10話
「え...」
と俺は呟き辺りの様子を伺う。
全ての動きが静止していた。鳥は空中で羽を広げたままで、屋台の店主は鍋から弧を描いた状態で具材が宙に浮いていた。
「な...なんだこれ」
俺がメルルとシャウロの方を向くと彼女達も微動だもしない。
「メルル!?シャウロ!?」
俺が彼女達の前に立ち、大きく手を振ったり、大声を出しても反応していない。完全に静止している。
「無駄だよ。ここで動けるのは君と僕だけだ」
俺は声の方に振り向く。そいつは屋台の積荷の上に片膝を抱えながら座っていた。
「誰だよお前?」
と俺が尋ねる。
「ビースト化はしっかり見れたかい?」
「何でそれを知っている?」
「僕が仕組んだんだ」
「一体何のためにそんな事?」
そう俺が尋ねると謎の男は、にやっと笑った。
気づくとそいつは俺の背後に佇んでいた。
「まあいいや、それより気をつけた方がいいぜ。異世界転生、これはやっかいだぜ。これは一種の侵略行為に近いかもしれない。次々と人々の元に異世界転生が行われていくんだぜ?やばいと思わない?」
「じゃあ、どうすれば止められる?そもそも何が原因で起こっているんだ?」
「落ち着けよ。物事はいつでも順番が大切だ。近道は危険だぜ?おおっとそろそろ時間だ」
「待て。お前の名前はなんて言うんだ?」
そう俺が尋ねると男は再びにやけて姿を消した。
そうして、また違う場所に現れて、俺の肩を組んだ。
「まだ、その時じゃない」
そう言って、男は消えた。男が消えたのを合図に時間が再び動きだした。
「どうした、マキシム?すごい汗だぞ?」
シャウロが心配そうに俺を見つめていた。
「い、いや何でもない」




