第十三話 ゲオルクの敗北
■ゲオルク視点■
「くくくっ……あーっはっはっはっはっ! いやぁ、愉快愉快!! こんなに笑った日は、後にも先にも来ないだろうな!!」
無事に試験の手伝いを終えた俺様は、試験中に見た最高の光景を思い出しながら、最高の気分に酔いしれていた。
なぜなら、あれだけ俺様に偉そうにしていたアイリーンが、魔法の実技試験で醜態を晒し、顔を真っ青にして帰っていったんだぞ? これが笑わずにいられるか! あぁ……最高の気分だ!
「さて、さっさと帰って、この最高の話を我が愛しの妹達と婚約者に教えてあげなければ……む?」
帰りの準備を終えて廊下を歩いていると、先程の魔法の実技試験で試験官をしていた教師達が、真剣な表情で話をしていた。
その中にいた、アイリーンの実技試験の担当をしていた試験官が、俺様に声をかけてきた。
「おや、ゲオルク君。本日は率先して試験の手伝いをしてくれて、ありがとうございます」
「生徒会長として、当然のことをしたまでです。ところで、随分と真剣に話していたようですが」
「本日受験した、アイリーンという女性のことですが……」
おや? おやおや? どうやら面白そうな話がまだ転がっているようではないか! さっさと帰ろうと思っていたが、これは予定を変更せざるを得ないな!
「別室から彼女の試験を拝見していましたが、なんとも酷いものでしたね! あんな散々なのは、セレクディエ学園が創設されて以来、初めてなのでは? まったく、あんな女狐が受験をするなんて、それだけで我が学園の尊厳が傷つけられてしまいますよ!」
「……君が彼女に対して、どのように思っているかはさておき。これを見てください」
「これは、筆記試験の結果……? な、これは……!?」
筆記の結果をまとめた紙の一番上……つまり、筆記試験のトップの名前には、アイリーンという名前が記載されていた。
それも、二位にかなりの差をつけての、堂々たる一位で、ほぼ満点に近い。
「セレクディエ学園の試験は、そこらの学園の物とは比べ物にはならないほど、難解なものを用意しています。だというのに、ほとんど満点に近い点数……まさに学園が始まって以来の、天才と言ってもいいでしょう」
バカな、そんなはずはない! 確かにアイリーンには、俺様がルシアと出会うまで、俺様に相応しい女になるように、毎日無理やり勉強をさせていた。
だが、それでも今回の試験でほぼ満点を取れるなんて、どう考えてもあり得ない!
「こ、こんなの不正ではありませんか!? カンニングをしていたとか!」
「疑いたくなる気持ちはわかります。しかし君も知っている通り、我が学園の試験に際に導入されている監視魔法は、一切の不正を見逃しません」
「…………」
それを言われてしまうと、これ以上何を言っても無駄だろう。それほど、監視魔法の性能は高いものなのだ。
「まあ、こちらに関しては、とんでもないことではありますが、勉強すれば不可能ではない領域です。しかし、問題はこちらです」
「これは、実技試験の時に測っている魔力測定値の表……はっ……はぁ!? そ、測定不能!?」
「ええ。彼女の魔力は尋常ではありません。この結果が、それを物語っています」
「け、測定の魔法陣が正しく機能していなかっただけなのでは……?」
「その後の受験生は、問題なく機能していましたので、それはないでしょうね」
こんなの、信じろと言う方が無理だろう。子供でも使えるような魔法すら使えない出来損ないの女狐の体に、こんな魔力が秘められていたなんて……!
入学当時、主席だった俺様の数値など、足元にも及ばないなんて……いや、筆記試験だって……あいつは、俺様よりも上をいっている……!
「そうか、わかったぞ! あいつは狐族だから、人間よりも有利だったんだな!?」
「種族によって、運動面や魔法面で得意不得意があるのは事実ですが、狐族がここまで魔力に秀でている種族とは聞いたことがありません」
「なら……純粋な、アイリーンの才能……? 俺様が、あの女より劣っているというのか……!? 冗談じゃない! いくらとてつもない魔力を持っていても、それを使いこなせないようでは、宝の持ち腐れではないか!」
これがアイリーンへの怒りなのか、才能を与えた運命への怒りなのか、自分が劣っていることへの怒りなのか……とにかく怒りで腸が煮え繰り返りそうになっていた。
「その通り。しかし、このような金の卵を見逃したら、学園にとって大損害になるかもしれません。なので、この件については学園のお偉い方を交えて会議をし、慎重に検討しようと思ってるんですよ」
「それが通れば、アイリーンは晴れて合格して、特待生に……?」
「それはわかりません。あくまで彼女の才能をどう評価するか決めた後に、他の受験者の結果も合わせて、合格者を決めますからね」
「…………」
俺様は押し黙ったまま、トボトボと外へ出ていった。
さっきまで最高の気分だったのに、今は最悪なんて可愛いと思えるくらい、俺様の気分は悪くなっていた。
散々見下し、虐げてきたアイリーンが、俺様よりも優秀だったなんて……そんなの、そんなの認められるか!
「お帰りなさい、ゲオルク様……そんなに怒って、どうされたのですか?」
「うるさい! 早く馬車を出せノロマ!!」
「は、はいぃ!」
迎えに来ていた御者に苛立ちをぶつけながら、馬車に乗りこんだのはよかったが、怒りは一向に収まる気配がない。
「くそっ……くそっ……くそくそくそくそくそくそくそ……くそがぁぁぁぁぁぁ!!!! 俺様は絶対に認めねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
どうしても現実を受け入れられない俺様の叫び声は、辺りにむなしく響き渡るだけだった――
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