8話
「いつまでそうやって人の体で遊んでるつもりだ?」
俺が目を覚ますと、目の前に鎖で繋がれた俺がいた。
もう一人の俺は物凄い眼光で俺を睨んでいる。
「お前は...誰だ?」
と俺は尋ねる。
「お前こそ誰だ?人の体、勝手に乗っ取りやがって」
「俺がお前の体を乗っ取っただと?」
「ああ、そうだ。急に人の体に入り込みやがって...この偽善者が!!」
「何を言ってるか分からないな」
「とぼけやがって。早く俺の体を返せ。俺にはまだやる事がある」
そういってもう一人の俺は暴れ出した。鎖がガシャガシャ鳴り響く。
「やる事?何をだ?」
「皆殺しだ。」
「皆殺し?なんでそんな事?」
「そんな事?俺が受けた心の傷を知ってそんな事を言ってるのか?お前は?」
「殺す必要がどこにある?」
「俺は会う人間全てに裏切られた。これは復讐でもあり、俺が生きてきた人生に対する一つの答えだ。そうする事で俺は自分を肯定できる。お前はそんな俺を否定するのか?」
「裏切られたのなら裏切った奴だけ殺せばいい」
「偽善者が...それじゃ意味がない」
「なぜ?」
「まあいい。どうせ直ぐに体は俺の元に返ってくる。それまで好きに遊んでろ。偽善者」
もう一人の俺がそう言うと、暗闇が俺の背後から現れ、俺のいる空間を囲っていく。
そうして、俺は暗闇に包まれた。
「あ、マキシムさん起きました?」
メルルの声で目が覚めた。
どうやら俺は横になって眠っていたらしい。
ん?なんだか枕元が柔らかく、暖かい。触ると弾力のある感覚がした。
「ひゃっあ!」
とメルルが変な声をあげる。
「おい、マキシム!セクハラだぞ!!」
とシャウロが叫ぶ。
え?俺はもう一度感触を確かめる。
どうやら、俺はメルルの太ももの上で眠っていたらしい。
「あ、ごめん...メルル!!」
俺は急いで起き上がり、謝罪した。
「べ...べつに大丈夫ですよ?お疲れだったらもう少し眠ります?」
そう言ってメルルは太ももを軽く叩いた。
俺はメルルの太ももを見つめる。
ものすごく寝心地が良い感触だった。
俺は自分自身に問いかける。
や...やましい気持ちは...ないよね?
うん。疲れてるし、もう少しだけなら...
俺がメルルの言葉に甘えようとした時、馬車が大きく揺れた。
「すみません、石ころふんだみたいです」
運転手がそう謝った。
「良かった、何事もなくて。メルル大丈夫、さっきはよく眠れたから」
「そうですか、わかりました!また眠くなったら言ってください!!」
「ああ」
そう俺が言うと、また馬車が揺れた。そうして、俺はその衝撃で向いに座っていたシャウロに突っ込んだ。
「おふ」
と俺は変な声をあげた。
「そうか...マキシム。太ももより、胸の方が好きみたいだな」
そう言ってシャウロは俺の頭を撫でてくれた。
何だかいい匂いがするし、柔らかくてふんわりしている。
頭の重さを吸収してくれる。
「マキシムさん!!駄目ですよ、そういうの!!」
「い、いや。わざとじゃない!!」
俺はシャウロの胸にうずくまりながら否定する。
「じゃあ、もうやめるか?」
そういって、シャウロは俺の頭をまたよしよししてくる。
わ、悪い気分じゃない。
「え?」
「マキシムさん!!」
そうこうしてるうちに、俺たちはバルべニア帝国に帰ってきた。そうして、ギルドにクエストの報告に向かったのだった。




