9話
サラマンダーはまたしても炎のブレスを吐いてきた。
俺はまた「マテリアル」で壁を作成し、身を隠す。
「くっそ、この状況でドラゴンとやりあうなんてな」
俺はそう呟きながら、スキル表で使える魔法を確認する。
俺の知っているドラゴンの知識だと、ドラゴンは魔法が効きにくい。
全身に纏う鱗の影響で効果が薄いのだ。ただ、あくまで効果が薄まるだけでダメージは入る。
そうして、物理耐性も高い。鱗は硬く、そこらの剣では弾かれるのが関の山だ。
とりあえず、動きを封じたい。あっちこっち飛び回れられたら、鬱陶しい。
下手を打てば、あのブレスで丸焦げになる可能性がある。
俺はとりあえず、攻撃魔法の「ウォータラ」とアドバンス魔法の「カバーラ」で自身の表面に水の防護壁を作成した。
これで、もしブレスを食らっても一度は耐えられるはずだ。
だが、問題は解決していない。
まずは、ドラゴンの翼をどうにかしたい...動きを止めて、究極魔法でトドメをさすしかない。
何か動きを一時的に止められるものはないか?
俺はまた魔法を探し始める。
そこで俺はいい魔法を2つ程見つけた。
まず、1つは攻撃魔法「グラビラ」だ。これは重力魔法で、対象者付近に向けて高負荷の重力を与える魔法だ。
そうして、もう1つはアドバンス魔法の「スローラ」だ。これは相手に重量を欠け、動きを鈍くする魔法だ。
1つ目を使うのはやめておくことにした。というのも、ドラゴンの付近にはさっきのおばあさんがいた。
どうしてだか、あのおばあさんは死なせたくない...
そのため、2つ目の魔法を駆使してなんとか、サラマンダーの動きを封じたい。
「ドラゴンさん、やめてください!もう、暴れないでください!?」
俺が必死に対策を考えていると、どこからか聞き覚えのある女の声がした。
俺は少し身を乗り出し様子を見る。
異様な光景だった。
おばあさんはサラマンダーの真下で震えていた。
おばあさんの隣にツインテールの女の子がドラゴンに話しかけていた。
「メルル!?」
俺は思わず叫んだ。俺はその女の子を知っていた。
彼女はギルドの受付嬢だった。以前からこんな俺にも丁寧に接してくれた唯一の女の子だった。
「その声は...マキシムさん!?」
「そ...そうだ、どうして君がこんな所に!?」
「色々あったんです!説明するの難しいですけど、街でドラゴンさんが現れて、私が召喚魔法で出した王冠をドラゴンさんの頭に載っけたら、ドラゴンさんが言う事を聞いてくれるようになりました!」
「よくわからないな。そもそもサラマンダーが君の言うことを聞くんだ!?というか、今言うこと聞いてないじゃないか?」
「サラマンダー??ドラゴンさんと知り合いなんですか?もしかして…」
メルルが言い終わる前に、サラマンダーは空高く飛び立った。
何か嫌な予感がする。
俺は急いで壁から身を乗り出し、メルル達に向かいながら、叫んだ。
「メルル!?そのお婆さんを連れて早く逃げろ!?」
「マキシムさん!?後ろ!!」
メルルの声で俺は急いで振り返る。だが、遅かった。
サラマンダーは大きく口を開け、ブレスを吐き出した。
「マテリアル!!」
俺は背中にサラマンダーのブレスを受けながら、壁を作る。
俺は急いで、壁の後ろに隠れる。
危なかった...
もし、防護壁がなかったら終わっていた...
俺のところにメルルがやってきた。
「どうしてこっちにきた?」
俺はメルルに尋ねる。
「マキシムさんに伝えないといけない事がありまして!!」