5話
「メ・・・メルト!!」
父は叫び声をあげる。
メルトは父の方に目を向けるが、力なく倒れ込みそのまま息をしなくなった。
「マキシム!!貴様ああ!!」
「次はあんたの番だ」
俺はメルトの死体を横目に昔の記憶を思い出していた。
こいつはいつも俺の事を馬鹿にしていた。
出来損ないの俺を見つめる目は冷たく、俺たち兄弟の間にも次第に亀裂が入りついには会話もしなくなっていた。
「メルトおおおおお!!」
父は雄叫びをあげる。メルトはピクリとも動かない。
「そんなに・・・そんなにメルトが大事か!?」
俺は声を荒げる。その時、ふと俺はある事を思い出した。
「もっとあんたを苦しめる方法を思いついた」
俺はにやりと笑い、メルトの死体を拾い上げ、えぐれたみぞおちに右手を突っ込んだ。
「マテリアル」
そう俺が詠唱を行うと、メルトの中で何かが形成される。
俺がメルトから手を引き抜くとそこには剣が握られていた。
メルトの背骨を元に形成された剣だった。
「名付けてメルトソードって感じか・・・」
俺はメルトソードを振り回す。風を切れる音が聞こえてくる。
切れ味は悪くなさそうだ。
「な・・貴様・・・マキシム!!どこまで我が一族を侮辱するつもりだ!?」
「あんたが俺をこうさせたんだ。育成能力がなかったんだな」
俺は走って、父との間合いをつめる。
父は身構え、魔法を詠唱する。
「マテリアル」
そうして、彼の右腕に炎が集まり、赤い炎の盾が出来上がっていた。
俺は勢いよく、メルトソードを振り下ろす。父はそれを盾で受け流し、左手を俺の腹に向ける。
「マグマム」
父は詠唱を行う。この魔法を俺は知っている。
これはマグマライトの下位互換の魔法で、マグマの上位魔法だ。
マグマの塊を対象物に弾き出す魔法だ。
俺は「フィジカ」で身体能力を強化していたので、メルトソードで弾き飛ばし、容易に避けることができた。
「何でこんな下位互換の魔法を?舐めてるのか?」
「はあ・・はあ・・」
父は息が上がっており肩で息をしていた。
そうか。
サンライト一族は太陽のエネルギー源にしている。
今は真夜中、どうやらエネルギー切れを起こしているようだった。
「ガッカリだよ。あんたには」
俺は「ビジュアル」で自分のスキル一覧を確認する。
もう終わらせよう。
俺は指でスワイプしながら、魔法を探した。
もうスワイプできない最後のページまで行った時に、一つ気になる名前を見つけた。
そこには「メテオライト」と書かれていた。
アイコンには3つほどの隕石が落ちている絵で、
縁は赤くなっている。
攻撃魔法だ。しかもメテオの最上級魔法である。
アイコンをタップして中身を確認するが、やはり俺が思っていた魔法である。
「お前なんぞに負けん。我がサンライト一族の誇りを掛けて私はお前をここで倒さねばならない」
父はポケットからエリクサーを3本取り出し、蓋を乱暴に開ける。まるで、やけ酒でもするかのようにエリクサーを飲み、空き瓶をそこら辺に投げ捨てた。パリンと割れる音がする。
「薬に頼っていちゃ、もともこうもないぜ」
「黙れ!いくぞ・・・」
父はそう言って、両手を叩き地面に両手をつける。
「私の究極魔法・・・マグマライト!!」
マグマが煮立ち、俺の周りに吹き出し始める。
俺は呆れて、ため息が出た。
最後の最後までこの魔法に頼るのか・・・
「老ぼれが・・・くたばれ」
そう言って、俺は空に手を広げ、詠唱を行う。
「メテオライト」
空から一筋の光が見えた。
流れ星のように光がこちらに向かってくる。
それは次第に姿を表しはじめる。巨大な隕石が燃え広がりながらこちらに向かってくるのだ。
「こ・・・これは」
「あんたの終わりだ」
隕石は父に降り注ぎ、爆発が起きた。
俺は爆風で目を瞑る。土煙が当たりを覆った。
サンライト一族の家があった箇所は大きなクレーターとなっていた。
俺は瓦礫の山を押し除け、父の死体を探した。
すると、瓦礫の底から、茶色いバスローブが見えた。
「お・・終わった」
俺はその瓦礫には触らずにその場を後にした。