第二十八話 シンシアとミアの敗北
■シンシア視点■
無様な撤退をさせられたワタクシは、苛立ちのぶつけ先を探すように、自分の爪を噛みながら歩いておりました。
「えっと……シンシア様、こんなことに巻き込んでしまってごめんなさい」
律義にワタクシにくっついてきた、エルヴィン様のファン達の一人の言葉を皮切りに、順番にワタクシに謝罪の言葉を述べてくる。
いつもだったら、優越感に浸って良い気分になれますが、今はイライラしているから、そんな毒にも薬にもならない言葉をかけてこないでほしいですわ。
……しかし、ワタクシは外では優等生のシンシア。ここで突き放したら、なんのために先ほど辛酸を舐めさせられたか、わかったものじゃありませんわ。
「こちらこそ、申し訳ありませんわ。ワタクシが未熟だったばかりに、エルヴィン様を取り返すことが出来ませんでした」
「そんな、お気になさらないでくださいませ! でも……学園長に目をつけられたら、下手したら退学になってしまうかもしれませんので、当分はエルヴィン様を遠くから眺めるだけにしておきますわ」
「ええ、それが最善かと」
今後の在り方について決めた彼女達は、もう一度ワタクシに感謝と謝罪を述べてから、トボトボと帰路についていった。
やっと面倒なのが離れていって清々しましたわ。ただ、この後に待っていることを考えると、溜息が出てしまうし、自分が失敗したことを再び突き付けられて、苛立ちをまた覚えてしまう。
「っ……!!」
ああ、悔しい! 悔しい!! 悔しい!! あの女狐が、良い気になってこの学園で過ごしているのが悔しい!!
それに、あんな無能だと思っていた女が、尊敬するお兄様より優れていただなんて、考えるだけで頭がおかしくなりそうですわ!!
「お兄様、いらっしゃいますか!?」
「あ、ああいるよ。入りたまえ」
結局苛立ちを解消できないまま、ワタクシは生徒会室で待っていたお兄様とミア、そしてお兄様の新しい婚約者であるルシア様の元へとやってきた。
今日ワタクシがしようとしたことは、お兄様は既にご存じです。ミアに至っては、ワタクシに話を振ってきてくらいだから、説明は不要かと。
「お姉様、首尾はどうだっ……うん、なんかあんまりよくなかった感じ?」
「そのようでございますね。シンシア様、落ち着いて、何があったか共有してくださいな」
「これが落ち着いてなんていられないですわ!」
ワタクシ達しかいないことを良いことに、ワタクシは机に何度も拳を振り下ろして、少しでも苛立ちを発散させる。
「うそっ、あたしの考えた作戦が失敗したってこと!? くやし~~~~!!」
「作戦はうまくいっていた! なのに、途中であのクソジジイが邪魔しに来て……!」
「クソジジイ? シンシア、それは誰のことだ?」
「学園長ですわ! たまたま通りかかったとかほざいて、ワタクシのことを脅して……!」
ワタクシは怒りで興奮したまま、先程自分が経験したことを話すと、お兄様は何か気にいらないのか、首を傾げておりました。
「妙だな? 確か今日の学園長は、いくつも会議が入っていて、外に出れる状況ではなかったはずだ」
それだと、あの場に学園長がいるのは、おかしいということですの? なら、あそこにいたのは誰?
「……なるほど、そういうことか」
「お兄様、なにかわかったの?」
「シンシア、お前……アイリーンを嵌めたつもりになっていたようだが、逆に嵌められたかもしれないぞ」
「な、なんですって!? どういうことですの!?」
「おそらく、学園長は本物の学園長じゃない。学園長の振りをしてシンシアを脅し、アイリーンの平穏を守ったんだ。こんなことをするのは……エルヴィンしかいない」
エルヴィンですって? それはありえませんわ! だってエルヴィンは、確実に邪魔になるのがわかってたから、ミアの作戦で離ればなれにさせたのですよ!?
「あたしの作戦で、エルヴィンを別の部屋に閉じ込めたんだよ~!? それに、この学園は魔法で被害が出ないように、建物や部品に強力な防御魔法がかけられてるんだよね!? どうやって脱出したわけ!?」
「認めたくないが、奴の力は俺様クラスだからな。俺様やエルヴィンなら、防御魔法を貫通して壊すなんて、造作もないことだ」
エルヴィンの魔法が、お兄様と最低でも同等の実力があるエルヴィンなら……いや、さすがにエルヴィンにも無理だと思って、作戦を採用したんですのよ?
「エルヴィンは部屋の壁を破壊し、アイリーンの救助に向かったのだろう。おそらく、シンシアが見た学園長は、エルヴィンが変身したものだ。あいつは変身魔法が使えるからな」
「それじゃあ、ワタクシへの脅しは、エルヴィン様の嘘でしたの!? なら、すぐにもう一回脅しを……」
「やめておけ。エルヴィンが学園長の姿をわざわざ使ったということは、このことを学園長が知っている可能性が高い。そうでなければ、勝手に学園長として発言したことを、問題視されるだろうからか」
ワタクシとしたことが、こんな簡単なことに引っ掛かってしまうだなんて……なんて屈辱ですの!?
ああ、頭がおかしくなりそう……早く帰って、この怒りを発散しないと! いくつかのおもちゃが壊れてしまっても、この際どうでもいいですわ!
「とにかく、しばらくは表立ってアイリーンを排除するのは控えろ。甚だ遺憾だがな……!!」
お兄様の決定は納得いきませんが、納得せざるを得ないでしょう。アイリーンを破滅させたのはいいものの、ワタクシ達まで共に心中するのは、御免こうむりたいですからね。
「あ、でもでも! エルヴィンが学園のものを壊したってことは、エルヴィンが罰せられるってことだよね~! それはそれで、面白くない?」
「確かに愉快ですが、それはどうでしょう? もし想定外の破壊なら、学園中が大騒ぎになっているかと」
ルシア様の言う通りですわね。騒ぎが無いってことは、先に学園側から破壊の許可を貰ったのでしょう。
せっかく一泡吹かせられると思ったのに……これはもう、完全にしてやられたと認めるしか……認める……ワタクシ達が、アイリーンとエルヴィンなんかに……?
「ぐっ……ぎぎっ……あぁぁぁぁぁ!!!!」
ついに怒りの頂点に達したワタクシは、拳のことなんて気にせずに机に拳を振り下ろした。
アイリーン、そしてエルヴィン! この屈辱、いつか絶対に何百倍にして返してやりますから、覚悟しておくことね!
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