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詐欺師、王立魔法大学に忍ぶ

 人間界と魔法界の交流が始まって1世紀。


 トーキョーの母子家庭に生まれ、すくすく育った俺は今絶賛追われている。


 魔法界で。


「おい!あいつ捕まえろ!」

「誰か止めてくれ!」

「しょうもねえイカサマしやがって!」


 タトゥーを首まで彫ったイカつい男3人ばかりに追いかけられながら、俺は振り向いて舌を出してやった。


「はっ、そのしょうもないイカサマに引っかかって有り金全部賭けたやつはどこのどいつだよ!自己責任を俺に押し付けるのやめてほしいね!」

「なんだとゴラァ!」


 魔法界の国々の中で日本によく似ており、言語も日本語に近いと言う理由でハワイに並んで日本人に人気の観光先である、このリー連邦の首都は街並みまで東京によく似ている。


 大通りは広いものの裏路地に入れば車が通れないほどの狭さで、すぐ迷ってしまう入り組み方をしているところなんか、俺が育った新宿区百人町にそっくりだ。


 大通りからシュッと左に曲がり、裏路地を駆け抜けるが、煽りすぎたのか、後ろから本気の殺気が漂ってきた。


(これはマズイ)


 パッとまた右に曲がると、目の前には高い茶色のレンガの壁がそびえ立っていた。


(しまった、行き止まりだ)


 後ろから男たちが追いかけてくる気配がする。捕まったら多分腕一本くらいは持っていかれそうな勢いだ。


 捕まってボコられるくらいなら、と覚悟を決めた俺はアイツらから巻き上げた金貨を丁寧に革ジャンの内ポケットにしまい、バスケ部だった中学時代の脚力を活かして横の壁を蹴って飛び上がった。


 茶色いレンガの塀のてっぺんをしっかりと掴むと、そのまま蹴り上がって飛び越える。


 間一髪だったようで、俺が着地したタイミングで塀の向こうから「アラシはどこ行った?」「ここは行き止まりのはずだが」という会話が聞こえてきた。


 ところで、ここはどこなのだろう。あの茶色いレンガの塀や目の前に建つ建物は少しワセダ大学と似ているような感じもある。


「おい、いたぞ!」


 パッと後ろを振り向くとさっきのいかつい男が塀を登ってきているではないか。


 よくあのビール腹で登れたな、ああだから残り2人を足場にしてコイツだけ登ってきたのか、などと思っている間にどんどん距離を積められている。


「すごいねおじさん、運動神経良いんだ?」


 俺が笑顔で褒めるとその男はますます青筋を立てて猿叫した。


「殺すぞクソがキィ!」


 俺は笑顔のまま軽やかに地面を蹴り、あっちこっちをめちゃくちゃに駆け回る。

 目の前にあった扉を開け、中の階段をむちゃくちゃに駆け上り、唯一鍵がかかっていなかったドアにとりあえず滑り込むと、ようやく俺を追う気配が消えた。


 アイツは俺を見失ってくれたようだ。ほっと息をついて胸に手を当てると、ちゃんと金貨の重みがそこにあった。


 ところで、本当にここはどこなのか?周りを見渡したのと同時に、後ろから絶叫が聞こえたような気がした。

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