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【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません  作者: ゆうき


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第二十六話 思わぬ助け

 エルヴィン様のために、そしてエルヴィン様との穏やかな学園生活を守るため、どんな苦痛でも耐えて見せる。そう決意をしながら、ギュッと目を瞑る。


 すると、私の体に耐えがたい激痛が……襲うことは無く、代わりにガラスが割れたような、甲高い音が聞こえてきた。


「……?」


 恐る恐る目を開けると、私の足元にあった魔法陣が砕け散り、跡形もなく消滅するところだった。


 まさか、シンシア様が魔法を中断させた? なんのために……? そんなことをする必要は全く感じない。

 ……なら、もしかして……エルヴィン様が!?


「私の魔法剣を、簡単に止めるだなんて、一体何者ですの!?」


「シンシア様、あそこから魔力を感じますよ!」


 ファンの一人が指差した先には、人がちょうど隠れられそうな茂みがあった。


 彼女の言っていることから、嘘の臭いはしない。なら、本当にあそこに誰かが隠れているということだ。


 誰かが、私のことを助けに来てくれたの? それとも、元々ここにいた人が咄嗟に隠れたとか?

 なんにせよ、何でもいいからこの状況を打破するきっかけになってほしいところだけど……。


「隠れてないで、出てきなさい。自分から出てこなければ、こちらから引きずり出しますわよ?」


「ほほっ、気づかれてしまいましたか」


「えぇ!? が、学園長!?」


 茂みから出てきたのは、つい最近の始業式で挨拶をしていた、学園長その人だった。それがあまりにも想定外の人過ぎて、声が裏返ってしまった。


「……あらあら、学園長ではありませんか。ごきげんよう。どうしてこのような僻地におられるのですか?」


「丁度近くを通りかかった時に、生徒達の楽しそうな声が聞こえましてな。こうして様子を見に来た次第です。それがまさか、こんなことが行われていたとは。私は大変悲しいです」


 神聖な学園の中で、こんな野蛮なことが行われているのを知ったら、悲しくなるのも無理はない。

 自分で引き起こしたことではないとはいえ、とても申し訳なく思ってしまう。


「生徒達で交流するのは結構ですが、度が過ぎたものを見逃すわけにはまいりませんな」


「あら、なにか誤解してませんこと? ワタクシ達は、正義の名のもとに行動しているだけですの」


 あ、あまりにもその嘘は酷すぎる……まるで生ものが腐ったような臭いがして、思わず吐きそうになってしまった。


「ご理解いただけたなら、ここを去っていただけますでしょうか? ああ、もちろんこのことは他言無用でしてよ」


「ええ、ええ。もちろん言いませんとも。これからなにも起こらないことを言いふらしても、始まりませんからな」


「邪魔をする、ということですの? お言葉ですが、ワタクシ達モンティス家が、セレクディエ学園に援助をしているということを、忘れたわけじゃないですわよね?」


 援助をしていたなんて、全然知らなかった……ここでその話を持ち出すってことは、もう脅す気満々ってことじゃないの。


 私のせいで、憧れの学園に迷惑をかけるなんて、冗談じゃないわ。


「学園長、私は大丈夫ですので」


「心配は無用ですぞ」


 学園長はずっと閉じていた目を開眼させる。すると、尻餅をついてしまいそうなくらい、強い圧を感じた。


「支援をやめたいのなら、それで結構。その代わり、我々も相応の対処を取らせていただきますよ。例えば……アイリーンへ行った、数々の行いについてとか」


「なっ!? どうしてそのことをご存じですの!?」


「知った過程など、些細なこと。それよりもあなたが気にすることは、我々が敵に回ってしまった時の、ご自身やご実家への影響だと思いますがね」


 さっきまで余裕たっぷりだったシンシア様の顔に、焦りの汗が流れ始める。


 今まで私に行ってきたことは、お世辞にも良いことだとは言えない。それを公表されてしまったら、シンシア様達の信頼が、一瞬にして潰えてしまうだろう。モンティス家への影響だって、大きなものになるだろう。


「あのーシンシア様、それって一体何のことですか?」


「あなた達には関係のないことだから、黙ってなさい!」


「ひぃ!?」


「学園長、こんないたいけな生徒を脅すだなんて、何が目的なんですの!?」


「我々は、学園が平和であればいいのです。だから、学園に荒波を立てるようなことは、控えていただきたいだけです。それが理解できたのなら……はやくアイリーンの前から立ち去れ、愚か者達よ」


「ちっ……! あなた達、行きますわよ!」


 シンシア様は忌々しそうに舌打ちを残して、ファン達と一緒に去っていった。


 さすがに私のことが嫌いでも、自分達の立場を悪くしてまで強行するのは嫌だったみたいだ。なんにせよ、本当に助かった……。


「お怪我はございませんかな?」


「はい、ありがとうございます、学園長」


「いや、当然のことをしたまでさ。なにせ、大切なアイリーンが危機に陥っていたのだから」


「……えっ? 今の声って……!?」


「おっと……いや、終わったのだからもういいか」


 突然学園長の声から、とても聞き馴染みのある声に変わったことに驚いている間に、学園長がパチンっと指を鳴らす。すると、学園長の体が光に包まれていき……エルヴィン様の姿に変わった。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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