女神様
〈 目覚めなさい〉
〈 さぁ、目覚めなさい〉
透き通るような心地よい、だが身体中に染み渡るような声で目が覚めた。
(ここは一体・・・・・・ 俺は何してたんだっけ・・・・・・)
辺りを見渡すとそこは、見渡す限り純白の世界だった。ただ真っ白な世界に神々しい光が差し込んでいるだけ。人どころか虫1匹存在してる気配はない。
(そうだ、俺は死んだのか。 ならここは天国・・・・・・)
俺は全てを思い出した。組織の為に鉄砲玉になり襲撃を実行したこと。そしてそれは組織の罠で、嵌められた俺は逆に銃弾をくらい殺されたのだ。
冷静になって辺りを見回すと、少し先の方、光が一際強く降り注いで少し霞んでいる方に何かいる。
そちらの方に向かってみると、そこには女神様がいた。
なんで女神様ってわかるのか? それはどこからどう見ても、生前ゲームや映画で目にしたような美しい女神様そのものだったからだ。
「あの、あなたは女神さ――」
「あなたは死にました」
「あの、ここはどこな――」
「しかしあなたは天国に行く基準を満たしておりません」
こちらに発言権は無いようだ。
(天国に行けない? じゃあ地獄行きって事かなのか)
(まぁ生前は所詮チンピラ、そんな人間が天国に行けるはずもないか・・・・・・)
「あなたは死の直前、信頼していた家族に裏切られ、殺されました」
(家族? ああ組織の親父達のことか。 女神様から見ても俺たち組織の人間は本当の家族に見えていたのか)
「1度目の人生で、生前、誰かに大切に思われ、心から愛され、その死を悲しむ人がいない場合、また殺人の被害者など明らかに非業の死を遂げた場合、その人間を天国に送るか審議に掛けられます」
(あれ? 生前いい事をしたとか悪い事ばかりしたとかじゃないのか)
「そしてあなたはその全ての規定に引っかかります」
(分かった分かった、俺は天国に行けないんだろ。 さっさと地獄でもなんでも送ってくれよ)
「よってあなたはもう一度人生をやり直すチャンスが与えられます」
(チャンスだと!? 死の直前、走馬灯の中で願ったなぁ、もしもう一度人生をやり直せたら自分を本当に愛してくれる人の為に死にたいと)
「ただし、以前と同じ時空間に行くことはできないので、別の世界に転生させます」
(これはまさか、生前若い衆の間で流行っていた異世界転生系のアニメみたいな展開なのか・・・・・・)
「それでは準備はいいですね。」
「ちょっと待って、次の世界はどんなせ――」
〈たくさん愛される人生を送るのですよ〉
俺の身体は光に包まれ、死んだ時のように、気持ちよく、眠るように意識が薄れていった。