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【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません  作者: ゆうき


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第十七話 合否の発表

 現実から少しでも背くように、恐る恐る半目になりながら紙を見ると、そこに書いてあったのは……。


「……ごう、かく……?」


 念のために、目をゴシゴシと拭いてからもう一度確認したり、夢かどうかほっぺたをつねってみたりしたけど、しっかり痛かったし、合格の二文字は変わっていない。


「うそ……わ、私が……合格? 特待生??」


 自分で奇跡が起これと思っておきながら、いざ本当にその奇跡が起こったら、現実を全く受け入れられなかった。


 そんな私に出来ることは、ただ力なくぼんやりと、合格通知の紙を見つめながら、魚みたいに口をパクパクさせるだけだった。


「っしゃぁぁぁぁぁ!! どんなもんじゃおらぁぁぁぁぁぁ!! 俺達の娘は最高なんじゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 私達の耳を壊しに来てるような、喜びの大絶叫を上げるパパの声のおかげで、私はようやく現実に戻ってこれた。


 私、本当に合格できたんだ……ずっと通いたくて、でもずっと諦めていたセレクディエ学園の生徒に……な、なれるんだ……うぅ、嬉しすぎてわけがわからない……。


「アイリーン、おめでとう! よかったわね……これで、憧れの学園で勉強が出来るわね!」


「うぉぉぉぉぉぉ!! 高ぶる気持ちが抑えきれねぇぇぇぇぇ!! 仕事仲間に、早く教えてやらねえと!!!!」


 パパは、何故か着ていたシャツを脱ぎ捨ててから、家の扉を壊す勢いで飛び出していった。


「本当におめでとう、アイリーン。これも、君が沢山努力した成果だね」


「なにを言っているんですか……エルヴィン様が、ずっと手伝ってくれた……お、おかげ……」


 今頃になって、積もりに積もった喜びが爆発して、涙となって溢れてきた。声も震えてしまって、まともに喋ることが出来ない。


「私からもお礼を言わせてください。エルヴィンさん、娘のために……本当にありがとうございます!」


「そんな、僕は大したことはしていませんよ。それよりも、一切弱音を吐かずに頑張り続けたアイリーンを褒めてあげてください」


 泣いている私の頭に、エルヴィン様の手がポンと乗った。


 いつもだったら、こんなことをされたら真っ赤になっているところだけど、今の私にはそんなことなんて気にならなかった。


「それはもちろんです。ですが、それと同じくらい、エルヴィンさんに感謝をしたくて」


「あなたの感謝は、もういただきましたよ。さて、無事に合格できたところで……アイリーンのお祝いパーティーの準備をしようか」


「えっ……わ、私の……?」


 ずびっと鼻を小さく鳴らしながら、腫れぼったくなった目をエルヴィン様に向ける。


「ああ。この国で一番大きな会場を借りて、最高級の祝いの場を用意しようと思うんだけど、どうだろうか?」


「えぇ!? それはいくらなんでも、やりすぎですって!」


「やりすぎ? そんなことは無いと思うよ。むしろ、この程度では全く足りないと思って、多くの国から国王や大臣といった著名人を呼ぼうと思ってるくらいだけど……お義母様も、これくらい普通と思いますよね?」


「え、え~っと……すみません、私もさすがにそれは、ちょっと」


 あまりにもスケールの大きい話すぎて、ママの笑顔が若干引きつっている。


 そうだよね、私の感覚がおかしいわけじゃないよね。いくらエルヴィン様が貴族だからって、そんな大掛かりなことが出来るとは思えない。

 そんなことができるのは、この国の王家の人ぐらいの権力が無いと、さすがに無理だと思う。


 ――結局その後、私とママの必死の説得の甲斐があって、エルヴィン様の行きつけのレストランでの食事をするということで落ち着いた。


 まあ……そのレストランがあまりにも高級なところなうえに、完全に貸し切った状態だったから、私とママは、終始緊張しっぱなしだった。

 唯一、せっかくのエルヴィン様の好意なんだから、食べないと勿体ないってたくさん食べたパパの度胸は、やっぱり凄いと思う一日でもあった……。



 ****



「ふわぁ……! 憧れのセレクディエ学園の制服……!」


 待ちに待った初めての登校日。私は事前に作って送られてきた制服にはじめて袖を通し、姿見の前でくるっと回った。


 ゲオルク様達が着ているのをただ眺めるしか出来なかった制服を、私が着られる日が来るだなんて……夢みたいだ。


「素敵よ、アイリーン」


「ありがとう、ママ! パパもお仕事がなければ、見せてあげられたのに……」


 残念ながら、今日は既にパパは仕事で家をあけているから、制服のお披露目を見せることができない。


 昨日のうちに着て見せてあげるって言ったんだけど、汚れたら大変だって言って、頑なに断られてしまったんだ。


「帰ってきたら、見せてあげればいいわ。きっと大喜びしてくれると思うわよ」


「また上半身裸で飛び出したりしないかな……喜んでくれるのは良いけど、さすがに過剰すぎるよ」


「それだけ嬉しかったってことよ。パパね、アイリーンが小さい頃から、ずっと心配していたのよ。あいつの将来が、俺達のせいで潰れないかとか……こんな貧乏な家で引きとって幸せなのだろうか……そんなことを、よくぼやいてたの」


「パパ……」


 私のことを心配してくれているのは、知っているつもりだった。

 でも、普段はとても明るくて豪快な人だから、まさかそんなに責任を感じていただなんて、知らなかった。


「帰って来たら、ちゃんとパパに教えてあげなくちゃ。私はパパとママに拾われて、ここの家族になれたおかげで、世界一幸せだって!」


「ええ、きっと喜ぶと思うわ。だって、私がこんなに嬉しいのだから、パパも同じに違いないわ」


 えへへ、と笑いながらママと話していると、家の外から馬車の音が聞こえてきた。


「あら、今日も迎えに来てくれたのね。本当にあの人は、アイリーンにお熱ね~」


「ちょっと、からかわないでよ!」


「そんなこと言っちゃって、嬉しいのバレバレよ」


「う~~~~っ!!」


 ママの視線の先には、揺れているモフモフの尻尾がある。それを見れば、私の感情なんて一目瞭然だ。


 この尻尾自体は好きだけど、自分の気持ちが勝手に反映されるのは困りものだ。モフモフを維持するための手入れも大変だしね。


「アイリーン、エルヴィンだよ。いるかい?」


「今行きまーす!」


 ノックされた玄関を開けると、私と同じセレクディエ学園の制服を着たエルヴィン様の姿があった。


 わざわざ迎えに来てくれるだなんて、申し訳ないともう反面、嬉しく思ってしまう。これじゃあ、また尻尾が勝手に揺れちゃうよ。


「おはよう」


「おはようございます」


「制服姿、良く似合っているね。アイリーンは何を着ても似合ってしまうだろうから、当然といえば当然か」


 エルヴィン様ってば……隙さえあれば褒めてくるのはやめてもらいたい。ドキドキしすぎて倒れて登校できなくなったら、笑い話にもならない。


「と、とりあえず行きましょう! ママ、行ってくるね!」


「ええ、いってらっしゃい。エルヴィンさん、アイリーンのことを、よろしくお願いします」


「ええ、お任せください。アイリーン、僕の手を取って」


「は、はいっ」


 エルヴィン様に手を引かれて馬車に乗りこむと、ゆっくりと動き出した。


 たくさん喜んで、たくさん祝福してもらったけど、これがゴールというわけではない。むしろ、ようやく夢へのスタートラインに立ったにすぎない。


 私は二年生に編入する形だから、セレクディエ学園で過ごせるのは二年間。この二年間で勉強も魔法の上達して、必ず宮廷魔術師になるんだから!

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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