第六十六話 大切なお友達のために
私が指輪に魔力を込めると、指輪に嵌められていた赤い宝石がキラリと光った。そこから光はどんどんと大きくなり、会場を全て眩い光で覆うほどの強さとなった。
「な、何が起きた!?」
「きゃー!?」
招待された人達が騒然とする中、光は徐々にその力を弱めていき、やがて完全にその輝きが消えた。
すると、先程まで元気だった隣国の王女様と国王様の意識が無くなり、その場で倒れていた。
「ひゃぁぁぁ!? ゲオルクお兄様~! 何が起きたの〜!? なんか出れないし〜!」
「これは結界魔法か!? それに、あの女は……まさか、アイリーンか!? どうしてここに……陛下! あの狐族の女の仕業です!」
「なんだと!? 兵達よ、あの狐族の女を捕らえよ!」
事情を知らないこの国の国王様――つまり、エルヴィン様のお父さんが、兵を使って私を捕らえようとする。
号令に合わせて会場に入ってきた兵士は、二十人を超えるだろう。こんな人数を相手に出来るほど、私に力はない。
「アイリーン……! 待ってて、すぐに助ける!」
私の危機にすぐに気づいたエルヴィン様が、何とかしようと魔法陣をいくつも作るが、その全てが発動する前にひびが入ってしまい、粉々に砕け散ってしまった。
「くっ……魔法が上手く発動できない……!」
事情はわからないけど、今のエルヴィン様は上手く魔法が発動できないようだ。
それなら、なんとか私だけでこの状況をどうにかするしかない。
あれから毎日魔法の練習をしてるけど、初級魔法しか使えない私に、この状況を本当にどうにかできるのだろうか?
そんなことを思っていると、パチンッと指を鳴らす音が響いた。
そして……それから間もなく、文字通り目にも止まらぬ速さな一つの影が、私の前に現れた。
「えっ……そ、ソーニャちゃん!?」
「アイリーンさん、ここはわたしに任せてください……! わたしの大切なお友達に、指一本触れさせません……!」
いつも気弱なソーニャちゃんとは、まるで別人のような強い気迫を放ちながら、ソーニャちゃんは混乱する会場を、縦横無尽に駆け回る。
その速度はどんどんと増していき、兵士達をどんどんとかく乱させた。
ソーニャちゃん、いつの間にこんな魔法が使えるようになったの……!? あっ、もしかして……! この指輪の魔法の準備をしてる時にしてたのって、これの練習をしていたってこと!?
とにかく、この隙にエルヴィン様のところに向かおう!
「エルヴィン様!!」
「アイリーン!! 怪我は無いかい!?」
「はい、大丈夫です!」
まだ意識を取り戻さない王女様を抱き抱えるエルヴィン様の元に行くと、以前の冷たいエルヴィン様の姿は無く、私のよく知っているエルヴィン様の姿があった。
「君が動いてくれているのは知っていたが、まさかこんな大騒動になるとは思ってなかったよ。一体何をしたんだい?」
「話すとちょっと長くなるのですが……とにかく、エルヴィン様を助けに来ました! ヴァーレシア先生と話して、今日が一番いいってなったんです」
「そうだったのか。とにかく、この指輪を外してくれないかい? これをつけている人間は、魔法の発動を阻害されてしまうんだ。しかも、自分では取れない仕組みになっていてね」
エルヴィン様の薬指には、先程王女様と交換した指輪がはめられている。
これがあったから、魔法が上手く使えなかったのね。さっそく外して……って、なんか固くて全然動かないんだけど!?
「やはりダメか……自分では取れないから、他の人ならって思ったけど、恐らく術者にしか取れないみたいだ」
「そ、そんな……」
エルヴィン様の魔法があれば、この窮地から脱出できると思ってたけど、そんなに甘くはないようだ。
……出来ないことを悔やんでても、仕方がないよね。なんとか別の方法を考えないと……そう思って思考をグルグルさせていると、たくさん動き回っていたソーニャちゃんが、息を切らせながら私達の元へとやってきた。
「アイリーンさん、エルヴィンさん、ご無事ですか……!?」
「うん! みんな無事だよ! ソーニャちゃん、凄いよ! そんな凄い魔法が使えるようになってたなんて!」
「実は、わたしの魔法じゃないんです。これは、ヴァーレシア先生の肉体強化魔法でして……」
「そうなの? てっきり、私といない時に練習してたのばかり……」
「れ、練習はしていました。でも、それはこの魔法が発動している時の、体の動かし方なんです。何かあった時に、この力で時間を稼げって……」
なるほど、獣人の中でも犬族の身体能力はかなり高いから、それを活かしたかく乱作戦だったってことだね。
せっかくソーニャちゃんが体を張って作ってくれたこの時間を、なんとか有効活用しないといけないのだけど、良い方法が思いつかない。
そんな時、エルヴィン様の腕の中にいた王女様が、うぅん……と小さな声を漏らしながら、大きくて綺麗な瞳をゆっくりと開けた。
「ミトラ、目を覚ましたんだね!」
「……あれ、エルヴィン? どうしてあたし、エルヴィンに抱き抱えられて……って、なんであんたタキシード姿なんだ? あはははっ、想像の十倍は似合ってないわね!」
結婚式の間、どこか虚ろな雰囲気だったのに、今では元気で明るいお姉さんって雰囲気の王女様は、大笑いをしながらエルヴィン様のバシバシと叩いた。
エルヴィン様もそうだけど、王族の人って思ったよりも気さくな人が多いのだろうか……?
「み、ミトラ……君、覚えてないのかい?」
「そう言われても……」
王女様は、人差し指を顎に当てて考える素振りをした後、ポンっと手をたたいた。
「なんか、エルヴィンと結婚の約束をした夢を見ていたような気がするような?」
「それって……王女様、なんでも良いので、他に覚えている事はありませんか?」
「うーん……そういや、ここ最近であったことだけど、宰相の娘のルシアが、婚約者と一緒に、あたしとパパに面会した時があって……その時に、急に凄い眠くなって……それで、目が覚めたらあんた達がいたって感じ」
ルシア様とゲオルク様と会っていた? 急に眠くなって、そこから先の記憶が無い? それって……やっぱりそういうことだよね!?
どうしてそんなことをしたのかはわからないけど、どんな理由であれ許すわけにはいかない。早く今回の首謀者を捕まえないと!
ここまで読んでいただきありがとうございました。
読んでいただいた方々に、お願いがございます。5秒もかからないので、ぜひ⭐︎による評価、ブックマークをよろしくお願いします!!!!
ブックマークは下側の【ブックマークに追加】から、評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタッチすることで出来ます!




