10話
「ドラゴンさんは私の言うことを守ってくれてるんです。
実はさっき、ドラゴンさんは自分のことをラデューンと自己紹介していて、
お願い事はないかと言われたんです。」
「それで?」
「私、この街を守ってくださいってお願いしたんです!そしたら、いきなりここに来て」
「そうか」
理解できたような理解できなかったような気がした。言えることはただ一つ、サラマンダーは俺を敵と認識していて殺そうとしているということだ。
もし、メルルが言ってる事が正しければ、サラマンダーはメルルの支配下にあるということだ。
「お願いは取り消せないのか?」
「さっき、お願いしましたが、ダメ...でした。」
「そうか、分かった」
「あの...マキシムさん。もしかして本当に...」
「話はあとだ。とりあえず、俺はあのドラゴンを倒す。君は下がってろ」
メルルは頷くと走って物陰に隠れていった。
俺は再びサラマンダーに向かう。
とりあえず、飛び回ってるのが鬱陶しい。まずは動きを封じ込める。
俺は急いで壁から走りだし、サラマンダーの視覚に入り、「スローラ」を掛ける。
少し動きが鈍くなったところで、攻撃魔法の「サンダラ」を詠唱する。
空から2本の雷の杭が落ちてきて、サラマンダーの翼を突き刺す。
サラマンダーは悲鳴をあげる。
とりあえず、動きは封じた。
ここからは俺のターンになる。俺は最上位魔法の「グラビライト」を詠唱する。
サラマンダーは重力の影響で、体が地面にめり込む。
しかし、硬い鱗の影響で出血もしない。
このままでは殺せない...
俺は「ビジュアル」でサラマンダーの心臓を探した。ビジュアルは人間に使用すれば、ステータスの表示になるが、モンスターに使用した場合、弱点を表示してくれる。
「見つけた...」
胸元に俺の上半身ほどの心臓を見つけた。
その時、メルルの叫び声が聞こえた。
「あぶない!?」
急いで振り返ったが、遅かった。
サラマンダーの尻尾が俺の背後の死角から迫ってきており、俺は吹っ飛ばされた。
「マキシムさん!!大丈夫ですか!?」
メルルは急いで駆け寄ってきた。
どうやら俺は右腕でガードしたが、あまりの衝撃で右腕と肋骨が折れているようであった。
俺は大きく呼吸する。
息が吸えない...苦しい。
メルルは倒れこんでいる俺の頭を自身の太ももに乗せ、膝枕の状態で、慣れない魔法を使いながら俺を回復させてくれた。
アドバンス魔法の「ヒーラ」だろうか?仄かに暖かい。
このまま眠ってしまいそうだ...
「大丈夫ですか??」
「ああ」
そう言って俺は起き上がる。
右腕の骨は少しばかり治っているようであった。
しかし折れた肋骨は歩くと少し痛むも...
サラマンダーの方に視線を移すと、どうやらサラマンダーもまだ動けていないようだ。
俺は痛む箇所を押さえながらサラマンダーに向かった。
やるならいましかない...
「ほ...本当に、大丈夫ですか!?マキシムさん?」
俺は黙って頷く。
「わ...私も手伝います!」
「手伝うって何を?」
と俺は尋ねた。
「マキシムさんが戦っている間、「ヒーラ」で回復します!!」
メルルはそう言って力一杯両手でガッツポーズを取った。
正直ありがたい。
「分かった、頼む。ただ尻尾の攻撃には気をつけて。そこの射程から離れたところで」
「はい!」
俺はサラマンダーの方に向かった。
俺はもう一度、「グラビライト」で動きを封じ、ついでに「サンダラ」で、尻尾も串刺しにして封じた。
それから、俺は右手でサラマンダーの体に触れ、魔法を詠唱する。
「マテリアル...」
そうして、俺はサラマンダーの体からピッケルを作り出した。
まるで、鉱石でも掘るかのように何度も振りかざし、サラマンダーを掘った。
その度に傷口が痛んだが、メルルの「ヒーラ」でなんとか意識を保てた。
そうして、ついにサラマンダーから心臓を取り出した。
心臓を取り出してもサラマンダーはまだ蠢いていた。
俺は心臓を地面に置いた。メルルも恐る恐る目を瞑りながらこちらにやってきた。
「や...やったんですね!?」
俺は静かに頷く。
そうして、俺は心臓にむかってピッケルを振り下ろした。
その瞬間、爆発でも怒ったかのようにっ黒い光に俺とメルルは包まれた。
何かが弾けた音がした。
黒い光は心臓を取り囲み、圧縮してまるで心臓を囲われたような感じがした。
「な...なんだこれ」
俺がうなり声をあげると、メルルは横で苦しんでいた。
「うう...く...苦しいです」
そう言ってメルルは倒れてしまった。
俺も次第に意識が遠のいていく。
目の前のサラマンダーの死体はまるで綿菓子のように空にはじけていった。
しかし、サラマンダーの頭に載っていた王冠だけが、宙に浮かび俺の頭、目掛けて飛んできた。
俺は最後まで見届ける事なく意識を失った。




