく、今名前の挙がった者を捕らえよ!」


 結界の中だから逃げられないのに、必死に外に出ようと騒ぐ参加者の中に混ざっていたゲオルク様達が、とても焦った表情を浮かべていた。


「ずっとアイリーンに酷いことをしていて、挙句の果てにミトラにも手を出すとは、随分とおいたが過ぎる人達だ」


「なにカッコつけてんだい? その指輪があったら、魔法は使えないだろう?」


 王女様はやれやれと呆れながら、エルヴィン様の指にはめられた指輪を、簡単に取ってくれた。


「ありがとう、ミトラ。これで……僕も動ける!」


 エルヴィン様の体から魔力が溢れ、彼の体を風のようになって纏いはじめる。それを合図にするように、会場に貼られていた結界魔法が消えた。


「結界が……なるほど、そういうことか! はぁっ!」


 エルヴィン様の魔法が発動すると、結婚式に参加していた無関係の人達が、一瞬にして姿を消した。


 今のは、転移魔法だよね? 確か、かなりの高等魔法で、大きなものや転移の数を増やすほど難しくなるはずなのに、それをいともたやすく使うだなんて!


「アイリーン、さっきのをもう一度やってくれ! 結界を張り直すんだ!」


「わ、わかりました!」


 私は言われた通りに指輪に魔力を流し、再び魔法を発動する。


 ……そうか! ヴァーレシア先生は、犯人がわかったから、無関係な人を逃がすために、結界魔法を解除したんだ。それを汲み取ったエルヴィン様が、転移魔法をして逃した後、私に指示をしたってことだね!


 エルヴィン様の咄嗟の判断のおかげで、ゲオルク様達をこの場に閉じ込められたし、完璧と言っても良さそう!


「おのれ、ルシア……! ワシとミトラを操り、利用するなど断じて許さん!」


「わ、我々は何も知りません! 全て、その狐族の女が仕組んだ罠です! 騙されてはいけません!」


 あ、あれ……? ゲオルク様の必死に説得を聞いていると、なんだか本当に私達が悪いのではないかと思い始めた。


 ……ま、まさか……ルシア様の魔法が既に使われている!? そんなこと、させないんだから!


「お願い、私に力を!」


 先程と同じように、指輪に込められた魔法を使い、ルシア様の魔法を無効化すると、急に感じていた考えは鳴りを潜めた。


 よかった、またルシア様の魔法にはまるところだった。こんなに自然にかけられるのなら、王女様達が気づかないのも無理はない。


「ルシア、どうしてこのようなことをしたのだ!? 貴様、ラーナー家の栄光に泥を塗るつもりか!?」


「ゲオルクも、どうしてこんな愚かなことをしましたの? ミアとシンシアも、どうして止めなかったの……」


 ルシア様のお父さんと思われる男性が激昂し、ゲオルク様達のお母さんが力なく項垂れる。


 自分達は何も悪くない、子供達が勝手に起こしたことだと言わんばかりの反応だけど、そもそも親の教育のせいでゲオルク様達がこうなったのかもと考えると、この人達も加害者なような気がする。


「あ、あたし達……こんなの知らなかったの! あたし達は無関係だから!」


「その通りですわ、信じてくださいお母様!」


「ふざけるな、貴様ら! この俺様を陥れるつもりか!? 貴様らだって、今回の一件の話を聞いた時、大喜びで協力すると言っていたではないか!?」


「うるさいうるさい! ゲオルクお兄様、あの試験の時にあたし達を置いて逃げたの、忘れてないんだからねっ!」


 あの試験の後、いつも通りに接しているのを何度も見ていたから、もう仲直りしていたとばかり思っていたけど、壊れた関係を修復するのは容易いことじゃないようだ。


 まあ、ずっと信じていた人に裏切られて、危険に晒されたのだから、簡単に許せるはずもないだろうけど。


「ええい、見苦しい言い訳をするな! ルシア、貴様のような犯罪者など知らん! 貴様とは、親子の縁を切る!」


「そ、そんな……」


「ゲオルク、セシリア、ミア。あなた達が普段からアイリーンを虐げていたのも、最近学園での評判が著しく悪くなったのも知っています。結果、モンティス家に迷惑をかけておりましたが、それでも才能だけはあったから見逃していましたが……これ以上は看過できません。あなた達も、我が家から追放いたします」


 これだけの悪事を働いたのだから、絶縁や追放は当然の結果だろう。

 だというのに、四人は信じられないと言わんばかりに目を見開き、口をポカン開けた、何とも情けない表情を浮かべている。


「自分達の子供だけに罪を償わせるなど、なんと嘆かわしい! 我々王族を嵌め、長年に渡って築き上げてきた信頼を破壊する行為を、ワシらが見逃すと思っておるのか!?」


「はっ……? こ、国王陛下、一体何を……?」


「今回の件の処罰の一端として、ラーナー家から爵位を剥奪し、宰相の任を解任する! 当然、極刑も覚悟しておくのだな!」


「うむ、余も同じ考えだ。国家間の関係はもちろんのこと、余の大切な息子を不幸にしようとした罪は重い。モンティス家からも爵位を剥奪する」


 私達の前で、次々と悪人たちが裁かれていくが、同情の余地は全くない。それくらい、ゲオルク様達がしようとしたことは、罪が重すぎる。


「さあ、大人しく余の決定を受け入れ、身柄を拘束されるがよい」


「はっ……ははっ……俺様が、また負けたというのか? あの女狐に……全て、奴のせいだというのに……!!」


 兵士達に悪者達が次々と身柄を拘束される中、ゲオルク様は魔法で衝撃波を放ち、私達や会場の物を壁に叩きつけた。


「うっ……いた……くない?」


 あれだけ勢いよく壁に叩きつけられたというのに、どこを動かしても全く痛みがない。一体何があったというの?


「アイリーン、大丈夫かい!?」


「はい、どこも痛くありません」


「それはよかった。咄嗟に防御魔法を使ったんだけど、うまくいったようだ」


 なるほど、だからあんな勢いよく吹き飛ばされたのに、全然痛くないんだね。私は成すすべなくやられちゃったのに、即座に反応できるエルヴィン様は、やっぱり凄い人だ。


「さすがはあたし達を嵌めようとした悪人ね。まさか、こんな力技で対抗してくるなんて」


「うぅ、びっくりしましたぁ……エルヴィンさん、ありがとうございます」


 ソーニャちゃんや王女様も、吹き飛ばされはしたものの、エルヴィン様の魔法のおかげで、大きな怪我をしているわけではないみたいだ。


 でも、それ以外の人達は……先程の衝撃で意識を失ったのか、体から赤い液体を流しながら、ぐったりとしている。

 その中には、自分の家族であるはずのお母さんやミア様、シンシア様の姿もあった。


「アイリーン、貴様だけは……俺様の人生を狂わせたお前だけは、断じて許さん!」


「許さないですって……? ゲオルク様……いや、ゲオルク! 自分の家族や、私の大切な人達を巻き込んでおいて、よくそんなことが言えるわね! もうあなたの負けなのだから、潔く罪を受け入れて!」


「俺様は負けてなどいない! この俺様が、二度と幸せなど訪れないようにしてやろう!! この禁術を使ってな!!」


「あの魔力は……マズイ! 早くここから逃げないと! すぐに転移魔法を……くっ!」


 ゲオルクの体の中心に、物凄い量の魔力が集中する中、エルヴィン様が転移魔法を発動しようとするが、突然膝が折れて、その場に座り込んでしまった。


「エルヴィン、無茶だよ! さっきの転移魔法で、もうほとんどの魔力を使ってしまったんだろう!?」


「ははっ、なにを言っているんだいミトラ……僕はまだこの通り、ピンピンして……」


 エルヴィン様は、脂汗を流し、膝もガクガクと震わせながら立ち上がる。疲労が極限まで行っているのは、火を見るより明らかだ。


「ふはははは!! 逃げたって無駄だ!! この魔法を使えば、術者は灰となって命を落とすと言われているが……俺様はそんな馬鹿げた話など、軽く凌駕してくれよう!」


「ゲオルク様、素敵ですわ……やはり、私にはあなたしかおりません。ゲオルク様以外の人間などいりません」


「俺様もだ、ルシア。こんなことになってしまった以上、奴ら全員を地獄に叩き落とし、俺様達だけで、平和な地で幸せに暮らそうではないか」


 唯一先程の魔法で吹き飛ばされなかったルシア様……ううん、ルシアはゲオルクの手をギュッと掴み、頷いて見せた。


 この期に及んで、まだ自分達だけは幸せになろうだなんて、どれだけ自分勝手なの!?


「みんな、少しでも遠くに逃げるんだ! 僕がここに残って、少しでも彼の魔法を弱めてみるから!」


「そんな体で、なに格好つけてるの! エルヴィンも一緒逃げるんだよ!」


「……その必要はありません。私が……あの人を止めます」


 元はといえば、私があの人の婚約を受け入れてしまったことや、あの人の元から逃げてしまったことが原因だ。だから……この命をかけてでも、みんなを助けなくてはならない。


「アイリーン、君には無理だ……早くここから逃げてくれ!」


「出来る出来ないの問題じゃありません。絶対にやるんです! 私、もうあなたに守られているだけは嫌なんです! 絶対に、私が……守るんだ!!」


 私の強い決意に呼応するように、私の体が強い光に包まれる。それと同時に、今まで感じたことのないくらい、強い魔力が私の体を駆け巡っているのを感じた。


 この力は一体……? なんだかよくわからないけど、みんなを守れるならなんだって良い! お願い、私に力を貸して……!!


ここまで読んでいただきありがとうございました。


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