フフフ。
のり子ちゃんは、自身の体調が優れなくても、同級生の琴美ちゃんの前では元気に振る舞おうとする、優しい小学生です。
「ねえ……琴美ちゃん。」
「フフ……どうしたの、のり子ちゃん?
」
「今日の“かくれんぼ”メンバーさんは、手加減してくれますか?」
「フフ、弱気になってるね。」
「きのうのメンバーさん、プロの宇宙人さんだったでしょ……コウガク迷彩ありルールはズルいよぉ。」
「フフ。」
「しかもアノ宇宙人さん達、赤外線で体温ソウサクしてくるし、小学生相手に本気出しすぎだよぉ。」
「フフフ……。」
「でも、琴美ちゃんは最後まで見つからなかったね。……あんなに全身泥だらけで、後で怒られなかった?」
「フフ、途中で急用が出来てね、影武者代行さんに御願いして帰ったの、昨日はね。」
「………え……今も……影武者さんですか?」
「影武者さんが、自分を影武者とは言わないよ……フフ。」
「む……。」
「フフ、では今日のメンバーさんを御紹介します。向かって左の方から……」
前科20犯、警察からの逃亡生活は約10年。通称“危機管理主任のヤス”さん。
組内抗争中被弾により死亡、享年40歳。
────宜しく、お願いします。
「……。」
「フフ、次の方。」
前科無し、電車内痴漢回数約1000回、逃走成功率99%。通称“触手のミナハシ”さん。
逃走中、パン1斤を咥えた遅刻寸前の体育会系女子選手と出会い頭に激突し、華奢な体を全身骨折。
搬送された病院で療養中、院内コンビニで万引きしようとして転倒し、頭部を強打して死亡。
享年15歳。
────よろしく。
「う………。」
「フフフ、次の方は……」
前科30犯・脱獄回数30回・離婚歴30回の、監視の心も盗むプロ。通称“カリオストロ斎藤”さん。
日本国内の刑務所限定なら、どこに収監されても必ず脱獄できる自信と実力を兼ね備える猛者。
最後の引退脱獄中、幼稚園に潜んだ時に、全ての猛者園児達に気に入られ、大人げない本気の天下一武道大会中に心臓発作で死亡、享年77歳。
────宜しくねー。
「皆さん顔色の悪い、お元気な方デスね。」
「フフフ、では始めましょうか。鬼はヤスさんから、よろしくお願いします。隠れる時間は、短縮して1分。鬼が探す時間は5分にします。最初に見つかった方が、次の鬼です。」
────はい。
「うう、なんだか緊張してきた。」
「フフ……まず様子を見る為に、一緒に隠れましょう。」
「お……お、おう……。」
「フフフ、じゃ向こうに行きましょうか。」
────20秒……40秒……50秒……1分。さて……のり子ちゃん、見つけた!
「ううぇええええええ!」
「(フフ、ダメよ出て行っては……ああ……)」
────のり子ちゃん、見つけました。
「え……えっ……ええ?」
「(フフフ、大人の口頭戦術。)」
「ずるううううい、ぐう。」
「フフ、では私も自首します。」
────琴美さん、見つけました。残りの2人も、自首しませんか?
「……しないそうです。」
「……しないそうです。フフ、では鬼をのり子ちゃんに交代して継続しましょう。今度は、小学生特権で鬼が探す時間を無制限にします。」
────わかりました。
────はい。
────いーよー。
「おすっ。」
「フフ、ではヤスさん、一緒に隠れましょうか……。あとの2人も、継続して宜しく願います。」
「じゃあ、(目つぶって……)数えるよー。123456789じゅうっ!」
「フフ……。」
「ひひひ。きのう見た夢で、みんなの隠れ場所を知っているのだよ、のり子ちゃん特けーん!」
「……。」
「んー、でも琴美ちゃん見つける前に起きちゃったからなー」
「……。」
「確か、わたしの真後ろに……アレ?いない……。」
「フフフフ。」
「目の前に立っている、立っているはずだけど、んー、こうして触った感触もあるけれど、んー、つまり……。」
「フフ。」
「琴美ちゃん……どんだけ宇宙人と仲良くなったんスか。コウガク迷彩って……」
「フフフ……せ・い・か・い。じゃあ、このまま帰ろうか、のり子ちゃん。ヤスさん、お疲れさまでした。」
────次の御誘い、お待ちしています。
「ど、ども。」
「フフ。では、ごきげんよう。」
「で、あとの2人は?」
「フフフフ。ちょっと、のり子ちゃんに悪影響出そうだったから、かくれんぼルールでその場に地縛させてます。」
「?????。」
「フフ……今度は、違う場所で遊びましょうね。」
「んー、ひょっとして、最近の頭痛の原因?」
「フフ。」
今日の楽しい時間は、瞬く間に過ぎた。
次の楽しい時間が、直ぐに来ればいいのに、
次の楽しくない時間が直ぐに来て、わたしを地縛するの。
次の楽しい時間が、早く早く早く来ないかな。