4話
「お前ら...いい匂いがする。まなみ、もうすぐ会えるよ...」
「こ...こいつ魔獣か?」
「い...いえ、ちがうと思います」
メルルは震えながら首を振っていた。
よく見ると両手の爪が異常に長く太い。多分あれで体を引き裂かれたら、内臓までいきそうなほど鋭い爪であった。
俺は直ぐさま、攻撃魔法の「ファイア」を詠唱する。
俺の右手から、火の玉が獣人に向かって放射した。
しかし、獣人は素早くしゃがみ、両手両足で、右の壁に向かってジャンプし、
その先の壁を蹴って、こちらに向かってくる。
俺は直ぐさまアドバンス魔法の「フィジコ」で敵の攻撃をすんでの所でかわす。
しかし、獣人の狙いは俺ではなかった。
獣人はメルルを攻撃のターゲットにしていた。
「しまった!?」
しまった!?
俺はメルルに視線を向ける。
メルルは恐怖で硬直していた。
ま、まずい...
「メルル避けろ!?」
俺が叫ぶが、メルルの目は恐怖でいっぱいであった。
「くっそおおお、メルル!!」
俺は急いでメルルのもとに駆けつける。
全身の筋肉を活性化させ、後方に「ファイラ」を放ち、推測力を付けるが間に合わない。
まずい...
俺が両手を伸ばしなんとか止めようとしたその時、上空から物凄い勢いで獣人に向かって落下していった。
煙が舞い、辺りの様子が全く見えなくなる。
俺は急いでメルルの元に駆けつける。
「大丈夫か?メルル!?」
「えへへ、なんとか」
メルルは尻餅をつきながら、座り込んでいた。
俺はメルルに手を差し出し、起こす。
「一体どうなってんだ?」
煙が捌けると、獣人はうつ伏せの状態で、倒れていた。
獣人の脇腹辺りに黒い大剣が刺さっており、その上に一人の女が佇んでいた。
彼女は全身真っ黒な着物を身につけおり、帯の色は燃えるような赤色一色であった。
獣人の返り血を浴びてるせいか、着物は所々赤くなっている。
俺とメルルはその光景をじっと眺めていた。
「ん?私の顔に何かついているかね?」
「あ...あんたは?」
と俺が尋ねる。
「私はシャウロ・ルルだが」
シャウロ・ルルと名乗る女は獣人の頭を右足で踏みつけ、獣人の脇腹に深く刺さった大剣を右手で一気に引き抜いた。その際、血が床に飛び散る。そのままの勢いで肩に担ぐといかにその大剣がどれほどの大きさなのか優に想像できた。
「ルルでもシャウロでも好きなように呼んでくれ。それで...ああ、そうか」
そう言ってシャウロは俺の顎を右手でそっと触れると、彼女の元に俺を引き寄せいきなり唇を重ねてきた。
「んっ!?」
俺は驚いて、声にならない叫びをあげた。
しかし、シャウロは構わずキスを続ける。
物凄い力だ。俺が離れようとしてもびくともしない。
俺が彼女の行為に唖然としている中、彼女はギアを上げていく。
挙げ句の果てに今度は、舌を入れてくるのだった。
おいおい...まじかよ。俺はめちゃくちゃ動揺した。
舌と舌の先が重なり、ざらざらな表面が擦れたり、捻れたりしてお互いの感触が伝わってくる。彼女の味は何もしない。俺はそっと彼女の目を見た。
彼女は目を瞑っていた。俺も目を瞑り、あるがままに従った。
そうして、しばらくしてシャウロは俺の唇から離れた。
頼りなくたるむ糸のように俺の口先と彼女の口先で唾液が慕った。
「これで、私の事が分かってくれたかな?」
「ちょ...ちょ...ちょっと!?な...何してるんですか!?」
メルルが叫んで、シャウロを両手で押し退けた。
「何ってキスだが?」
「な...なんでキスなんかいきなりしてるんですか!?わ...私だってした事ないのに!?」
「すればいいじゃないか?したいなら?」
シャウロはキョトンとした顔でそう言った。
俺は手の甲で唇を拭った。
初めて、女性とキスをした。やばい...何度もあの感触を探して舌が動いてしまう。
人の舌の感触は初めてだった。とても分厚く、彼女が舌を動かす度に俺は、彼女の存在を認識し、今何を行っているのか再認識させられた。
キス。
たったそれだけの行為なのに...
「な...なんだってんだ!?いきなり、こんな事!?」
俺は少しテンパリながらそう言うと、今度はメルルとシャウロがキスをしていた。
「んんんん!?」
メルルが溺れたかのように両手をバタバタさせていた。
俺がメルルとシャウロを引き離すと、シャウロは話始めた。
「私の国ではこれが挨拶なんだ。初対面のね。君たちの事は大体わかった」
「嘘つけ!!」
俺とメルルは同時にハモって声を荒げた。




